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クロワッサン・ダイエット

クロワッサンを好きなだけ食べれるダイエットがあったらイイなあ。そんなダイエット、提唱している人がいる。もちろん、仮説であるが、実際提唱者本人はクロワッサンを食べて腹部肥満(スペアタイヤ)を解消した。彼は分子生物学のバックグランドを持ちガン研究にも従事していた元サイエンティストで、シェフであり、現在はファーマーである。

若い頃有名なウェストン・プライス博士の著書を読み、栄養価の低い白い小麦やシュガー、ベジタブル・オイルが現代病の元凶であることを知った。若い頃は、太っても、しばらく白い小麦やシュガー、ベジタブル・オイルを避けて低糖質やケトジェニック・ダイエットをすれば30ポンド(約13.6キログラム)ぐらいはすぐに痩せることができた。しかし、44歳になった2019年、今までと同じようにお腹周りの「スペアタイヤ」を解消しようと試みたが全く体重は減らなかったそうだ。

彼は元サイエンティストであることもあり、当時、活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)についてリサーチしていた。フランス料理の学校にも通ったことのあるシェフであり食の歴史にも造詣深い彼は、これとフランス人の食習慣との関連性に気づいた。そして、「摂取カロリーと消費カロリーのバランスを主に調節するのは飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率である」という事に注目する。

炭水化物・糖質が肥満の元凶というよく広まっている考えに反して、1970年代のフランス人は、1日1,200キロカロリー近くの小麦粉、シュガー類を食べていたのに肥満はなかった、という事を考えると、炭水化物・糖質=肥満の説も信じがたくなってきた、という。

リサーチを進めるうちに、ステアリン酸(飽和脂肪酸の一種で主に動物性食品に含まれる)とオレイン酸(オリーブオイルに多く含まれる1価不飽和脂肪酸)の比率が、ステアリン酸の摂取が多い方が肥満から免れる傾向にあることが、マウスや人間を対象とした研究から示唆されていることが分かったそうだ。多価不飽和脂肪酸が酸化しやすく体に悪いのは分かっていたが、オリーブオイルは体に良いことで知られ、悪く言う人はいなかったが、これらの研究によると、オリーブオイルにたくさん含まれるオレイン酸が肥満になりやすくすることを示唆しているという。

ここからが彼の仮説です。脂肪がミトコンドリア内でエネルギー生成をする際、飽和脂肪酸(ステアリン酸など)は不飽和脂肪酸に比べると多くの活性酸素種を生成する。活性酸素種はインスリンに関係するいくつかの酵素の働きをブロックするため、食後などにインスリンが脂肪細胞に働きかけて、「エネルギーが過剰になってるので脂肪を貯めなさい」と命令する働きを一時的に抑える。つまり、摂取した脂肪の内容が、飽和脂肪酸の割合が不飽和脂肪酸より多い方が、「脂肪を貯めなさい」の命令がブロックされる割合が高いので、太りにくい、ということになる。

では何故クロワッサンなのか?提唱者は、白い小麦粉とバター(ステアリン酸)を大量に使うクロワッサンを使うことで、肥満の原因は白い小麦粉ではない、ということを証明してみたかったそうだ。もちろん、クロワッサンが大好物であるということも大きい。彼はシェフなので、普通のバターではなく、ステアリン酸の割合が特別に多いバターオイルを作ってそのバターオイルでクロワッサンを自作しダイエットに挑んだ。(もうこの時点で私には無理だ。クロワッサンを自分で作り続けること自体ハードルが高すぎる。)

結果はすぐに出た。彼のスペアタイヤはスルスルと小さくなり、6週間でジーンズのサイズが40から32になったそうだ。肉をたっぷり挟んだ手作りのクロワッサンを朝食べると、長時間全くお腹がすかなくなったそうだ。以前はしょっちゅうお腹が空いていたが、食事を忘れるほどお腹がすかなくなったそうで、自分でも食事を忘れるなんてあり得なかった事なので、驚いたそうだ。お腹がすかないのは、食後にまず炭水化物のブドウ糖がエネルギーとして使われた後に、ステアリン酸を多くとったためにステアリン酸が脂肪として溜め込まれないままエネルギーと使われるために空腹感が出てこない、という論理だ。

詳しくは、fireinabottle.net というブログに書かれている。

クロワッサンはカロリーが高いから滅多に食べない私も、彼の記事を読んで調子に乗って何度か買って食べたが、近頃は安いベジタブル・オイルを使って作られているクロワッサンが多いので注意したい。ちゃんと原材料見て買ってください。バターを使ってない商品が多くあるので。

私の感想は、面白い説であり、今後更なる検証を望みたい、というところだ。日本人と欧米人でも遺伝子の違いもあるので日本人にたくさんの飽和脂肪酸を摂る食事が合っているかは分からないし、飽和脂肪酸をたくさん摂ってはダメな体質の人もいる(例えばAPOE4遺伝子)から、気をつけるに越したことはないだろう。

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