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読めるって、なんて素敵だ!

2年前の私は本が読めなかった。

それが! 先ほど『小説宝石』の年間購読を申し込んだ。月間の小説雑誌だ。2年前の私からすれば、奇跡のようだ。

うつ症状の酷かった時、私は全く本がよめなかった。文字を目で追っても意味がわからない、日本語が理解できなかった。目がすべってなんども同じところを行ったり来たりを繰り返した。それでも内容はまったく掴めなかった。
座っている体力もないくらいだったから、300字程度を読む体力も気力もなかった。唯一Twitterは読めた。Twitterが私と社会を結ぶ唯一の窓だった。


2年前までこんな状態だった私が、本当に数年ぶりに面白いと思えたのは雑誌『小説宝石』。医療ミステリーをお書きの知念実希人さんのエッセイ『作家 超サバイバル術!』が読みたくて、通販した。しかし、現物を手に取った時、全部は読み切れないなと思った。
『小説宝石』はA5版、厚さ1.8ミリ、約450頁。小さい字でびっしりと30余人の作家の作品が掲載されている。一目見て、思わず引いてしまった。とても私が読めるとは思えなかった。


それが、パラパラめくっただけで、作家達の個性豊かな珠玉の世界が散りばめられているのが、わかった。作家によって文章から醸し出される雰囲気が全く違うのだ。さすがプロの仕事。作品のもつ世界の濃さが、行間から立ち上っている。


黒一色で文字が印刷されているだけの薄い紙の束は、あっと言う間に私の意識を引き込み、別世界へと連れていく。1~2行読めば自分と言う存在を忘れ、文字の世界と完全に同化する。スピード感のあるハラハラした展開のミステリー、心温まる「読み物」、同意したり反発したりのエッセイ、小技の効いたコラム「エンタテイメント」、実に多様な異次元に私を連れて行ってくれる。

夢中になって読んでいて、異空間にワープしていた。現実にもどり、ハッと我に返った時の、「あれ? ここどこ?」という感覚を数年ぶりに味わった。
この感覚は本の中に入り込めてこそだ。活字を追い、その世界に没頭できる集中力があって初めてできること。


私は、また本を楽しめるようになったんだ! ああ、ここに帰ってこられたんだ。本当によかった! 涙がにじむほどに嬉しい、嬉しい!、嬉しい!!



* * *

まだ集中力が長くはもたなくて、長くは読めない。一作品ずつ、少しずつ読み進んでいる。内容盛りだくさんだから、900円でじっくり一か月(以上)楽しめる。

書店が遠いこともあり、買いそびれないように、1年分まとめて予約した。先行投資したからには読む、読むはず、読みたい。
諭吉さんに旅立たれた財布はさみしがっているが、後悔はしていない。
ちなみに出版社の光文社さんとは、残念ながら私は何の関りもありません。



出版販売に関わっているすべての方々に、お礼申し上げます。
これからも楽しく愛読します。




お読みくださりありがとうございます。これからも私独自の言葉を紡いでいきますので、見守ってくださると嬉しいです。 サポートでいただいたお金で花を買って、心の栄養補給をします。