【BLホラー】シェア・シェイク・ショット(1,242字)
ちょっと待って。男子高校生2人がシェイクを2本のストローでシェアしてた話したっけ?
うんうん。エモいよね。わかるわかる。
あたしも店の外からその光景を発見した時は胸が高鳴ったもん。
そうそう。あたし視力悪いはずなのにその時は目ざとく見つけちゃったんだよね~。
あれは今年のお盆の時期だった。母親の田舎での出来事。
墓参りの帰りにその光景を見かけて居ても立っても居られなくてさ、気づいたら店の中に入ってたわけ。こんな外れた林道みたいな場所にバーガー屋さんがあるなんて田舎侮れない~って思いながら。
彼らがいるのは2階の窓際。アイスコーヒーを注文したあたしはそれを持って急いで2階に向かったの。
で、見つけたわけ。というか2階には彼らしかお客がいなかった。そういえば下にもお客はいなかった。
できればすぐ隣に座りたかったけど店内ガラガラなのに不自然すぎるでしょ。だから2個空けて座ったわけ。
1人がバーガーとドリンク、1人がポテトとシェイクを頼んでいたようだった。
会話もバッチリ聞こえる。なんせ店内無音だったからね。
バーガーの方を仮に憲、ポテトの方を真って呼ぶね。
憲もコーラかなんか飲んでたけど真のシェイクが飲みたかったみたい。それで自分のストローを真のシェイクにぶっ差して飲んでたってわけ。憲と真が一緒に飲むタイミングがあってね、それをあたしに見られちゃってたってわけ。
でねでね、真がポテトをシェイクに付けて食べだしたの。そしたら憲もやりたくなったんだろうね。
「俺にもポテトちょうだい」
「え~これMサイズだから少ないし~。1本だけね」
「ありがと♪」
こんな感じで憲もポテトインシェイクにありつけたわけ。でも、もっと欲しくなっちゃったんだろうね。
「もう1本ちょうだい」
「だめ~」
ってもう真はくれないわけ。そしたらさ、そしたら。
憲は「だったら指で」って指をシェイクに突っ込んだの。それを見た真が「あっ、シェイクももうだめ~」って憲の指インシェイクをぺロって。
もうキュンキュンしちゃってさ~。ハァハァしちゃってたと思うよ~。もちろん、この話は後でSNSでシェアしようと思ったんだけどさ、それとは別に2人の写真撮りたくなっちゃって。自分用にだけど。
隠し撮りはだめって分かってたのにね。ついね、ついつい。あまりに愛おしかったもんだから。
無音で撮ろうと思ったんだけどミスってシャッター音出しちゃったの。
「カシャ」店内に響き渡るシャッター音。その瞬間二人の首がグルんってこっちを向いて、声を揃えて『だめ~』って。2人の眼は白目がなくて真っ黒だった。
あぁ生きてる人間じゃないんだってわかったよ。そして気づいたらそこはバーガーチェーンなんかじゃなかった。薄暗い廃墟。工事現場の事務所の成れの果てみたいな。
あたし、その2階に1人ポツンと座ってた。急に怖くなって外に出ようとした瞬間、声が聞こえてきたの。
『だめ~』って。
そこであたし気づいちゃったんだ。
BLはBLだけど、ボーイズ・ラブじゃなくて亡霊ズ・ラブだったんだなって……。
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2020年12月に書いたものです。
爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!