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『月夜行路』(秋吉理香子・著)

 表紙に、コートを着てマフラーをし、スマホを手にした暗い表情の女性が描かれています。脇にあるキャリーバックにレモンと本が乗っています。
 前に足が見えます。カバーを広げると、サングラスをした女性がいます。
 この二人が大阪を旅する『月夜行路』(講談社・刊)です。

 表紙の女性は、専業主婦の涼子と、銀座のバー Marquee Moon のママ ルナでした。

 わたしは誕生日すら祝ってもらえない――。
 冷えきった夫との関係や子どもとの生活に孤独感を募らせていた沢辻涼子は、我慢の糸が切れたある日、家出を決行する。
 飛び出した夜の街で出会ったのは、洞察力と推理力に優れた美しいBARのママ、野宮ルナ。
 ルナに自分が抱える報われなさの正体が「大学時代の元彼」であることを言い当てられた涼子は、彼女と二人で元彼を探すため大阪へ旅に出ることに……。
 元彼探しが難航する中、次々と事件に巻き込まれる二人は、無事に想い人と再会できるのか――。

 45歳の誕生日に家族を捨て、家を出た涼子が、バーのママと大阪旅に出かけることになります。
 涼子の人探しに出かけた大阪旅は、“文学オタク”のママが望む文学スポット巡り旅にもなっています。

 二人は、人探しと文学スポット巡りの途中で、思わぬ事件に巻き込まれます。その事件を解決するのが、ルナの文学知識からの“名推理”です。文学作品の内容、背景をヒントに、“ロジックが飛躍”して事件の核心に迫ります。
 文学に疎い涼子には、その推理が不思議で、思いつかないことばかりです。

 ルナの推理で“一件落着”しますが、涼子場つぶやく一言で、ルナが…。


 ルナの推理が痛快です。
 ルナの豪快な金遣いが痛快です。
 探していた人に出会い…。涙。
 ルナの優しさに…。涙。
 涼子は…。ルナは…。そして…。

 本に挟まれる「FreePaper」に、〈書き下ろし〉の「特別掌編」と「大阪文学旅MAP」(14か所)が載っています。
 本書を読む前か、読みながらか、読み終えてからか、お気に召すままにどうぞ。

 涼子とルナと一緒に、事件の謎を解きませんか。お薦めです。

   目次

 序章 「暗夜行路」
第一話 「曽根崎心中」
第二話 「春琴抄」
第三話 「黒蜥蜴」
最終話 「月夜行路」

【付録】 大阪文学旅MAP

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