詩|ROUTE 38
世界は雪に閉ざされていて
ふたりの季節はいつも冬だった
わたしの記憶の中で
降っていたのは雪だったけれど
あなたの世界の中では
それが星であったらいいなと思う
あの頃は
かなしみをかなしみとしか思えず
心なんかいらないと思っていた
でもずいぶん大人になって
かなしみの裏側にあるものが見えて
心の脆さも醜さも愛おしくなった
やっとあなたの指先が
わたしの頬に届いた頃には
真っ黒にぬられた夜の隙間から
ひどく悲しいものが落ちてくる
もうその指先だけを信じていて
真夜中の国道38号線に降り積もる雪
ROUTE 38 / 月乃