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映画『ベイビーティース』気持ちのままに限りある日々を疾走する

難病を抱えた高校生女子と不良青年が恋に落ちるストーリー。って「ありきたり」です。いつもはスルーして観に行きません。難病ものも苦手です。主演が「ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語」の三女ベス役のエリザ・スカンレンだという興味で観に行きました。それが、全く「ありきたり」ではないのです。鮮やかな色彩とストーリーにピタリと馴染んだ音楽。主人公は確かに高校生女子ですが彼女を取り巻く大人たちの愛情と混乱を描いた新鮮なストーリーでした。

不良青年モーゼスを演じたトビー・ウォレスは第76回ヴェネチア国際映画祭最優秀新人賞受賞。シャノン・マーフィー監督、リタ・カルネジェイス脚本。2019年製作。オーストラリア映画。

オーストラリア、シドニー。16歳の高校生ミラ(エリザ・スカンレン)は薬中毒でタトゥーだらけの若い男モーゼス(トビー・ウォレス)と出会います。ミラはがんの再発で闘病中ですが、モーゼスがミラを特別扱いせずに接することから、ミラはモーゼスにどんどん惹かれ夢中になっていきます。
ミラの両親はモーゼスを拒否しながらも、ミラに残された時間を考え二人の交際を許して...

ミラが夢中になる不良青年モーゼス。彼は日本映画のやんちゃな高校生とはかけ離れています。「髪の色はカラフルだけど清潔感あふれるイケメン」とは全く違いました。

モーゼスは高校生ではない若い男です。薬物中毒のため母親との関係は断絶して家を追い出されています。定職にはついていません。シャワーを浴びているのかもわからないし清潔感は全くない。タトゥーだらけ。まあ、汚れた感じの若者です。ただ、笑顔が魅力的でぽろっと素敵な事を言ったりします。

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ありきたりな作品ではないと感じたのはモーゼスのキャラクターによるところも大きいです。ミラはモーゼスに夢中になりますが、彼の方は一途にミラを守ったり愛したりはしません。ミラとは相思相愛の恋愛ではなかったのだと思います。彼が感じていたのは家族的な愛情だったのでは。

ミラを取り巻く大人たち、ミラの両親の不安定な関係も描かれています。精神科医の父親と元ピアニストの母親の間には不穏な空気が流れています。母親は精神が安定しておらず、娘ミラの難病を受け止めていくには心の容量が一杯になっています。

両親ともにミラを心から愛しているのですが、「娘を失うかもしれない」という苦しみに耐えきれず、母親は薬を多く飲んでは不自然に明るく振る舞って食卓についていました。それでも、ミラと両親は愛情で結ばれています。

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ミラを演じたエリザ・スカンレン。難病をかかえた少女が恋をし、心のままに疾走する様子を自然に表現しています。治療のため髪を失った彼女のグリーンのウイッグ姿がとても美しかったです。


登場人物すべてが愛しい海辺のシーン。

そこで、ミラと父親の深いつながりを感じました。

エンドロールが心に残る作品です。

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