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やっと君が食べられる

君がそこにいるのを初めて知ったのは、いつだったかな。驚いたよ、こんなところに可愛い可愛い君がいたなんて。一目で君のとりこになってしまった。初めて見た時の君は、信じられないくらい小さかった。そのくせ生意気に、一丁前にツンツンしていた。

幼子は好きじゃないから、君が育つのを夢見て見守ってきたよ。だって君の家はすぐ近所、会いに行くのは簡単だから。だから何度も何度も、君の姿を求めて家まで行ったんだ。
会いに行くたびに少しずつ大きくなる君。ツンツンしながら成長していった。
あれは風が冷たくなった頃だったろうか。君は赤銅色に着替えていた。ああ、その時がきたと感動したんだよ。赤銅色は君の花嫁衣装。この時を待ちわびていたよ。本当にずっとずっと待っていたんだ。いよいよ君を迎えに行ける!

でも、君のお父さんはなかなか君を手放そうとしなかった。ずいぶんと焦らされたよ。日取りが決まるまでヤキモキしたよ。当日はずいぶん早くに君の家に着いてしまったんだ。うれしくてうれしくて、矢も楯もたまらず待ちきれなくて。
思ったより沢山の人が来ていた。君は本当に人気者だ。
つやつやと美しい君は寒露の美神。丸みをおびた体つきは豊穣の女神そのもの。
成熟した君は重みがあって、とても欲をそそる。

大事に大事に君を連れかえった。ようこそ白亜の城に。
さあ、湯浴みをして。ちょっと熱いけど、すぐ出てきていいから。ほうら、ぶくぶくしている泡が気持ちよさそうだろう?
湯上りの艶々した君のドレスに刃物を入れるのは忍びないな。でも、ごめんね、こうしないと君を裸にできないんだ。すべてを見せてごらん。
そんなに抵抗しないで。君は頑固だね。その色気のない下着をさっさと脱ぎなさい。そんなにペッタリと張り付かせていないで。

まったく手間のかかる。こんなに時間がかかるとは思わなかった。さんざん手こずらされた。これは想定外だったな。
だが、そうさせるだけの魅力が、君にはあるのだよ。さあ後は、暗く蒸し暑い部屋で最後の仕上げだ。変身した君が出てくるのを待っているよ。


ああ、香わしい。
ああ、甘い香り。



ピー、ピー、ピー

さあ、緊張のご対面だ。君は惜しみなく、その魅力を出してくれただろうか。




ん、

ん…




おいしい!



初めてつくった栗から剥いた栗ご飯、完成!!!



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