見出し画像

結婚指輪を切りました

急に暑くなった日の夜中、私は左手薬指に痛みを感じた。そこには肌身離さずつけている結婚指輪がある。20数年間着けっぱなしだった結婚指輪だ。外したのはMRI検査の時くらい。ずっと大切に身に着けていた。
私はここ数年で10キロ以上太った。気付いた時には指輪が指に食い込み、指から抜けなくなっていた。14ケ月にわたるダイエットで8キロ痩せたものの、指輪は抜けない。

そして突然、指輪が食い込んだ指が痛み出した。むくんだのだろうか。このまま放置して、血行が阻害されて紫色に腫れあがってはヤバい。指輪が抜けないのが原因で救急車を呼ぶなんて、とんでもない。忙しい救急隊に迷惑をかけてはいけない。指の血行は阻害されていないし夜もふけていたので、私は朝まで様子をみることにした。
さいわい、指は腫れることなく翌朝を迎えた。早速、消防署へ電話し指輪を切ってもらう時間を決める。
その日の午後、私は重い足取りで、消防署へ行った。
登場したのは制服姿の爽やかなお兄さん。これで少し緊張がとけた。お兄さんはすまなそうに、指輪を切っていいかと何度も確認してくれた。私はこの指輪の食い込み具合では、切るしかないだろうと思っていた。もちろん覚悟はできていた。覚悟ができていたけれど、とても残念だった…

切断作業はニッパのようなものを使って、ゴリっと切るのかと思っていた。だが実際は、指輪を切る専門の工具を使い、すぐ終わった。

作業は5分もかからなかった。リングカッターは優れもので、痛みもなく指輪を切ってくれた。私の指輪は指に食い込んでいたので痛みも覚悟していたが、拍子抜けするくらい簡単に切れた。

指輪が抜けたとき、かなりホッとした。これで左手薬指は助かった。長年、頭のどこかで指輪の食い込んだ指が痛んだり腫れたりしないか、心配していたのだ。
指輪の切断面も綺麗で、きっとつなぎ直しやすいだろう。切った指輪は印伝のアクセサリー入れにいれて、大切に持ち帰った。

指輪の食い込んでいた指は、痛々しく跡がついていた。

指輪を切った当日

指輪の跡が痛々しい。痛くはないのだが、見た目はとても痛そう。

指輪のない手を見るのは20数年ぶり。あるはずの物が無いのはどこか不思議でさみしい。毎日、日に何度と見ていた結婚指輪。大切にしていた結婚指輪。切断してしまったのが、とても悲しい。指輪が抜けなくなるくらい太ったことを、いまさら後悔している。


指輪の跡が取れたら、切った指輪を修理してサイズ直しする予定。同じ指輪を再び身に着けたい。ネットでちょっと調べたところ、切った跡が見えないように修理できるとのこと。愛着のある指輪が直るのは、悲しんでいる心の大きな救いだ。
結婚指輪の無い手は、とてもさみしいのだ。


お読みくださりありがとうございます。これからも私独自の言葉を紡いでいきますので、見守ってくださると嬉しいです。 サポートでいただいたお金で花を買って、心の栄養補給をします。