食料自給率より心配すべきは大震災やエネルギー安全保障
食料自給率が低下するのは、自然な事です。農業従事者が高齢化し、後継者のいない離農者が増えていくからです。しかし、それが問題でしょうか?農業、特に穀物は典型的な比較劣位産業であって、国際分業的には存在価値が小さいはずです。
むしろ、農業関係の補助金を抑制するため、生産性の低い農家には「割増退職金」を払って退出してもらいましょう。「65歳以上の農業従事者で、離農して土地等を他の大規模農業者に売るか貸す者は、年金を2倍支給する」で如何でしょう。その上で、自由貿易協定を積極的に締結して穀物を輸入すれば良いでしょう。安いコメが食べられて、消費者は喜ぶはずです。
食料安全保障の観点は必要でしょうが、穀物が輸入できなくなるリスクは、どれくらいあるでしょうか。穀物の大量輸出国である米国や豪州は、日本の友好国であり、輸送ルートも比較的安全です。価格が上昇する事はあっても、買えなくなる事は考えにくいでしょう。そんなリスクに備えるくらいなら、他に備えるべきリスクが数多くあります。
30年以内に大地震が来る確率は7割とも言われています。食料輸入がストップする確率より高いでしょうから、防災対策を積極化すべきでしょう。原油の輸入が止まる確率は、農産物よりも遥かに高いでしょうから(輸出国が米や豪ほど親日的でない、輸送ルートが太平洋ほど安全ではない)、エネルギー安全保障面の対策を優先すべきでしょう。
「食料自給率を高めるために、農業への補助金を増額する」などと政府が言い出さないように、祈るばかりです。理屈はともかく、政治的には、農業関係は強いですから・・・。