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第2回 P(n)-Leaper の定義

前回の続きです。


前回の定義1.7で$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$を定義しましたが、毎回この表記を使うと紙面を取るので、$${L(a,b)}$$と略すことにします。

定義2.1(Pn-Leaper)
正の整数$${n}$$に対し、複合八方桂$${P(n)\textrm{-Leaper}}$$を下記で定める。ただし、和は$${n}$$の正の約数全体をわたる。

$$
P(n)\textrm{-Leaper}=\sum_{a\mid n} L(a,n/a)
$$

簡単のため、$${P(n)\textrm{-Leaper}}$$を$${P(n)}$$と書くことにします。

少々いかめしい定義に見えるかもしれませんが、例2.2を見れば別に大したことは言っていないことが分かると思います。

$${L(a,b)=L(b,a)}$$なので和の半分ぐらいは余計ですが、集合の和なので問題はありません。つまり、駒$${A}$$に対し$${A+A=A}$$となります。具体的には下記の計算の通りです。

例2.2

$$
\begin{align*}
P(1)&=L(1,1) \\
P(2)&=L(1,2)+L(2,1) \\
      &=L(1,2) \\
P(3)&=L(1,3) \\
P(4)&=L(1,4)+L(2,2)+L(4,1) \\
      &=L(1,4)+L(2,2) \\
P(5)&=L(1,5) \\
P(12)&=L(1,12)+L(2,6)+L(3,4)
\end{align*}
$$

なお$${P(n)\textrm{-Leaper}}$$は、「現在地を頂点とする面積$${n}$$の長方形を書き、対角の頂点に跳べる駒」と解釈できます。

例2.3
$${P(12)=L(1,12)+L(2,6)+L(3,4)}$$の右上方向の利きを図示すると下記のようになる。橙の長方形は$${1\times 12}$$、青は$${2\times 6}$$、黄は$${3\times 4}$$で、いずれも面積が12である。

P=P(12)の右上方向の利き

次の命題は当たり前かもしれませんが、念のため証明を付けます。

命題2.4(Pの単射性)
正の整数$${N,M}$$に対し、次が成り立つ。

$$
P(N)=P(M) \Longrightarrow N=M
$$

(証明)
$${(1,N)\in L(1,N) \subset P(N)}$$である。$${P(N)=P(M)}$$なので$${(1,N)\in P(M)}$$だが、「1」に着目すれば$${(1,N)\in L(1,M)}$$が分かる。$${L(1,M)}$$に$${X}$$成分・$${Y}$$成分ともに正である元は$${(M,1)}$$と$${(1,M)}$$しかないので、$${N=M}$$。
(証明終)

上記の命題は、$${P}$$を$${\mathbb{N}}$$から$${2^{\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}}}$$への写像と見たときに、$${P}$$が単射であると言っています。

$$
\begin{align*}
P\colon&\mathbb{N}\hookrightarrow 2^{\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}} \\
&n\;\mapsto P(n)
\end{align*}
$$

なお、集合$${A}$$に対し、$${A}$$の部分集合全体の集合を$${2^A}$$で表しています。例えば、$${A=\{a,b\}}$$に対し、

$$
2^A=\{\varnothing,\{a\},\{b\},\{a,b\}\}
$$

となります。

これまで無限に大きい盤($${\mathbb{Z}\times\mathbb{Z} }$$)で話を進めてきましたが、次回以降トーラス盤上の$${P(n)\textrm{-Leaper}}$$を考えます。


次回はこちら。


<更新履歴>

  • 2021/12/27

    • P(n)の幾何的解釈と例2.3を追加(駒井めいさんご指摘)

    • 命題2.4の後の写像$${P}$$の終集合を修正。

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