フォルダ「江口」【掌編】（1,123字）

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毎日、飽きずにボーっと見る。

別段好きなわけじゃない。他に時間をつぶす手段がないだけ。

帰ってきてから寝る前までずっとパソコンに張り付いている。

更新ボタンを押しても見たい動画が表示されなくなったら、次のルーティーンに移る。

目立たない場所に置いたフォルダ「江口」。

一人暮らし。俺以外がパソコンに触ることはない。

でも、男だったらわかってくれるだろ。このフォルダは隠しておきたい気分。

今日はどれにすっかな……。

フォルダをあさる俺の脳はさっきよりもずっと活性化している。

今日は最初から見てみるか。

AVでも俺は着衣シーンやインタビューからしっかりと見るタイプ。AVを見ていることをあえて忘れて見る。えっこんな可愛い子が？と脳に思わせたら勝ち。

フォルダの中から選んだ動画は駅のシーンから始まる。

構内で女の子を後ろから追っかけているだけ。階段を下りエスカレーターに乗り目当てのホームで立ち止まる女の子。駅で見かけたタイプの子の後を実際につけているような感覚に陥る。

次にカフェでお茶をしているシーン。隣のテーブルから撮影しているのか、さっきよりも顔がはっきり確認できる。

可愛い子だなぁ……こんな可愛い子が…….。

次はアパートらしき部屋の前から。呼び鈴を鳴らして出てくるのはさっきの女の子。

配達業者を装った男が……というあるあるパターン。

映像がブレブレなところが臨場感があっていい。恐怖で顔をこわばらせる女の子。

こんな可愛い子に……。

服を無理やり剥ぎ取り……後はひととおりの行為が行われる。

次の動画に移る。

同じ女の子。今度はいきなり行為から始まる。女の子は相も変わらず抵抗ぎみ。少し飽きたので飛ばし飛ばし見る。

フォルダの少し下の方の動画を見る。

同じ女の子。さっきとは打って変わって恍惚な表情をしている。プレイが始まるとよだれをたらしびっくりするぐらい声をあげている。

うわぁこんな可愛い子が……。

と思いつつも食い入るように画面を見つめる。やっぱり無理やりはだめだよなぁ。

満足したので一番下の動画も見てみる。

赤黒いモノが映る。少し大きなそれを包丁で刻んでいく。撮影者の荒い鼻息とゴリゴリという音。

うっ、やっぱこれは消そうかな……。

グロ系は無理と顔をしかめつつも撮影者と同じように鼻息が荒くなっていることに気づく。

大きな塊の脇に置かれたモノにカメラが寄る。目をカッと見開いたあの女の子の顔。

あああぁ……こんな可愛い子が！！

こう思いつつも興奮は最高潮に達する。

ふぅ……。

前のめりだった身体をチェアに預け余韻に浸る。

江口も飽きたなぁ……。明日は加藤か沢田か……。

いや、久しぶりに動画撮影に行くか。

＊＊＊

2020年9月に書いたものです。