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r-Leaperの定義といくつかの例

WFP作品展登場ルールのまとめ』には次の駒の説明があります。

【Root-20-Leaper】(柑)
(2,4)-leaper。2対4の位置に跳ぶ八方桂。

【Root-40-Leaper】(栖)
(2,6)-leaper。2対6の位置に跳ぶ八方桂。

【Five-Leaper】(伍)
Five-Leaperはフェアリーチェスの駒。距離5のマスに跳ぶ。

これらを自然に一般化して「$${r\textrm{-Leaper}}$$」を定義します。

定義1.1(r-Leaper)
距離$${r}$$のマスに跳ぶ駒を$${r\textrm{-Leaper}}$$と呼ぶ。ただし$${r}$$は$${0}$$以上の実数。

$${\square}$$

$${r\textrm{-Leaper}}$$が今いるマスのど真ん中にコンパスの針を刺し、長さ$${r}$$だけコンパスを広げて円を書いたとき、線がマスのど真ん中を通るようなマスに、$${r\textrm{-Leaper}}$$は跳ぶことができます。

下記は$${5\textrm{-Leaper}}$$の図です。黄色のマスに移動できます。

L=5-Leaper

定義1.1で定義としては問題ないですが、定義1.2のように書けば下記の記事で定義した$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$との関係が明確になります。

以後、$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$は$${L(a,b)}$$と略して書きます。

定義1.2(r-Leaper)
$${0}$$以上の実数$${r}$$に対し、$${r\textrm{-Leaper}}$$を下記で定める。

$$
r\textrm{-Leaper}=\sum_{\substack{a,b\in \mathbb{Z}_{\ge 0} \\ a^2+b^2=r^2}} L(a,b)
$$

ただし、$${\mathbb{Z}_{\ge 0}}$$は$${0}$$以上の整数全体を表す。

$${\square}$$

三平方の定理から、「距離$${r}$$のマスに跳ぶ」とは、$${a^2+b^2=r^2}$$を満たす$${a,b}$$でもって$${a}$$対$${b}$$に跳ねることと同義です。

定義1.2の通り、$${r\textrm{-Leaper}}$$は($${r}$$によっては)いくつかの$${L(a,b)}$$を複合した駒になります。いくつか例を確認しましょう。

例1.3(Knight(S))
$${\sqrt{5}\textrm{-Leaper}}$$を考える。$${a^2+b^2=5}$$となる非負整数$${a,b}$$は、$${a=1,b=2}$$と$${a=2,b=1}$$しかない。よって、

$$
\sqrt{5}\textrm{-Leaper}=L(1,2)+L(2,1)=L(1,2)
$$

となる。つまり、$${\sqrt{5}\textrm{-Leaper}}$$は1対2の八方桂、すなわちチェスのKnightに他ならない。

$${\square}$$

例1.4(Root-20-Leaper)
$${\sqrt{20}\textrm{-Leaper}}$$を考える。$${a^2+b^2=20}$$となる非負整数$${a,b}$$は、$${a=2,b=4}$$と$${a=4,b=2}$$しかない。よって、

$$
\sqrt{20}\textrm{-Leaper}=L(2,4)+L(4,2)=L(2,4)
$$

となる。つまり、$${\sqrt{20}\textrm{-Leaper}}$$は2対4の八方桂である。冒頭の【Root-20-Leaper】(柑)の定義と確かに一致する。

$${\square}$$

例1.5(5-Leaper)
$${5\textrm{-Leaper}}$$を考える。$${a^2+b^2=5^2}$$となる非負整数$${a,b}$$は、下記の4組である。
・$${a=3,b=4}$$、$${a=4,b=3}$$
・$${a=0,b=5}$$、$${a=5,b=0}$$
よって、

$$
5\textrm{-Leaper}=L(3,4)+L(0,5)
$$

となる。$${5\textrm{-Leaper}}$$の利きを図示すると下記の通り。

L = 5-Leaper

$${\square}$$

例1.6(Root-65-Leaper)
$${\sqrt{65}\textrm{-Leaper}}$$を考える。$${a^2+b^2=65}$$となる非負整数$${a,b}$$は、下記の4組である。
・$${a=1,b=8}$$、$${a=8,b=1}$$
・$${a=4,b=7}$$、$${a=7,b=4}$$
よって、

$$
\sqrt{65}\textrm{-Leaper}=L(1,8)+L(4,7)
$$

となる。

$${\square}$$

例1.7(Root-1105-Leaper)
$${\sqrt{1105}\textrm{-Leaper}}$$を考える。$${a^2+b^2=1105}$$となる非負整数$${a,b}$$は、下記の8組である。
・$${a=33,b=4}$$、$${a=4,b=33}$$
・$${a=32,b=9}$$、$${a=9,b=32}$$
・$${a=31,b=12}$$、$${a=12,b=31}$$
・$${a=24,b=23}$$、$${a=23,b=24}$$
よって、

$$
\sqrt{1105}\textrm{-Leaper}=L(4,33)+L(9,32)+L(12,31)+L(23,24)
$$

となる。

$${\square}$$

ここまで見てきたように、$${r}$$が大きくなるほど複合する$${L(a,b)}$$の数が増える傾向にあります。例えば$${1105\textrm{-Leaper}}$$は、具体的に記載はしませんが14個の相異なる$${L(a,b)}$$を複合した駒になります。

最後に極端な場合を確認しましょう。

例1.8(0-Leaper)
$${0\textrm{-Leaper}}$$を考える。$${a^2+b^2=0}$$となる非負整数$${a,b}$$は、$${a=0,b=0}$$しかない。よって、

$$
0\textrm{-Leaper}=L(0,0)
$$

となる。これは、現在位置に移動する駒 Zero(零)である。

$${\square}$$

例1.9(Dummy)
$${\sqrt{3}\textrm{-Leaper}}$$を考える。明らかに$${a^2+b^2=3}$$となる非負整数$${a,b}$$は存在しない。よって、

$$
\sqrt{3}\textrm{-Leaper}=\varnothing
$$

となる。つまり、$${\sqrt{3}\textrm{-Leaper}}$$はどこにも移動できない駒、すなわち Dummy(偶)である。

$${\square}$$

例1.10(Dummy)
$${\sqrt{1999}\textrm{-Leaper}}$$を考える。$${1999}$$は$${4}$$で割って$${3}$$余る素数なので、フェルマーの二平方定理(後述)より$${a^2+b^2=1999}$$となる非負整数$${a,b}$$は存在しない。よって、

$$
\sqrt{1999}\textrm{-Leaper}=\varnothing
$$

となる。つまり、$${\sqrt{1999}\textrm{-Leaper}}$$はどこにも移動できない駒、すなわち Dummy(偶)である。

$${\square}$$

例1.9で$${a^2+b^2=3}$$の整数解が存在しないことはすぐに分かると思います。しかし、例1.10で$${a^2+b^2=1999}$$の整数解が存在しないことを一個一個計算で確かめるのは大変かと思います。例1.10に記載の通り、フェルマーの二平方定理を使うとすぐにわかります。

定理1.11(フェルマーの二平方定理)
奇素数$${p}$$に対し、下記は同値である。
(1)$${a^2+b^2=p}$$となる整数$${a,b}$$が存在する
(2)$${p\equiv1\pmod 4}$$
また(1)の分解は、$${a,b}$$の順序や符号を除いて一意的である。

$${\square}$$

奇素数を$${4}$$で割った余りは$${1}$$か$${3}$$のどちらかです。そのため、$${1999}$$のように$${4}$$で割った余りが$${3}$$の奇素数$${p}$$に対して$${a^2+b^2=p}$$となる整数$${a,b}$$は存在しません。

フェルマーの二平方定理の詳細については例えば下記をご参照ください。


話は変わりますが、面倒な計算は Wolfram Alpha 先生にやってもらっています。画像のように方程式などを入力すると、整数解を求めてくれます。

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