#彼女を文学少女と呼ばないで/円城塔「雪は白いときに白い、みたいな話に、ちょっと疲れてきたところなんです。」
『バナナ剥きには最適の日々』円城塔
君を構成する物質は日々入れ替わり、成長だってしていくわけだ。
それでも君はそうして君のままなのだ。君が君である限り。
そう、淀みなく続けてみせる。
酩酊な間だけ知られる真実のように。
将棋と呼ばれる駒を指し、チェスと呼ばれる駒を置き、
盤面自体をひっくり返して、互いに盤を投げつけあって、
さて何のゲームをしていたのかと、
我に返って笑い合う。
真面目な議論をしていたのだと信じたりする。
魂だとか強い言葉を用いることで、話題は勝手に展開していく。
単語が単語を呼び出しては、話題だけを展開していく。
詰める気のない将棋のように。
編まれる先からほどかれているレースのように。
自由に決めれば良いと知っていたって、自由とは一体なんだったっけ。
そもそもなにかを決めるとは、なにをどうすることだったっけ。
そもそも誰のことなのでしたか。
わたしのことだよといわれるのです。
でもわたしもわたしなのだとわたしは言います。
偶然だね、とわたしは言います。
わたしも今、丁度わたしをはじめたところなのです。
つつがなき旅を送られますよう
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