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感動が連なる人生はふつうの日々のくりかえし

vol.32【ワタシノ子育てノセカイ

ご訪問ありがとうございます!

日常は奇跡の連続だから、心を澄ませば感動がずっと響いているみたい。

鳥がさえずるみたいに、蛙が大合唱するみたいに、ほんのちょっとの意識で現れる世界は、人をとても豊かに育むんだ。

慌ただしく過ぎゆく日常は、一秒一秒がほんとは愛おしい瞬間で、一瞬を慈しめるほど人はきっと、幸せな人生を歩めるんだろうな。

ところで私には「実子誘拐」で5年間離れて暮らす、10代のふたりの息子がいる。

中間テスト中の長男タロウから、今月2回目のLINE通話。

「お母ちゃん、お昼食べた?」

いつもは抜く昼食をなぜかとった私に、14歳タロウがランチを誘ってくる。私はお腹さすって二つ返事し、仕事まるめて車に乗り込む。

2023年の5月は珍事がよく起きる。
いい月なのかも。

タロウご指定のお店に向かう車内では、中間テストの話で盛り上がりつつ、私はちょこっと胸がざわついた。テスト期間中の我が子を見るのが、初めてだと気がついたんだ。

実子誘拐当時、タロウは小学3年生で、学びの習慣がだいたいついたころ。だから安心していればいい、と私は自分に言い聞かすんだけど、油断すると欲深い私が登場する。

心身によい食事、質のよい睡眠、集中力のあげ方、あれやこれや。がんばるタロウの生産性をあげる、サポートをしたくなってしまうんだな。

私が煩悩にまみれていると、タロウの話は明日のテスト科目へ移っていた。残すは英語のテスト勉強だけで、得意な数学はしなくていいらしい。

前日に勉強しない謎になんだか笑えて、だんだん心が落ち着いたころ、目的地のお店についていた。時間は、ちゃんと、過ぎてるな。

タロウの弾丸お喋りは食事中もまだまだつづき、ウットリ耳を澄ましていると、新しいおねだりがでてきた。最近できたお菓子屋さんにも行ってみたいらしい。お菓子屋さんはタロウ初のリクエスト。

これまた二つ返事して、食事とお喋りがひと段落したところで、最寄りのお菓子屋さんへワクワクして向かう。

お菓子屋さんにつくと、広い店内をふたりでクルクル散策した。お腹いっぱいの私は何も欲しくなかったけど、タロウが美味しそうというお菓子はすべて、なんだか美味しそうに見えてしまう。

店内2周目で、プリンとゼリーとアイスを選んだタロウは、おばあちゃん用に苺のタルトをおこずかいで買う。まあるい形が気に入ったらしい。

アイスは溶けちゃうから、車で頬張りながらの家路となる。ごはん食べたらバイバイのタイムスケジュール。私はほんのり寂しくなり始めたけど、タロウはご満悦で、おばあちゃんもきっと喜ぶ。だからまぁ、ええか。

なにはともあれ、お菓子屋さんの幸せ力、おそるべし。

どのケーキだと喜ぶかな~
と思案中のタロウさま

お父ちゃんのお家に着き、大好きを伝えてハグをして、あたたかい時間を胸にしまう。

だけど夕方の蛙の合唱が始まると、やっぱり私は切なくなった。テスト勉強がんばってるかな?と想い馳せていると、不意にLINEがやってくる。タロウだった。

「おやつ美味しかったでありがとう」

愛想も句読点もない連絡に、憂いだ時間を瞬で感謝しなおす私。すると4時間後、またLINEがくる。

「明日も昼ごはん食べに行ってもいい?」

2023年の5月、どうした??

回転ずしからの外食つづきだったから、明日はお家での食事になった。私が作ったご飯を、タロウに食べてもらえる。煩悩が、つきませんな。

↑ 回転ずし屋で修学旅行の土産話会 ↑

ところでタロウ中3の1学期から、私たち親子には新しい朝の習慣ができた。私の自宅2階の窓から、お見送りすることになっているんだ。家の真横がタロウの通学路。

だけどタロウはこれまで、私の方をまともに見上げたことがない。GW後の修学旅行明けからは、タロウらしき姿すら登校時間に現れなくなった。一方でタロウは、窓に私を確認できないと言う。

人がいて恥ずかしいのか、実は見送りいらないのか、タロウを見間違えているのか、私はモヤモヤ謎めく。そんな折、ランチのお誘いが降ってくる。

生きてる間に確認チャンス到来、ツイテル。

さらにところで、モヤモヤの本当の理由は他にあったんだ。

タロウが3年生になった2023年春、誰もいない家から登校していることに気がつく。私は息をのんだ。

緊張していたであろう入学当時のころ、タロウはどんな思いで学校へ向かっていたのかと、私はひとり打ちひしがれる。タロウ中1の頃は、5か月間音信不通になった時期でもある。

天ぷらを食べるタロウに私は、「お母ちゃん謝りたいことあんねん」と切り出し、これまでの時間を詫びた。するとタロウは困ったように微笑み、穏やかにひと言添えた。

「タロウは大丈夫やで」

母に謝られたら、息子氏おてあげ。

登校時間は、以前より15分遅らせていたとわかる。私はてっきり早く出発していると思っていたから、そらますます時間が重ならないはずだ。

お菓子屋さんの翌朝を迎える。

自転車をこぐタロウが、ひとりで登校してきた。これまでみたいに中学生がいない。視界に入ったあたりから、タロウが見上げているのがわかる。近づいてきた。

「いってらっしゃい!」

誰もいないから声をかけてみたら、タロウが微笑んで返事した。

「おぉ!」

声が低い。前回は、可愛らしい声で「いってきます!」だったはず、たぶん。窓から乗り出してタロウの後ろ姿を見送っていると、手が震えて、目が熱くなる。

朝7時台にやり切った感あるのに、お昼ごはんでまた会えるのか。昨晩からとってるお味噌汁用の昆布だしが、やけにキラキラして見える。

登校時の親子の挨拶は、6年ぶり。



2017年7月8歳タロウと私
朝の挨拶した前回の頃
夕方のお散歩中
僕に任せて!の5歳ジロウさまが
ガラケーにて撮影


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