見出し画像

成人式の中の人と緊急事態宣言

以前、私は成人式の中の人をやっていた。だから、いま全国の成人式担当部署がどんな有様になっているか想像がつく。
今回の緊急事態宣言でそれぞれの市区町村が、中止、延期、オンライン開催、予定通り決行のいずれかを決めた。
どこの市区町村でも、担当部署の電話は鳴りっぱなしだろう。式の準備や手配は昨年の内にほぼ終わり、今年は会場の設営と荷物搬入をするばかりになっていたはずだ。

直前にそれぞれの判断をした首長も大変だっと思うが、担当部署は大混乱だろう。どの選択をしても、お問い合わせやご意見の電話やメールが入る。新成人ご本人や親御さんの気持ちは察してあまりあるものがある。そりゃ、役所に一言二言いいたいだろう。

それを受ける担当者は放心もできずに、必死に電話応対をしているだろう。成人式が中止になった市区町村の担当者にしてみれば、昨年夏前くらいから準備してきた仕事が突然中止になった。しかもその後始末はこれからだ。力が抜けて放心するだろうし、泣き言の一つも言いたいだろう。でも、今は目の前の電話を取るしかない。
大変ですね、しか言葉がない。

私が勤めていた市の例では、成人式の準備は前年の5月の連休明けから始まった。そう、予想外に早く取り組むのである。

成人式を開催するという市長決済の起案、会場を押さえと照明・音響の確認契約、ゲストを選び契約し、来年度の予算要求、記念品選定並びに入札、広報、新成人に送付する案内の仕様書作りと印刷の入札と契約。当日の応援職員の手配、ゲストのケータリングの手配、市長祝辞の作成と印刷、壇上の花の手配、会場のあちこちに貼る張り紙作り、会場の外で案内する職員用のカイロの購入、当日のマスコミ対応などが主な仕事だった。

当日に雪予報が出ようものなら、追加で雪かき職員の手配(というかひたすら頭を下げ)、当日絶対遅刻欠席の許されない担当者と直属上司は庁舎にお泊り。

当日は荷物の搬入、張り紙貼り、などの合間に、会場の外を見て集まってきている人数を確認。いざ、式が始まれば、担当は舞台袖に張り付きなので外の様子はまったく分からない。

新成人の皆さんは、会場外やロビーで同級生との旧交を温めていてホールに入る人は少数派。もちろん誘導はし続けているが、暖簾に腕押しの空しさよ。誘導に当たった職員は夕方にはガラガラ声になっていた。

中の人達は、こんな感じで働いて成人式をつくっているのです。成人式はお祝いの場であり、中の人達の仕事の結晶でもあるのです。なんだかんだ言いながら、できる限り良い式にしようとみんな働いています。

もし、今年の式が中止になったとしたら、中の人も悔しいんです。たとえ仕事と言われようが、残念に思っています。なんの慰めにもならないけど、中の人達のお祝いの気持ちが、少しでもあなたに届きますように。

お読みくださりありがとうございます。これからも私独自の言葉を紡いでいきますので、見守ってくださると嬉しいです。 サポートでいただいたお金で花を買って、心の栄養補給をします。