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Die Daraus Und Die Marinas『Blumen Und Narzissen』

遅咲きの人は努力の人。
早咲きの人は才能の人。

色々経験して苦渋を啜った方が人間の深みが生まれる、何ていうのは才能の無い人の感覚だろう。
残念ながら僕を含めて殆どの人が努力をしないと何にもなれない。

才能のある人は自分の成功を簡単なように語ってしまうので、聞いてる凡人は『僕にも出来るかも』と身の丈に合わない成果を夢見て破滅する。
多分殆どの役者とバンドマンがそうだ。
売れる人は売れるし売れない人は売れない。
きっと、ずっと。

例えば、タレントの中山秀征は14歳の時に『3ヶ月でデビューできなければ辞める』と言って上京した3ヶ月後、火曜サスペンス劇場の準主役に選ばれて芸能界デビューしたわけで。
見た目が飛び抜けて美しくなくとも、パッと見てパッと映える人はパッと目に止まる。

音楽(ニューウェーブ)の例で言うとね、そうね、パッと思いつくのが彼ですね。今日紹介するのが、こちら。

Die Daraus Und Die Marinasの『Blumen Und Narzissen』

天才少年 アンドレアス・ドーラウ率いるDie Daraus Und Die Marinasの1stアルバムです。
中山ヒデちゃんはそんな感じでしたが、ドーラウ少年はどうだったかと言うとですね、

学校の課題で作成したポップソングが国民的大ヒットとなった。

これが才能のある人間の成果ですよ。
もう少し詳しく説明します。

ドイツのハンブルクに住む美大出身の音楽家 ホルガー・ヒラー(うる星やつらの小林泉美の元旦那)からギターを習っていたアンドレアス・ドーラウ少年は、ある日ヒラーから録音機材を貸してもらい思い思いの作曲を始める。
そして、出来上がった楽曲をヒラーのつてで地元のインディペンデントレーベルZick Zack(NDWの名門!)から7インチレコードとして発表。
ドーラウ少年は16歳の夏休みに家族でバカンスに出かけるが、旅先でも作曲に没頭しいくつかの楽曲が出来上がった。
休み明けに始まった学校の音楽の授業で「ポップソングを作る」と言う課題を出される。
彼は後輩の女の子たち(Die Marinas)にコーラスを頼み、「fred vom jupiter」と言う木星から来たハンサムな宇宙人についてもポップスを作成して提出した。
課題の評価は【B】程度でしたが、彼はデュッセルドルフにあるATA TAK(前回の記事を参照してください)の事務所にその音源を自らの手で持って行った。
「fred vom jupiter」を気に入ったATA TAKはシングル盤としてリリース。
25000枚を売り上げる大ヒットとなった。
気を良くしたATA TAKはドーラウ少年がバカンス時に作成した楽曲を元に彼の1stアルバムを作成した。

それが今紹介している『Blumen Und Narzissen』。
残念ながらこのアルバムは商業的には大失敗。
最近の似たような現象で言えば、「香水」で馬鹿売れした瑛人くんの1stアルバムが全然売れなかったのと同じ感じ。
聴き手が勝手に一発屋の烙印を押してしまったが故の結果。

しかし、この『Blumen Und Narzissen』はノイエ・ドイチェ・ヴェレの枠を飛び越えてテーンエイジポップスの金字塔と呼べる大傑作です。

この作品に出会った時にまず惹かれたのがジャケット。
大阪にあるレコード屋の店主さんと仲良くさせて頂いているのですが、
「もう一歩踏み込んだNDWのアルバムが欲しい」とリクエストしたら出て来たのです。
僕は変態的なものを期待してそう言ったのですが、出て来たのがこれ。

もうね、眩しすぎて気味が悪かったの。

田原俊彦みたいな超アイドル感。
期待を大きく裏切られながらも視聴するとさらに驚く。
「ジャケットのイメージのままだ」
そう、ドーラウ少年の甘く下手くそな歌が聴けるのだ。
しかし、楽曲には高校生らしい異様なキラキラ感とATA TAKらしい捻りが効いている。
曲の邦題を見ると「チューリップとスイセン」や「僕は幸運」、そして「木星からきたフレート(fred vom jupiter)」など成人では付けられない痛々しい程の愛らしさに溢れている。
歌詞の内容も同様。
青春をリアルタイムで表現できる高校生でなければ生み出せない輝きです。

アンドレアス・ドーラウはそのままメインストリームで活動していくのかと思いきや、「好きなようにやり続けたい」と言う基本姿勢を崩せずにアンダーグラウンドでの活動に戻る。
商業目的でなく精力的な活動をする中で、1996年にリリースした「girl in love」のようなヒットソングをたまに飛ばしている。
才能は隠しきれない。

製作への姿勢だけでなく、当時のキラキラ感や独特の甘い歌声は今も健在。
個人的な感想ですが、岡村靖幸のナルシシズムと重なるところがある。
「あの娘僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう」なんて言えないよ、普通。

田原俊彦+岡村靖幸=アンドレアス・ドーラウ の構図が僕の中では成り立っています。




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