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『教養としての上級語彙』(宮崎哲弥・著)

 宮崎氏は、コメンテーターとしてテレビやラジオで話すことや視点・視座に感心し納得する方の一人です。
 ラジオで宮崎氏が紹介するのを聞き、気になっていた『教養としての上級語彙―知的人生のための500語―』(新潮選書)です。

 本書を手にして、タイトルにある「上級語彙」や「知的人生」が、ちょっと気になりました。

 それは高級語彙〈学術用語、専門語〉と基本語彙〈日常語〉との中間辺りに位置する言葉の衰えによる。日常語というほど頻繁には使われないが、意義としては日常語の範囲に属することの多い、やや難しい言葉は表現〈言回し〉。本や硬めの文書、畏まったスピーチや講演などには登場するが、日常会話ではあまり話されない語彙。本書ではこうした言葉の群れを「上級語彙」と呼ぶ。

 マスコミが、「上級国民」と揶揄するような表現を使っていました。また、「知的生産」を冠する書籍が目立って時間がたちました。
 そのことが、言葉を気にしたのでしょう。

 でも、言葉(語彙)を綴っている本書ですから、これらを選択したねらいが…。


 出版社の図書紹介に、

 「さらば、ボキャ貧!」――文章の即戦力となる言葉の数々。
 「矜恃」「席巻」「白眉」……ワンランク上の語彙を使いこなして表現をもっと豊かにしたい。そんな要望に応えるべく、博覧強記の評論家が中学生の頃より本や雑誌、新聞からメモしてきた「語彙ノート」の1万語から500余語を厳選。読むだけで言葉のレパートリーが拡がり、それらを駆使できるようになる実用的「文章読本」。
 索引は新潮社の本書ページでダウンロード可能。

とあり、本書を読むだけで、日常会話ではあまり使わない“上級語彙”がレパートリーに加わっていくと述べています。

 語彙には「理解語彙」と「使用語彙」とがあるという。理解語彙とは、文章を読んだり、話を聞いたりしたときに意味のわかる語彙群のことだ。一方、使用語彙とは、実地で書いたり、喋ったりして、能動的に使うことのできる語彙群をいう。
 (略) 理解する〈読解する、聞き知る〉だけならば大雑把な語釈であっても何とかなるが、使用する〈書く、話す〉となると高い制度の言語処理が必要となる、ということだ。

 本書に掲載されている“言葉”の多くを難しく感じました。それを、著者が〈 〉で括り説明されていることで“使用語彙”へと変わっていきます。


 “言葉を遣う”すべての人にお薦めです。
 そして、子供達と言葉を交わすことの多い教員には、ぜひ読んでいただきたい。
 若い先生、手元にどうぞ。


   目次


まえがき
凡例
第一章 イントロダクション──上木と忖度──
第二章 世間の交らい──友愛・感化・恥・地位・男と女──
第三章 聞こえる、見える──「私」が感受する上級表現──
第四章 行う、行く、戦う──「私」が行為する上級表現──
第五章 笑う、怒る、泣く──「私」が叙情する上級語彙──
第六章 読む、聞く、叙説する──知的活動に関わる上級語彙──
あとがき

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