『次世代学校ICTシステム活用術』(玉置崇・著)
小中学校の2021年度が始まり1週間,子供達が元気に活動しています。
新型コロナウイルスの感染予防に努めながら,学びが充実し,いきいきと活動する教育課程・活動が,工夫されています。
新年度,小中学校では1人1台端末を利用し,これまでの学校ICTシステム,校内ネットワークから,さらに広がった活用が始まっているものと思います。
そのスターとなる2021年4月1日に合わせて(?)発行された『学校を元気にする次世代学校ICTシステム活用術』(EDUCOM・刊)を著者からいただきました。
著者の仕事日記で,
この本は、一人一台端末で子どもが入力した様々なデータと校務データを連携することで、学校力が大いに高まった例を始め、「学びの天気」によるふりかえりの効果例、「心の天気」によって子どもと教師のつながりを強めた例、新開発の「授業アドバイスツール」を使っての授業改善例など、近未来を見据えた確かなエピソードをたくさん掲載しました。また、学校全体で情報機器を活用するための体験的コツも紹介しました。
お手元に置いていただければ、必ずお役に立つと思います。
と,紹介していました。
“お手元に置いて”と,教員あるいは学校に向けているとは思いますが,ぜひ教育委員会の方に読んでいただきたい一冊です。
子供達の学び,学校生活の充実のために,“教育予算の活かし方”を考えるヒントが得られます。
また,保護者の方には「わが子の学び舎に,何を加えるか。」の具体的な姿が見えるかもしれません。学校に足らないことがあれば,行政に求めていくことができるかもしれません。
はじめに,GIGAスクール構想について述べており,その中で子供に向けた「みんなで幸せになろうと思いましょう」の項で,
「道具は使うよう」という言葉がありますが,同じ道具でも,使い方次第でその道具が2倍にも3倍にも役立ちます。しかし,使い方を間違うとせっかくの道具の良さが生かせません。
と,1人1台端末を“幸せになる道具”として使っていけるヒント(姿勢)を伝えています。
「○○はしない」「○○はダメ」ではなく,「○○をして幸せになる」ことが,これからの学校生活にあることを教えてくれています。
本書に紹介されている「ダッシュボード」の扱いの中で「学校ごとに“アラートを出す数値(閾値)”を決めて」ということが述べられています。
これは,新型コロナ禍で習慣化した「検温」の扱いと同じです。どの学校でも,検温を“記録”しています。その扱いは,どのようにしているでしょう。
システムがなくとも,デジタルで記録し,「変化の兆し」や「極端な変化」が見られたとき,それに“警報”が出るようにしていますか。
ひょっとして,記録が形式化,形骸化していませんか。
それに気づかせてくれるシステムの紹介が,いろいろ登場します。
本書に,著者がコーディネーターとなった対談場面があります。よく分かる内容ですが,著者を知る者としては“もっと違う雰囲気”で進んだのではないかと,多くの人に伝わるようにと抑えた記述(まとめ)であるように感じました。これは,欲張りな思いでしょうし,対談を読む力の無さでしょう。
システムで提案する「心の天気」「学びの天気」は,システムで活用できるのが一番ですが,導入の難しい学校も多いと思います。
システムでなくとも,この考え方,子供のとらえ,子供の行動を,“表現”し“記録”することはできます。それを活かしていった成果を行政に伝え,より子供の成長に役立つ次世代学校ICTシステムへの更新を求めていくことが肝心だと思います。
また,最後に述べられている“8つのポイント”は,ICTシステムの活用に留まらず,新型コロナ禍の学校運営にも大切な視点です,
ポイント1 まずは受け入れる
ポイント2 発想の原点を考える
ポイント3 これまでのことを一度忘れてみる
ポイント4 何人かにモニタリングする
ポイント5 価値付けることの重要性
ポイント6 エビデンスよりエピソード
ポイント7 面白がることが大切
ポイント8 やってみなけりゃわからない精神を
教育に携わるみなさんにお薦めの一冊です。
すでにシステムが導入されている学校の管理職は必読,導入されていなければ現在の環境を最大に活かすためごお読みください。保護者の方は,これからの学校を考えるためにご一読を,
子供達のいきいきとした学校生活のために。
もくじ
1.GIGAスクール構想とその先にある次世代学校ICTシステム
2.情報の一元化と学びの一元化
~大阪市の「スマートスクール次世代学校支援事業」
3.1人1台端末の活用
4.次世代学校ICTシステムの活用で授業が変わる、学校が変わる
5.次世代学校ICTシステムを活用推進させるためのポイント
【関連】
◇玉置研究室
◇授業と学び研究所
◇株式会社EDUCOM
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