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『フ』か『ス』か

経営者のお二人とお話しする機会がありました。一人は高度成長期に育ち、バブル時代バリバリ働いてきた方で、新卒で入社した会社で社長まで上りつめました。そして最近、若い方に社長の座を引き継いだそうです。

「新社長は結婚したばかりで子育てを大事にしている。それに理念の確立にお金を使っているんだよ」とその方はおっしゃいました。

その言葉の裏には、私にそのやり方を否定してほしいという気持ちが感じられました。でも心の中では「新社長、がんばれ!」と応援していました。社長自らが子育てに参加し、理念を明文化することは、悪いことではなく、それが企業の未来を形作るのではないかとも感じています。

前社長の時代は、先輩の後を追い、がむしゃらに働くことで報われることが当たり前だったかもしれません。しかし、今の時代では企業の理念が明確でなければ、今の世代は選んでくれないのかもしれません。

私自身、勢いで起業してしまい、起業セミナーに受講者として参加したことが一度もありませんでした。しかし、事業を開始した後、ありがたいことにインキュベーションマネージャーの支援を受け、自分の中に理念があることに気づきました。そして、それを明文化していく中で、経営の方向性を定め、決断が早くなったという経験があります。

しかし最近、理念が見えるだけでは足りないのではないか、という疑問が浮かび始めました。そんな時、少し年上のもう一人の経営者の言葉が心に刺さりました。「結局は金だよ。優秀な人ほどね。そのためには稼げる企業であることが大事だよ」と。「うちだって、つむぐ設計みたいにワークライフバランスやまちづくりに取り組みたい。でも、そんなきれいごとを言ってられないんだよ」とも言われました。

正直、「そんな…」と思いつつも、二人とも本音で話してくれたのだと思います。そして確かに、わが社はこの二社の足元にも到底及んでいない現実があります。

その時、昨年ご縁のあった中小企業診断士から言われた「ライフワークかライスワークか」という言葉を思い出しました。私が発言することに対して「それは『フ』だね」「それは『ス』だね」と考えを整理してもらったのです。このように多くの方との会話の中から、自分なりの答えを探っていくということを繰り返しています。

今回も『フ(理念)』か『ス(利益)』かではなく、そのどちらも大切にしながら少しずつ前に進んでいけたらと思いました。


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