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『香港警察東京分室』(月村了衛・著)

 昨年、TBS『VIVANT(ヴィヴァン)』が放送されて、そこに登場したのは“自衛隊の影の諜報部隊「別班」”でした。
 実存するのか分かりませんが、ありそうな組織でした。
 それと似た、ありそうななさそうな「警察庁組織犯罪対策部国際犯罪対策課特殊共助係」と「香港警務処乙部門(刑事及び保安処)刑事部海外調査専業隊」が、協力(共助)して犯罪に立ち向かっていく警察小説『香港警察東京分室』(小学館・刊)です。

 出版社の紹介には、

 香港国家安全維持法成立以来、日本に流入する犯罪者は増加傾向にある。国際犯罪に対応すべく日本と中国の警察が協力する――インターポールの仲介で締結された「継続的捜査協力に関する覚書」のもと警視庁に設立されたのが「特殊共助係」だ。だが警察内部では各署の厄介者を集め香港側の接待役をさせるものとされ、「香港警察東京分室」と揶揄されていた。メンバーは日本側の水越真希枝警視ら5名、香港側のグレアム・ウォン警司ら5名である。
 初の共助事案は香港でデモを扇動、多数の死者を出した上、助手を殺害し日本に逃亡したキャサリン・ユー元教授を逮捕すること。元教授の足跡を追い密輸業者のアジトに潜入すると、そこへ香港系の犯罪グループ・黒指安が襲撃してくる。対立グループとの抗争に巻き込まれつつもユー元教授の捜索を進める分室メンバー。
 やがて新たな謎が湧き上がる。なぜ穏健派のユー教授はデモを起こしたのか、彼女の周囲で目撃された謎の男とは。疑問は分室設立に隠された真実を手繰り寄せる。そこにあったのは思いもよらぬ国家の謀略だった――。

とありました。

 登場する主な人物は共助係メンバーの10人ですが、5名ずつ対となっており、その肩書と名前、通称が、読みながら混乱、迷子になってしまいそうでした。最初に載る「主要登場人物」ページをコピーしたものを、いつでも確かめられるよう栞にして読み進めました。

 香港国家安全維持法、雨傘革命、デモ…ニュースなどで耳にしたことのある“香港で起こったこと”が出てきて、実際に起きているのではという緊迫感があります。
 日本で起こる犯罪に、半グレ集団のサーダーンと香港の黒社会 黒指安が、それぞれの思惑をもって関わり、争います。
 その争いは、東京分室のメンバーも巻き込まれて、激しい銃撃戦となります。

 ドアの隙間から突き出した左手のH&K P2000V3で応戦しながらIP無線機に叫んだ。
 「こちら指揮車輛、複数の銃撃を受け応戦戦中、至急応援を請う!」
(略)
 冷静に息を整え、観音堂とハイエースの隙間から狙撃する。
 男は胸から血を噴いて仰向けに倒れた。
 次の瞬間、左腕に灼熱の鉄棒を押し当てられたような激痛が走った。(略)

 幾度も起こる銃撃戦は、ここまで起きないだろう、荒唐無稽とも感じるが、“平和ボケ”している日本で起こっても不思議ではないだろう。

 共助事案の解決は…。その後は…。
 香港警察と日本警察の駆け引き、そして中南海は…。
 緊迫した現場、そこに登場する人物、引き込まれて読み終えました。お薦めの一冊です。

   目次

第一章 井水不犯河水(井の水は河の水を侵さず)
第二章 香港□民主、但有自由(香港に民主はないが自由はある)
第三章 命運自主(自ら運命を切り拓く)

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