企画参加【#才の祭 】「その告白の行方」
【A面】
「新井先生ー!教室行くー?」
「んー?」
「教室に真由がいると思うけど、落ち込んでるから、デリカシーのない言葉かけないでね!」
「はぁ?村上?あー、分かった」
(無礼な奴らだな……)
と思いながら、職員室を出て、2年1組の教室へ。
二週間後に迫る文化祭の準備で、あっちもこっちもてんやわんやだ。
ウチのクラスは男女逆転シンデレラの劇をするらしい。
演劇部の村上真由は
脚本兼監督役……と言う名のなんでも係になっていた。
「おーい、村か……」
声をかけようとして、思いとどまる。
(すげぇ寝てるな……)
机に突っ伏して、半分口も開いてる……
起こすのもアレだしな……
用事を済ませてから、隣の席のイスに座り、寝顔を眺める。
眉間にシワ……
「ムニャ……段取り……ムニャ……」
「プッ……友近!」
自販機で買ったチオビタドリンクを机に置いた。
「愛情一本……って知らねーか……あんま、頑張り過ぎんなよ」
寝てる村上の頭をポンポンして、職員室へ戻った。
【B面】
「ちょっと、もう……ヤバいな?何もかんもダメな気がしてきた……」
思わずグチをこぼす。
「真由〜!そんな事言わないでよ!」
「高校の文化祭なんだからさ……そんな思いつめなくていいし、楽しく……ね!」
「ほら!ウチら、肉まんとか買ってくるから!」
「カレーまんにしてくれ……」
友達は優しい言葉をかけてくれる……
(やっぱ、他校の文化祭になんて行かなきゃ良かった……)
私立で潤沢な予算と時間をかけて、丁寧に仕上げられた演劇部の劇は観客を感動させ
私を落ち込ませた。
(ウチの演劇部なんて……私を含めて3人しかいないし……比べるもんじゃないけど……)
考えても考えても……
(真っ白なアレだわ……)
「あーあ……」
と、そのまま寝てしまっていたようだ。
ふと、気配がした。
「村か……」
(新井先生!わー……デリカシーないし、苦手なんだよな……)
狸寝入りを決め込む。
コツン、と何かが机に置かれた気配がした。
「愛情一本……って知らねーか……あんま、頑張り過ぎんなよ」
と、おもむろに私の頭をポンポンして、教室を後にした。
「ただいまー!!」
友達が帰ってきた。
「あ……おかえり……」
「ちょっ……どしたー?顔、真っ赤!!」
「……何でもない……」
「知恵熱じゃない?」
「マジでーっ!」
顔が火照る。
心臓がバクバクしてる。
(うわぁ、何だこれ……)
「イヤ、大丈夫……何か……行けそうな気がしてきた!」
「おぉーっ!!」
【A+B面】
「って事があってから、気になり始めて……気付いたら好きになってて……」
「えー!めっちゃ良い!それから?」
「卒業式の時に思い切って告白して……」
「キャーッ!」
「フラレたけどね……」
「切なぁ……」
「先生!続き!」
「もー!ここまで!ハイ休憩、終わり!」
「えぇ〜っ!」
私は今、母校で教師をしている。
演劇部の顧問も。
今日は生徒達と新しいお芝居の練習中。
今月の文化祭の本番に向けて。
(今日も遅くなるな……)
ピンローン♪
夫からラインだ。
(ドアの外、見て)
「……?」
部室を出ると、小さな紙袋が。
中にはチオビタドリンクと小さなメモ。
「頑張り過ぎんなよ」
(もう……今はモンエナとかあるでしょ)
部室に戻ると生徒達がニヤニヤしてる。
「先生!顔真っ赤!ダンナでしょ?」
「もう……勘弁してよ……」
【A+B面】=両面
【#才の祭 】【#才の祭小説 】
気が向けばサポートして下さると、大層嬉しいです!頂いたサポートは私自身を笑顔にする為に、大事に大事に使わせてもらいますゆえ、以後よしなに(๑•̀ㅂ•́)و✧