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映画『ハイウェイの彼方に』刑期20年の間にネット社会になっていたら

またイーサン・ホークの作品にあたってしまいました。イーサン・ホークの20代から40代までこれでもかと観ているうちに、もはやファミリー、親戚のよう。

この作品のイーサン・ホークは実年齢40代後半です。20年の刑期を終えての役どころで、しぶい、というよりヨレヨレです。(ほめてます)

ローガン・マーシャル=グリーン脚本・監督。2019年製作。アメリカ映画。

主人公ラス(イーサン・ホーク)はマリファナ所持の罪での20年の刑期を終え出所します。所持していたマリファナは28グラム。カルフォルニア州の三振即アウト法により実刑判決を受けました。

カリフォルニアの三振即アウト法とは

過去2度以上特定の罪で有罪判決を受けた者が、再度重罪で有罪を言い渡された場合、3度目の罪が非暴力的なもの(ピザを盗む等)であっても必ず、終身刑を含む25年以上の処罰を受けるとされています。これは全米の刑法でも最も厳しいものだという批判もあります。(Democracy Now!より)

2012年11月6日のカリフォルニア州住民投票により条件は緩和されているそうです。

ラスの場合は条件が厳しい時の判決でした。20代から20年ものあいだ刑務所で過ごし、世の中はすっかり変わっていました。

仮釈放期間の経過報告書の提出を電子メールで求められ、まずネットカフェを訪れます。

ネットカフェの店員に携帯もメールアドレスも無いことを伝えると、

「それって逆にスゲエな。どこにいた?刑務所とか?」

って言われてしまうのですが、ラスは20年刑務所にいたことを素直に伝えます。

三振即アウト法のことも伝えると、店員も「それは大変やったなあ」て空気になって、なんとメールアドレスも作ってもらえるのです。

ラスは収監中に両親も亡くなり、社会に放り出されても頼る人はいません。

ただ、彼の人柄が素直なので、手を差し伸べる人はいる。この事は、これからの人生の強みです。ネットカフェのシーンは印象的でした。

ラスはファストフード店の仕事も真面目で、職場の鍵を預けられるほど信頼もされます。

このまま、社会に順応していけそうだと思ったら、

ゴミ箱に捨てられた赤ちゃんを発見してしまいます。

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赤ちゃんが入っていたカバンにはメモがあり、赤ちゃんの名前がエラということがわかります。

両親からの愛情を受けて育ったラスは、捨てられた赤ちゃんをほっとく事ができません。すぐに警察に渡すことなく、連れて帰ってしまいます。

きっと、仮釈放期間中に誘拐の罪とかイヤな展開になるに違いないと不安な気持ちで観ていました。

それが、ラスの悪戦苦闘の育児も、スーパーの店員など親切な人達にささえられ、ほほえましく進むのでした。

コーヒーに入れる濃いミルクみたいな物を赤ちゃんに飲ますのは怖かったけど。

赤ちゃんのエラは病院に行ったことで、ロス市警と児童家庭サービスに保護されます。赤ちゃんの発見から日にちが経過していたので、ラスは仕事を失なってしまうのです。

何もかもなくなったラスはバスで故郷に帰ります。

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バスで出会った女性との交流や、故郷の両親の墓参り。父親が息子を案じて残してくれた大切な財産。

それらが、ラスに生きる希望を与えていきます。

父親の貸金庫の中からでてきたもの。

ラスの父親が、どんなに収監された息子を愛して心配していたかと思うと苦しいです。

赤ちゃんのエラは施設で保護されたままです。

ラスが希望しても里親になることは条件的に難しい。

たった数日過ごしただけの赤ちゃんに、ラスは父から受け継いだ大きなプレゼントを用意します。

捨てられた赤ちゃんが18歳になったときに使える資産。

お金はエラの将来に何よりも大きく役立つものです。

自分の人生もままならない状況のなかでの、この行為には心を打たれます。

上映時間も78分のとても地味な作品ですが、観て良かったです。

イーサン・ホークが製作にもかかわっています。


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