見出し画像

最近、時々

<533字>

日々、わたしたちは、思い出したり忘れたりしながら、”いま”を生きている。
私たちが生きてるのと同じように、多分記憶も生きている。
何かのきっかけに触れて、ふっ、と浮かんでこちらを見てくる。目が合った時に初めて、その記憶が今まで海の底に眠っていたのだということを思い出す。

記憶というものは、他の記憶たちと繋がっている。だから時々、呼んでもないはずの記憶が前触れもなく現れて、じっとりとした視線で心を蝕んでくることがある。「忘れさせてあげないよ」って言いたげな目をしている。私はいろんなことを思い出し、余計なことを考えさせられることとなる。

かつての私のずるさ、消し飛ばした人間関係、他人が抱える対人感情の変遷。

直視できない眩しさ、誰かが見つめる高い未来、野心、理想、たまの諦め。

影が落ちるような劣等感、誤魔化した自分の人生。

失ったものたち、奪ったものたち、戻ることのない時間。


最近、時々、声を聞く。
「自分のせいだよ」
「そんなこと分かってて選んだくせに」
「傍観をやめて力をつけなよ」

視線の送り主は、過去の罪を風化させることを許してくれない。きっとこれは「償い」とか「禊」とか、そういう名前がつくものだ。愚かな自分に課すべき罰、それが「忘れられない過去の視線」なのかもしれない。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?