中1の夏休み、父親の暴力から身を守るため祖母と一緒に暮らすことになったたかせ。その土地では夜な夜な少女の幽霊が出るという。散歩先で少女の幽霊と遭遇するたかせ。次の日たかせは謎の…
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オリオンの残した涙①
「必ず迎えに行くから」
そう言って母さんはスーツケースを差し出して目を逸らした。俺はそれに気付かない振りをして言った。
「分かってる」
ゴトン、ゴトン……。
バスの大きな揺れにつられて自分の身体がゆらゆらと動く。その心地いいリズムに段々と視界が歪んでくる。今にも眠ってしまいそうな脳をなんとか働かせるために俺はスマートフォンから流れてくるニュースを意味もなく眺めていた。降り過ごしてしまったら
オリオンの残した涙②
ミーーン。ミーーン。
今日も朝から蝉が大合唱を繰り返している。
昨日の夜は旅の疲れと幽霊のことが気になって上手く眠れなかった。ばあちゃんが用意してくれたそうめんをつつきながら昨日のことを話すべきか悩む。ばあちゃんは幽霊を見たと言ったら信じてくれるだろうか。
「ばあちゃんはさ……」
「んんー?」
そうめんを頬張りながらばあちゃんがこっちを見る。
「いや、昨日の幽霊の話なんだけど……」
「さ