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スナックとわたし

 先日、上司が「もしも自分で店を持つとしたら何がいい?」とかいう質問をしてきた。同僚が「クレープ屋さん」と答えたので何故かその時は釣られたように私は鯛焼き屋!とか言ったけど
(いや…私は大切な何かを忘れている…)
         あー!!私はスナックを開きたい!
なんだか水を得た魚のような心地になった。
上司は「意外だね。短歌とか関係じゃないんだ」そののち上司が
場末のスナックとしつこく言うので、
そんな事を言ってるとキープ南部鉄器の白湯を作ってあげませんからね!(上司はお酒を呑まないのでボトルキープならぬ南部鉄器キープで白湯を
出すという設定にしといた)などと言いつつ、
マジで赤羽でスナック開きたいなぁと思った。

 これは土地柄なのか、単に私の交友関係とか行動からなのか、お酒を飲む年齢になってからわりと地元の沼田のスナックへ行って飲むことがあった。20歳の頃の私は、ばかみたいに青いアイシャドウに黒いアイライナーを太
く引いていてマスカラでまつ毛バサバサさせていたのでスナックに行くと
「アンタ、どこの店の娘?」とママかチーママあたりに聞かれた。
何軒かはしご酒の先はスナックという感じを何度か経験してみると別に
女の子だから、とか20代だけど。というのは無かった。
んで、午前様ちかくのスナックで呑む頃には酔っているから
「アンタ、うちで働く?」という声にも
「はたらくー!」なんて冗談で返せるようにもなっていたのであった。
慣れってスバラシイ。
 スナックも営業形態?!というのか、女性でも入りやすい店もある。そもそもスナック=男性というものでは無いかもしれないけど。
でも、そんなイメージは今もあるだろうなぁ。
 
 20代の頃は友だちに話すと何となく、想像と同じような答えが返ってくるから(そこで無駄に傷つきたくない)あまり話したくないけど。でも誰かに話したい!みたいな話をスナックのママとか常連と思われるオジサンに話をするのが好きだった。(主にしょーもない色恋沙汰)
飲み仲間のわちゃわちゃから、しれっと抜け出したタイミングでカウンター席に座る縁があって、そんなふうに楽しむ術を覚えたのだった。
だってねぇ、ママはもちろん、常連のオジサンも小娘のしょーもない話を優しく聞いてくれるんだもの。なんだろ、まったく繋がりのない関係性だからこそ打ち明けられる、打ち明けたいというのか。
単にわたしの話を聞いてほしい! という若さの欲求がここで一致していたのかもしれない。
ちなみに足繁く通うスナックだとママさんは「その後どう?」ってさらっと聞いてくれて若い私は覚えていてくれたことに胸が熱くなったものだった。(というのは当の本人がもう、その話を忘れていたから)
 
 30代の頃からはスナックで歌うのが好きだ。これは現在形で今も。
カラオケで歌うのも悪くないけど。
この努力で身につけた歌謡曲を披露する絶好のチャンス!多少の音程のズレだってみんな酔っ払いだから誰も気にしない。
気にしてたら人前でなんぞ歌えない。
ほぼほぼ一期一会の他のお客さんが手拍子してくれるし
「おねえちゃん、若いのに、ちあきなおみ!よく知ってるね~」
とか言って乾き物じゃない裏メニュー的なおつまみを
「あちらの客さんからよ」ってママが運んできてくれてくれるし。
(確か…豚の角煮とかまぐろブツももらったなぁ。
しかしどこから出てきたんだ?!)
 この一夜限りのリサイタルを味わうとなんだかジャイアンの気持ちも分かってくる。わたしも頭に羽とか挿して歌いたい。
いやはや。なんだか熱く語り過ぎた。まぁ、スナックのエピソードは
またの機会にしよう。
いいなぁ〈スナックちえ〉私は着物でお店を切り盛りしたいなぁ。
乾き物じゃなくてママ手作りの煮込みとか切り干し大根とか出したいよね。店内はビロードのソファでしょ。もうカラオケは必須。
そうだよ。歌人の集うスナックにすれば短歌とか関係になるじゃん。
ぐふふ。  

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