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『続・宇宙のカケラ 物理学者の詩的人生案内』(佐治晴夫・著)

 6月の成幸読書で届いた図書で、清水店長が

 実に面白いよ。佐治先生は、物理学者でありながら音楽にも精通しているし、言葉で説明できないものを扱う、詩とか短歌とか俳句とかにも詳しいんだよね。(略) あと、もう一つ、今月の本を読んでいて、なるほどと思ったのが、時間の考え方だね。(略) 時間が何かを持ってくるんだっていう。そのために準備さえしていればいいと。

と述べていた『続・宇宙のカケラ 物理学者の詩的人生案内』(毎日新聞出版・刊)です。

 本書は、東京急行電鉄(東急)発行の「SALUS」に昨年8月から本年4月までに掲載されたものが書籍化されてものです。

 過去にとらわれず、未来をおそれず生きるには?
 不安な時代をどう乗り越えていけばよいか?
 科学の心で世界を見渡せば答えがみえてくる。
 88歳の物理学者が「人生の謎」にせまる感動講義

 自分という存在は、宇宙のはじまりに繋がっている。
 私たちの日常は奇跡のようだ――

 どの項も、読みやすい文章で綴られ、文量も3ページ程で、一気に読むことができます。とはいえ、一部ですが“専門家としての説明”となっている個所もあり、読み辛いときはスルーして気軽に読めばよういでしょう。
 今回、1章から順に読んでいきましたが、気になる項目を選んで読むこともよさそうです。

 もし、著者の図書が初めてで、本書を「どこから読もうか」と迷ったら、「第3章 すべての学びは」を最初に読むことをお勧めします。
 この章に、著者の視座や発想を知る内容がまとまっているように思いました。

 みなさんにお薦めの一冊です。


 読書メモより

○ 1-1は0です。だから0は、何もないのだ、と考えるよりも、それを逆にして(略) 0は、すべての何かを生み出す源泉でもあると考えると、まわりの世界の見え方が違ってきて、元気になれるような気がしますが、みなさん、いかがでしょう。
諦めるとは、必要ないことが“明らか”になることなのです。
○ 最近の研究結果からいえば、人間には、ひとつの目的を設定すると、自分の意識としての自覚はなくても、周囲の状況の中から、その目的達成のために有利な条件を自動検索するような機能が脳に備わっていることがわかっています。
○ 時間の経過を、つねに一定速度をもつ光が進む距離で測ることが可能になります。(略) 長さの次元で1秒間という時間を測る(略)
○ 人生についても同じで、生きるとは時間を創出する営みにほかならないのですから(略)
○ 「世界の中で最も理解できないことは、世界が理解できることである」(アインシュタイン・言)
○ その言葉を使って、真実を訴える言葉を紡ぐことができるのが詩人のすごさだともいえます。
○ 私たちの人生にも、これと同じように、あたかも因果関係がないように思われる事柄が突如、起こることがあります。
○ ちょっとしたゆずりあいの中に、解決へのヒントがあるのです。数学が教えてくれる生き方の指南です。
○ 人間世界をふくめてこの宇宙は、対峙する真逆の性質の拮抗バランスの上に存在しています。
○ 人型ロボットの誕生も間近な昨今、本来の人間であり続けるために、あらゆる五感を身体感覚として感じ取れる体験を通して、経験にまで昇華させ感性をみがきたいものです。
○ 「60歳は人生の花、70歳で迎えがきたら、留守だといえ、80歳で迎えがきたら、早すぎるといえ、90歳で迎えがきたら、そう急ぐなといえ、100歳で迎えがきたら、ぼつぼつ考えようといえ」(仙厓禅師・言)
○ 私たちの人生も同じです。社会秩序という制約と自分の自由意志とのバランスの中に未来を創出していける自由があります。
○ 物理学にでてくる時間は、ものごとが起こる順序の後先をきめる単なる物差し、つまり座標でしかありません。

  目次

はじめに
第1章 急がなくてもいいのですよ
第2章 心の風景と向き合う
第3章 すべての学びは
第4章 遠い世界から
第5章 老いて老いないということ
第6章 幸せについて考える
特別講義
あとがき

【関連】
  ◇[SALUS]:いつもの毎⽇が、ちょっと特別に。(東急株式会社)



 図書と一緒に届いた冊子『清水克衛の成幸読書』の解説にある「読み合わせにおススメの本」は次の本でした。

  ◇『観音経 奇蹟の経典』(ひろさちや・著/佼成出版社・刊)
  ◇『生きた佛教』(飯島貫実・著/山喜房佛書林・刊)
 一冊目は1982年にひろさちや氏が書いた本の復刊本です。「苦しいときにも、決して絶望しないで、ひたすらに観音さまを念ずることができる。そのこと自体が奇蹟である」とし、「南無観世音菩薩」と唱えれば救われるという「観音経」を分かりやすく解説した入門書です。“現世利益”を説いた教典ですが、今月話題になった鈴木大拙の「他力」や「横超」、佐治先生の無限の宇宙への視点も深めることができます。
 二冊目は、当店でも計500冊以上販売実績のある大人気の名著です。仏教の真髄の三法印「諸行無常」「諸法無我」「涅槃寂静」の丁寧な解説と、実践の章で構成されています。仏教の入門書としてはもちろん、時代が変わっても、どんな学問、宗教にも当てはまる無敵の本です。ご希望でしたら、できるだけお早めにご予約ください。

【読書のすすめ「成幸読書」】
 ☆最近紹介した本
  ◇『旅の作法』(高萩徳宗・著)(2023/07/09日)
  ◇『高校生と考える21世紀の突破口』( 安藤宏 他・著)(2023/06/14)
  ◇『不思議の国 ニッポン』(ヤマザキマリ・豊田有恒・著)(2023/03/29)
  ◇『小さき者たちの』(松村圭一郎・著)(2023/03/05)
 *これまでに紹介した本は、カテゴリー「読書のすすめ」から

  ◇成幸読書選定本
  ◇成幸読書頒布会お申込ページ
  ◇読書のすすめ
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