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【Case Study】NOMADO×教育DX ~離島の高校生と地域愛を考える~

PROJECT

「NOMADO×教育DX ~離島の高校生と地域愛を考える~」

ISSUE

「2つのコミュニティ間につながりを生み共創関係を育むことで、態度変容やその後の人生の選択に影響を与えることができるのではないか」という問いを提示することをテーマにしたNOMADOプロジェクト。

フランスと日本の地方都市をつないだ第1回目の実証実験を通して、
「日本国内でも機会格差は起こっているのでは?」「世界と日本だけでなく、日本の地域同士をつなぐことでもNOMADOの提供価値を発揮できるのでは?」という気づきが得られました。

そこで、実証実験第2回目となる本検証では壱岐島と対馬島の教育現場に舞台を移し、離島や中山間地域におけるNOMADO活用の有用性を探ることにしました。

壱岐島は人口24,622人からなる長崎県の離島(2023年10月時点)。
少子高齢化、後継者不足などの地域課題が山積する、国内においても課題先進地といえる地域です。

なかでも人口減少に関しては、若者が進学や就職のために島を離れてしまい、一度離れると戻ってくるきっかけもないなど、離島の持続可能性に対し喫緊の課題となっています。

ツナガルは、この課題に対するアプローチとして、幼い頃に地元の魅力を深く考える原体験があれば、若者たちの郷土愛形成の鍵になるのではないかと考えました。

そこで、進学や就職を控える高校生にむけて、島と自身の関係性を捉え直すことを目的としたワークショップを開催しました。

OVERVIEW

名称:NOMADO×教育DX ~離島の高校生と地域愛を考える~
日時:2022年9月13日
参加者:長崎県立壱岐商業高等学校 生徒10名
プログラム:NOMADOを使い、多様な視点を獲得する思考プロセス/「ENedmic思考」を習得し、離島固有の魅力を考察・言語化するワークショップ
コラボレーター
【福岡大学 飛田努 准教授】
専門分野は管理会計と財務管理。壱岐商業高等学校と福岡大学を結んだ、高大連携アントレプレナーシップ教育プログラムを主催している。本イベントは飛田准教授のアントレプレナーシップ授業の一コマを借りて実施した。

【須内洸至さん】
九州大学共創学部1年生(2022年当時)。祖父母が対馬で暮らすことから、対馬や離島に関心を寄せるようになった。対馬で起業を目指す大学生。
福岡テンジン大学・岩永学長の紹介経由で本イベントに参加した。

実際の様子

SOLUTION

以下に、「NOMADO×教育DX」の取り組みに活用したツナガルのソリューションをご紹介します。

マッチングキュレーション
インパクトのある出会いを生み出す

ツナガルでは、プロジェクトのテーマや訴求したい内容に応じて、インパクトのある出会いを生み出すための組み合わせを探り、結びつける「マッチングキュレーション」を行っています。

キュレーションとは「誰と誰が、どんな場所で、何の体験をするのか」を整理し、編集することを指します。

キュレーションがされた場で、自分の興味や関心にマッチしている相手と共通の体験をすることで、それまでの経験や思いこみから由来する想像を超えた、感情や感動が生まれやすい状態を作ります。

たとえば、「NOMADO×教育DX」の場合は、離島で生まれ育った高校3年生と、離島にルーツをもつ大学1年生をマッチングしました。

須内さんには島の高校生にとっての鏡のような役割を担ってもらいます。

同じ離島の対馬島で起業を試みる同世代の須之内さんの存在は、
生徒たちから「どうして?」「すごい!」「離島で起業できるの!?」といった、
驚き、興奮といった様々な感情を引き出し、気付きや共感を生みだします。

同じ「離島人」との新たな出会いを経て島への思いの解像度を高め、類似点の多い須内さんと自分たちの間にある「少しの違い」から自分たちの特徴に気づきを得て、生徒たちの「壱岐人」としてのアイデンティティやプライドを育むきっかけを作りました。

ワークショップ
島の魅力を多面的に見つめなおし、未来の在り方を思考する

ワークショップでは、トレーニングからロールプレイングまでの一連のアクティビティを通じて、生徒たちが島の魅力をあらゆる目線で語れるようになり、主体的に島の未来を想像できるようになることを目指します。

前半の多面的なものの見方のトレーニングは、あらゆるアングルから事象を観察し、説明するスキルを引き出すためのもの。
思考をほぐして、自由で柔軟な発想をするための準備運動です。
たとえば「スリッパ」を例に、観察して気づいた特徴を一人ずつ口に出してもらうことで、常に身の回りにあって当たり前のモノでも観察する人によって視点がちがう、という気付きを促します。

次に題材を「島の魅力」に移し、島の暮らしにはどんな魅力があるのかを様々なアングルから考えます。
トレーニングを踏まえたことで、学生たちの視点が広がり、「自分なら・この人だったら・この立場だったら」と幅を広げて想像ができるようになりました。

後半のロールプレイングでは、須内さんと一緒に「島の未来」を考えます。
学生たちに壱岐市の「市長」や「観光担当」、「経済担当」、「未来創生担当」、「広報担当」の役割を与え、ファシリテーターから投げかけられる30年後の島の未来の問いについてロールプレーイング形式で即興で答えてもらいました。

未来に視点を置くことで、学生ひとりひとりが「こうなっていてほしい島の姿」を主体的に描くきっかけを作ります。

即興スピーチには、生徒たちが普段無意識に感じている島の魅力を言語化し、自分たちの言葉で他者に伝える能力を養う狙いがあります。さらに参加者同士で意見を交換することにより、別の視点から島の資源の可能性を見出すことができるといった成果がありました。

NOMADO(デジタルインスタレーション)
アフォーダンスをデザインし、没入感を演出する

「NOMADO×教育DX」では、空間や環境のアフォーダンスを考慮。学生たちが体験に没入できるような「場」をデザインしています。

デジタルインスタレーション・NOMADOは、別の場所にいる相手がまるで目の前にいるような臨場感と、同じ空間を共有しているような気配や雰囲気を感じさせる次世代型コミュニケーション装置。

丸い窓の形を模したスクリーンには、「等身大」の相手が映り、低遅延でリアルタイムなコミュニケーションが可能です。

NOMADOは本来、つないだ拠点同士の境界をまどろませるように設計されていますが、「NOMADO×教育DX」では、あえてスクリーンで隔てた距離を、学生たちに意識してもらうようにしました。

スクリーン越しの須内さんの存在は、2.5次元化。
物理的にも心理的にもオンラインとオフラインの中間の距離が保たれます。
これには、気配や臨場感を伝え合いながら、リアルで対面するのと比較して心地よい距離感が保たれ、初対面でも緊張感が発生しにくいという作用があります。

こうしたテクノロジーを活用し、オンラインならではのメリットを活かしたコミュニケーションを行いました。

DXの先にあるもの - EQ/CQに注目
思いやりを育むテクノロジー

ツナガルは、体験の手段として「DX」、そして効用として「EQ/CQ」に注目しています。

「人と人との関係をデザインする」ツナガルのメソッドに基づいてデザインされた体験を通して、異文化理解や他者理解を促し、参加者の「CQ(異文化への想像力をもつ力)」や「EQ(他者に対する思いやりをもつ力)」を育みます。

そして、こうした活動を可能にするのが、NOMADOによる「教育DX」です。

テクノロジーと体験を掛け合わせることで、距離の制約による教育機会格差を解消する。あらゆる国や地域と、あらゆる専門家や起業家とつながり、多様な人と関わりながら学ぶ機会を実現できるのです。

RESULT

今回の実証実験を通して、NOMADOプロジェクトが提供する機会を以下のように定義することができました。

①コミュニティ外の世界とつながる機会を提供すること
②それにより自身のアイデンティティを強め、コミュニティ内の結束が高めること
③外部との継続的なつながりによって、文化交換や価値感の変容をもたらすこと

COMMENT

ワークショップ実施後、学生たちからは、以下のような感想が上がりました。

・まだまだ自分が知らない壱岐の魅力があることに気付けた。緊張しても、自分の意見を言うことの大切さを実感した。
・島の魅力を人に伝えながら、人と人の輪を作っていくことが重要だと思った。
・楽しいこと、面白いことを見つける力を身に着けることや、考えを言語化することの難しさを感じた。

IMPRESSION

ツナガル株式会社 プロデューサー 
竹林謙(「NOMADO×教育DX」プロジェクトオーナー)

このプロジェクトの企画は、運営メンバーの原体験から生まれています。

私を含め、運営メンバーは全員地方出身者。小さいまちで生まれ育っていて、外の世界に触れる機会が圧倒的に少なかったことに対するコンプレックスを持っています。

その昔、自分が居るのと別の世界につながれないことに物凄く悩んだ私たちだからこそ、
離島に暮らす高校生たちに、世界に触れるきっかけを提供したいと考えたのが企画の発端です。

私はその後、先生や親や環境に機会を開いてもらい、広い世界に飛び出すことができましたが、誰もが同じようにできるわけではないとも思っています。

世界とつながるのに必要なのは、タッチポイントとなる「機会」、そこに飛び込む「好奇心」と「意欲」です。
好奇心が持てるかどうかは、自分で考えた経験やものの見方を広げた経験があるかにもかかっている。
だから、そうした経験を今回のワークショップのプログラムにも組み込みました。

この授業が、島の高校生たちにとって、外の世界に触れる機会となっていたら嬉しく思います。


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