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「おそらくあの時、世界で一番かっこ悪かった自分に」の話〜後編

マチャミ姉さんのエピソード。

当日付き合ってた彼から

「別れよう」

と切り出されたマチャミ姉さん。

「別れたくない」

と主張するけど、出て行こうとする彼。

そこで、マチャミ姉さんの取った行動とは……

足にすがって、全力で阻止!

「別れんといて〜!!」


当時、TVでこの話を聞いた私は……

(ひぇ……無理じゃそんなん……私には出来んな……)

と思っていた。


しかし。

どうしても、彼を失いたくない!

そんな私は

「二度とあんな感じのキツい言い方はしないから、嫌いにならんで欲しい!」

と繰り返し主張した。

いつもは、のんびり語尾を少し伸ばしながら話す彼の

「うん」

とか

「はい」

とかそっけない態度に……

それでも私は諦めない!

ここで、皆さん疑問に思うかもしれない。

(そんな事で、彼は過剰に反応し過ぎじゃないか?)

それはもっともだと私も思う。

しかし。

10年前の私は……

まあ……確かにキツかった。

切れ味抜群だった。

日本刀の様だと言われた事もあった。

サウザーの様だと言われた事もあった。

(聖帝サウザー様/北斗の拳イチゴ味ではすっかりギャグキャラが定着)

例えが分かり難いな……

女子がキレた時。

声が一オクターブ低くなり、目は一か所を見つめ、表情は無く、ほぼ能面の如し。

(こわぁ……)

ドスの聴いた声に肌は粟立ち空気はピリつく。

完璧にオーラを感じる事が出来る。

念能力を取得してないハズなのに!

(あー……アレか)

(アレだな)

そう……

アレです。

覇王色の覇気。


女子は……使う側の方が多いと思うので……

旦那さんに聞いてみると良いだろう。

「私……怖い?」

それに対して

「えっ?全然!」

以外の答えなら

それ即ち

「是」


特に彼は、職人さんなので、ヤンキー系やオラオラ系には滅法強かったが、この手の女子の怖さには弱かった。

私はこの件があって以降、この手のキレ方をする事はなくなった。

法事で久しぶりに会った妹がパートナー相手に

このキレ方を炸裂させているのを見て

(うーわ、こえーっ!!)

と思ったので、使い手のうちは分からないかもしれない。

(この話を聞いて、全くピンと来てない人は無自覚に放ってる可能性が高いかも?)

無論、これで成立ってるご家庭はこれで良いのだ。

ウチはダメだっただけで……


天下一品の駐車場でやいのやいのやってると、

会計を済ませた友達が
 
「寒いから、車の中で話したら?」

と声をかけてくれた。

友人が車のエンジンをかけ、しばらくして暖房が効いてきた。

助手席で電話越しに必死に食い下がる私。

じんわり体が温まると涙と一緒に鼻水も出てきた。

「何か……涙と鼻水がめちゃ出てきた〜」

電話の向こう側で

「ふふっ」

と声がし、明らかに空気が変わったのを感じとった私は

(ここだっ!ここで一気にたたみかける!)

笑いをガンガン取りに行く事にした。

30年生きてきた全てを、今ここで出し尽くす!

(爆笑させたら私の勝ちだっ!!)

最初はクスクスだった笑いが爆笑に変わった時

「分かった〜。もう大丈夫」

といつも通りの声になった彼が言った。

「え?じゃあ、また会ってくれる?」

「うん。気持ちが伝わったから」

「や……やったーー!!ありがとー!!」

電話を切り、友人にお礼を言う。

「いやー……マジでありがとう」
 
「途中から、笑いが止まらんかったわ」

「それは良かった……」

「よっしゃ、カラオケ行こう!」

とカラオケに行って一緒に歌ったあの歌を……

私は一生忘れない。


ウルトラソウっ! ヘィっ!!


あの時のかっこ悪かった自分へ。

その人は……

今の夫かっちゃんじゃから。

ずっとその手を離さないように。

今の気持ちを忘れないように。




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