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燭光【掌編】(526字)

実際は取るに足らない存在なのに。

私には何倍も大きい存在に見える。

それは私が弱いからだ。

私の目には実際よりも大きい存在として映ってしまう。


そいつを掴もうとしても実体はない。

なぜならそれは私が作り出した虚像だからだ。

実際のそれはもっと小さく奥にある。

頭では分かっている。でも、私には……。


私が発起ほっきさえすればその光は私の目の前からいなくなる。

そいつとの距離を正しく測って手を伸ばしさえすれば届くんだ。


私にはそいつの発する小さな小さな光が大きな星のようにも見える。

誰もその光に目を向けることはないだろう。

もっと見るべき存在が近くにいるから。

でも、私の目には映らない。そいつの赤い目が鈍く光っている限りは。


もういっそ、他人の手や道具を使ってそいつを消してしまおうか。

ダメだ。

これくらい自分でやらなくちゃ。それに道具を使えば今度はもっと大きな存在が……。

今はまだ大きな光に目を向ける時ではない。もう少し休ませておくれ。

きっと大きく見えるだけのちっぽけな光じゃなくて、いろんな物を映し出してくれるその大きな明かりに目を向ける時が来るから。

明日はきっと。

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メガネないとテレビ主電源の赤ポチがでっかく見えるや。眠れなくてどうでもいいことが気になってんだね。


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2021年3月


見出し画像に写真をお借りしました。


爪に火を灯すような生活をしております。いよいよ毛に火を灯さなくてはいけないかもしれません。いえ、先祖代々フサの家系ではあるのですが……。え? 私めにサポートいただけるんで? 「瓜に爪あり爪に爪なし」とはこのことですね!