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(a,b)-RiderとP(n)-Rider

$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$と$${P(n)\textrm{-Rider}}$$の定義と基本的な性質を確認します。

表記を簡単にするため、$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$のことを$${R(a,b)}$$、$${P(n)\textrm{-Rider}}$$のことを$${PR(n)}$$と書くことにします。

駒の複合や$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$については既知として進めます。必要に応じて下記をご参照ください。

まずは無限盤で考えます。

$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$は$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$を最小ステップとした線駒です。$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$は以下のように定義できました。なお$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$のことを$${L(a,b)}$$と記載しています。

定義1($${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$)
$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$を以下で定める:

$$
\begin{align*}
&L(a,b) \\
=&\{ (\pm a,\pm b) \mid \text{\small{複号任意}} \} \cup
\{ (\pm b,\pm a) \mid \text{\small{複号任意}} \} \\
=&\{ (a,b), (-a,b), (a,-b), (-a,-b), (b,a), (-b,a), (b,-a), (-b,-a) \}
\end{align*}
$$

$${\square}$$

また$${L(a,b)}$$の定義から、下記のように$${a}$$と$${b}$$を入れ替えたり、符号を反転させても不変です。

$$
L(a,b)=L(b,a)=L(-a,b)=L(a,-b)=L(-a,-b)=\cdots
$$

$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$は$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$の動きで連続跳びする駒なので、以下のように定義できます。なお、$${\mathbb{N}}$$は$${1}$$以上の整数全体を意味します。

定義2($${(a,b)\textrm{-Rider}}$$)
$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$を以下で定める:

$$
\begin{align*}
&R(a,b) \\
=&\{ (\pm na,\pm nb) \mid n \in\mathbb{N}, \text{\small{複号任意}} \} \cup
\{ (\pm nb,\pm na) \mid n \in\mathbb{N}, \text{\small{複号任意}} \}
\end{align*}
$$

$${\square}$$

$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$はNightRider(夜)の拡張になっています。

例3(NightRider(夜))
Knight(騎)の利きの方向に連続跳びする駒はNightRider(夜)と呼ばれ、チェスプロブレム(フェアリー)では比較的よく使用される。
$${\mathrm{騎} = (1,2)\textrm{-Leaper}}$$であり、$${\mathrm{夜} = (1,2)\textrm{-Rider}}$$である。
NightRiderは下図のように、Knightの線上で障害物がない限り同一方向に連続的に動くことができる。

$${\square}$$

$${L(a,b)}$$と同様に、$${R(a,b)}$$の$${a}$$と$${b}$$を入れ替えたり、符号を反転させても不変です。

$$
R(a,b)=R(b,a)=R(-a,b)=R(a,-b)=R(-a,-b)=\cdots
$$

トーラス盤上の$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$については、$${L(10,2)=L(1,2)}$$のように計算ができました。次の命題は、$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$でも同じことができることを示しています。

命題4(トーラス盤上の$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$)
$${a,b,c}$$を整数とする。$${9\times9}$$トーラス盤上の$${(a,b)\textrm{-Rider}}$$について、以下が成り立つ:

$$
a\equiv b \pmod{9} \,\,\,\Longrightarrow \,\,\,R(a,c)=R(b,c)
$$

(証明)
任意に$${M\in R(a,c)}$$をとる。一般性を失わずに$${M=(e_1na,e_2nc)}$$と書ける$${(e_1,e_2\in \{\pm 1\},\ n\in\mathbb{N})}$$。$${\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}}$$上で$${e_1na=e_1nb}$$なので、$${M\in R(b,c)}$$である。逆の包含関係も同様に示せる。

$${\square}$$

補足
無限盤上の駒は、$${\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}}$$の部分集合のことに他ならない。無限盤上の駒を$${\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/9\mathbb{Z}}$$で送った像がトーラス盤上の駒である。

$${\square}$$

例5
$${9\times9}$$トーラス盤上の$${R(a,b)}$$は、$${R(a,b)}$$の$${a,b}$$を$${9}$$で割った余りが等しい数に替えても不変である。符号を反転させても不変であることも用いれば、例えば下記のように計算できる:

$$
R(20,24)=R(2,6)=R(2,-6)=R(2,3)
$$

$${\square}$$

$${P(n)\textrm{-Leaper}}$$と同様に$${P(n)\textrm{-Rider}}$$を定義します。$${P(n)\textrm{-Leaper}}$$については下記をご参照ください。

定義6($${P(n)\textrm{-Rider}}$$)
正の整数$${n}$$に対し、$${P(n)\textrm{-Rider}}$$を下記で定める。

$$
PR(n)=\sum_{a,b\in\mathbb{N},\ ab=n} R(a,b)
$$

$${\square}$$

例7
$${P(4)\textrm{-Rider}}$$を具体的に求めてみよう。
$${4=1\cdot4=2\cdot2}$$であるから、下記のように計算できる。

$$
\begin{align*}
&PR(4) \\
=&\sum_{a,b\in\mathbb{N},\ ab=4} R(a,b) \\
=&R(1,4)+R(2,2)+R(2,2)+R(4,1) \\
=&R(1,4)+R(2,2)
\end{align*}
$$

$${\square}$$

トーラス盤上の$${PR(n)}$$の計算例を見て本記事を終えたいと思います。

例8
$${9\times9}$$トーラス盤上の$${PR(18)}$$を計算してみよう。$${18=2\cdot 3^2}$$であるから、

$$
\begin{align*}
&PR(18) \\
=&\sum_{a,b\in\mathbb{N},\ ab=18} R(a,b) \\
=&R(1,18)+R(2,9)+R(3,6) \\
=&R(1,0)+R(2,0) + R(3,3) \\
\end{align*}
$$

である。
$${9\times9}$$トーラス盤上では、$${R(1,0)=R(2,0)}$$である。実際、$${R(2,0)}$$の1ステップは、同方向に$${R(1,0)}$$が2ステップすることと同じであるから$${R(1,0)\supset R(2,0)}$$である。
一方、$${R(1,0)}$$の1ステップは、真逆の方向に$${R(2,0)}$$が4ステップすることと同じであるから$${R(1,0)\subset R(2,0)}$$である。

以上より、$${PR(18)=R(1,0) + R(3,3)}$$となる。

$${\square}$$

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