「夫がウキウキする時は!?」の話

かっちゃんが仕事から帰ってきた。


「ただいま〜」

「おかえり〜」

「ちょっと聞いてよ〜」

珍しく興奮気味だ。


「おー、どしたー?」

「昨日、ワークハウス行ったんよ!」

「うんうん」

「そしたら、めちゃくちゃカッコいい爪切りがあったから買っちゃった〜!」

「ほぅ……」


カッコいい……爪切りとは一体……。

何か……変身するようなヤツか?

変形をして、爪切りとは思えないビジュアルになるとか?

そうだな、例えば……

メカっぽい感じに。

(いいな……)


「見てみる?」

ウキウキで足取り軽く、爪切りを取りに行くかっちゃん。

「これ!」

「あっ!関孫六!これは……良いんじゃない?」

「知っとるん?」


一人暮らしを始めた時。

近所のホームセンターで、それとは知らず買った包丁が関孫六の物であった。

大して高くはなかったが、とても使いやすく、切れ味も良く、ずっと大切に使っていた。


が。

結婚して、かっちゃんが

「新築の家でお餅もらってきた〜」

とおっきめのお餅を持ち帰り、それを切っていると硬いものにぶち当たった。

「あれっ?何か入っとる!」

何と、餅の中に500円玉が入っており、本来なら喜ぶべき所なのだろうが

気付けば関孫六は刃こぼれし

「くっそー!!」

私と関孫六との蜜月は終わった。

そんな思い出の関孫六……

(絶対良い物に決まっとるわ!)

「こないだ爪切ったばっかじゃから、しばらく使えんけど……」

とかっちゃんが言うので

「あ!私、今日爪切る!」

と一番風呂ならぬ、一番爪切りを……

頂く。


「これ……いくらだったでしょう?」

ウッキウキで聞いてくる。

「ま……¥1800ってトコかな」

即答する私。

「えっ?値段ついとった?」

「えっ……イヤ……」

「¥1800だったんよ……」

「あ……」


しまった。

当ててしまった。


「もー!何で当てるんっ?」

「あわわ……ごめん……つくねは数字を当てるの超得意なんだよ……」

「えーっ」

「それに……¥2000超えたら買わんじゃろうし」

「うんうん」

「かっちゃんが出す範囲のちょうど良い……ちょっと良いお値段がこの辺りかなと……」

「その通り……」
 
少ししょんぼりしてるかっちゃんを見て、私は次の言葉を飲み込んだ。


「その爪切りネットで¥1000で売ってたわ」


言わんでいい事は言わない……

それ位の気遣いは出来るんだ。


結論

【言わぬが花】



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