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ふと消える、あなたの影と、僕の

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何かに飲み込まれそうな不安を抱えながら生きるヨウスケを取り巻く女性たちの一人、アリサはヨウスケの家で談笑したあと唐突に姿を消してしまう。喪失感に襲われるヨウスケは、周りの色々な友… もっと読む
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ふと消える、あなたの影と、僕の #3

ふと消える、あなたの影と、僕の #3

「次はいつ会える?電話でもいいよ」
薄ピンクの小さいゴミ箱に入ったゴミをこれからゴミ捨て場に持っていくゴミ袋に流し込んでいると、ベッドの上から語尾の丸まった甘い声が聞こえてきた。
「再来週なら、会えるよ。平日の夜だと良いかもしれない」
「二週間もヨウスケに会えないのは嫌。いっぱい電話するから」
「出れなかったらごめん」
「つらいの。最近仕事も結構休んじゃってる。雨の日は家から出るのも嫌で、先週は2

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ふと消える、あなたの影と、僕の # 2

ふと消える、あなたの影と、僕の # 2

アリサが姿を現さなくなってから一週間くらい経った。
無性に誰かの肌に触れたくなった。人肌恋しい。という奴かもしれない。友人たちからドライブや飲み会の誘いが来たけれど、適当に無視をした。彼らからの絶えることのない連絡はいつもありがたかったが、連絡を見る度に自分の中の何かを差し出して引き換えているようで胸の表面に緊張を感じた。
気づくと僕はレナの家の辺りにいた。レナに連絡すると、彼女は家に居て、これか

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ふと消える、あなたの影と、僕の #1

ふと消える、あなたの影と、僕の #1

「こうやってずっと一緒に居られればいいのに」
畳に敷かれっぱなしになっている布団にごろりと寝転んだアリサのお尻から脇腹あたりの曲線が僕に背を向けたままそう言葉を発した。アリサは今週三日も僕の家に来ている。先週までは週に一日か二日、それも深夜まで続くチェーンの飲食店のアルバイトを終えた後に、ただ薄っぺらい布団身を投げて昼まで寝るためだけ、食べ物も必要であれば自分で買ってくるし、不必要に着替えを置くこ

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