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【解説】休日、北部街道にて
・東世(とうぜ)とは
東の青の国、南の朱の国、西の白の国、北の黒の国で構成される広大な大陸世界であり、物語の舞台。歴史的な名残から四つの国に分かれてはいるものの、今は統治者もなく、国家としては成り立っていない。
寺院と学院が要の機関として機能しており、個人の手に負えない困りごとがある際はどちらかを頼る。海はあるが太陽と月がなく、昼と夜は神によって分けられる。
東世では、魂を持つものは必ず魔法を使
【小説】休日、北部街道にて
珍しいことに、その日ユッセは朋人(ゆうじん)の妹と閑散とした北部街道を歩いていた。
珠銭(じゅせん)をやるから妹を見ていてほしい、と頼まれたのが今朝のことである。特に何かあったわけではないが、急に独りで街を歩きたい気分になったのだそうだ。
ライヒは兄そっくりの整った顔立ちをした快活な少女で、ユッセにとっては確かに朋人の妹なのだが、教え子とも言える。この春から彼女の兄もユッセも、紫錦黒海学
【小説】ユノン先生、赴任する
トキノは珠珠の子なのだそうだ。言われてみれば、両親と手を繋いで歩く彼の横顔は、妙に照れくさそうだった、ような気がする。現在自分が置かれている環境か、それとも大人と手を繋いで歩くこと自体か、何かしらがトキノによっては不慣れで、むず痒い心地のすることなのだろう。
珠珠の子は神からの贈り物だ。珠珠の親となる者は、神である知狎から与えられた預言と加護を携えて子を迎えに行く。東世では知狎から賜るものを「珠