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chocolate9
地獄の色【掌編】399字
「地獄は場所じゃねえ」
口癖のように言っていた親父が死んだ。
まあ、あれだ。
言わんとしてたことはわかるよ。
春の桜も秋の紅葉も、派手に輝くネオンも、すべて血みどろ地獄色に見えるメガネを親父はかけていたってことだ。
俺たち家族の顔も鬼のように赤黒く見えていたに違いない。
親父は……十中八九地獄行きだとは思う。
だけど、何かが間違って、万が一にもないだろうけど、親父が極楽に行ってもそこは地獄に見えるんだろうよ。
地獄は場所じゃないってんなら、極楽も場所じゃないんだろう。親父の言葉を借りればな。
俺は違う。
他人からは地獄に見えるような環境でも、俺は極楽を生きてやる。
……そう思ってたんだけどな。
きらびやかなネオンが灰色茶色地獄色に見えるよ。
今月の生活費がドブ色の缶コーヒーに。
これ1本で月末まで過ごす自信はちょっとない。
こうなったら地獄に糸たらすお釈迦様に助けてもらいますか。
「俺だけど、今月もちょっと貸して――」
2021年6月
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見出し画像に写真をお借りしました。
爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!