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ふつうの星

わたしが持ってたふつうのきもちを
あのとき、失くしてしまったから、
わたしはいつまでも前に進めない
いつまでもわたしの過去はわたしのものだと、
わかっていたはずなのに、
わかっているはずなのに、
どうしても受け入れられないの

学校に行けなかったこと、
学校を辞めたこと、
ともだちのしあわせそうにみえる顔を
ぐちゃぐちゃにしたいきもちになったこと、
きみの弾くピアノの傍で泣いたこと、
ぜんぶ、わたしのものなのに。


わたしの絵をほんとうはすきじゃない
わたしの歌をほんとうはすきじゃない
わたしの顔をほんとうはすきじゃない
わたしのことばをほんとうはすきじゃない

わたしのすべてをほんとうはすきじゃない。

かなしくてたまらない、
わたしがわたしの気にいる過去を
持っていないこと、
羨ましいことばかり目につく

ふつうのきもちを取り戻したとして、
たぶんわたしはふつうのきもちを使って
生きてはいけない

馬鹿、宝の持ち腐れ、真珠。
空白をほんとうは持っていない。
空虚をほんとうは隠している。

星をみつけた、薄黄色く光る一等星、
きみは死んだ。星になって空に埋まった。
わたしは、死んだとき
骨として地に沈むだけだ。

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