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「今日出会った彼」の話

今日の仕事中。

とあるマンションの一室にて。

清掃道具を玄関の外に置こうとして、ドアを開けた。

ヒュンヒュン

と、何処かで聞いた、何だか懐かしい音がする。

(ん?何の音?)

ふと、顔を上げると、玄関の前の公共スペースにて……

おじさんが縄跳びをしている!

(えっ、縄跳び!?)


バチっと、おじさんと目があった。

ほんの束の間。

しかし、体感で永久に続くのかと思われるような、その時間。

(やっべ、見なかったフリも出来ない至近距離!!)


「……。おはようございます!」

意を決して、挨拶をした。


すると、おじさんは蚊の鳴くような声で

「ぉはよぅございます……」


ヒュンヒュン。

縄跳びは……

止まらない。


そして。

おじさんは縄跳びをしながら、そのままゆっくりと角度を60°ほど向こうへ変え、少しずつ後ずさった。

(すげぇ、縄跳びを続けながらの移動!)


私も大概気まずかったが、彼の心は一体どれ程の物だったろうか……

心に一切の乱れが無ければ……

それは既に達人の域。

「マスター・オブ・縄跳び」

の称号を、彼に捧げよう。







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