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『亀甲獣骨 蒼天有眼 雲ぞ見ゆ』(山本一力・著)

 小説の並ぶ書架で、著者が山本一力氏だと気づき手にした『亀甲獣骨 蒼天有眼 雲ぞ見ゆ』(潮出版社・刊)を読みました。本書は、月刊「潮」の2021年7月号から2023年1月号の連載に加筆修正して出版されたものです。

 山本氏の作品は、江戸を舞台とした味わい深い時代小説が多く、それを好んできましたが、本書は趣が異なりました。

 時代小説の名手が新境地を開く、唯一無二の「中国時代小説」!! 幻想知的冒険譚!

と帯にあり、これまでと違う作品となっているようです。

 扉を開くと、「本書関連地図」と「主な登場人物」が載っています。
 地図は、北京から天津、洛陽、杭州…と中国のもので、位置関係はわかりそうです。10人の人物は、丁仁、王福庵、葉為銘…、金石学、国子監祭主…誰のことか混乱しそうです。
 本書も、このページをコピーして、手元に置きながら読むことにしました。

 物語の舞台は、歴史ファンの間でも注目度の高い清代末期の光緒25 年(1899 年)。
 中国大陸に進出したイギリス、ドイツ、フランスをはじめとする西洋列強は、中国各地で分割支配を強めていた。
 そんな列強諸国に対抗すべく、「扶清滅洋(清を扶け西洋を滅ぼす)」のスローガンを掲げた「義和団」を名乗る集団が、山東省での暴動をきっかけに各地に広がり、社会は不安定な状況であった。
 そんななか、杭州・西湖のほとりにある孤山に暮らす数え年で二十一歳の丁仁は、金石学者である父・丁立誠の後を継ぎ、学究に勤しんでいた。
 ある日、生薬である「竜骨」に神秘的な図形や文字のようなものが刻まれていて、北京で騒動になっていることを耳にした丁仁は、丁家にかねてから出入りする北京在住の雑貨商人・元突聘に、その子細を尋ねようとする──。
 「竜骨」が伝えるものをめぐる冒険小説。

 “義和団の乱”が登場し、史実に合わせた物語かと思うと、そうではなく中国を舞台にした“時代小説”であり“冒険小説”でした。

 「幻想」なのは…。「知的」なところは…。どのような「冒険」を…。

 人名と関係に戸惑いましたが、読みやすい文体で書かれています。
 山本氏の描く“幻想知的冒険”を楽しめます。

 あなたも「竜骨」に刻まれた文様の秘密を追って、旅に出てみませんか。


【関連】
  ◇月刊「潮」(潮出版社)

【参考;山本一力氏の本】
  ◇『ひむろ飛脚』(山本一力・著)(2023/09/02 集団「Emication」)
  ◇『花たいこん』(山本一力・著)(2023/06/04 集団「Emication」)
  ◇『落語小説集 芝浜』(山本一力・著)(2016/10/29 集団「Emication」)

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