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時が刻んでいるもの

中学生の終わり頃から高校生ぐらいにかけて、スガシカオの音楽にのめり込んでいた時期がある。

スガシカオといえば、世間一般では学校の教科書に載るほどベストセラーとなったSMAPの「夜空ノムコウ」を作詞した方で有名であることに間違いはない。

ただ私にとって最初に知るきっかけとなったのは、ある住宅のCMで流れていた「June」という曲からだった。

それを初めて耳にした時は、まるで心地よさが伝わってくる秋風みたいに、数十秒の中でも非常に耳に残るサウンドだったことを憶えている。しかしその時は、それがどんな題名だったのかわからないままでいた。

そこから実家近くにあったTSUTAYAで、当時その曲とはまた別で気になり出していた「19才」のシングルCDをレンタルしてはPCに落とし込み、親から初めて買ってもらった携帯電話を通じて聴いていた。

「19才」またも歌詞から歌い方に演奏まで非常に強烈な印象を覚えていたが、どちらかと言えばミディアム調で少々ダーティだったカップリング曲の「ホームにて」ばかり聴いていた記憶がある。

やがて高校生になると、父親が買ってきた10周年を祝した記念なるベストアルバムを借りて聴いていた。

その歌詞カードには、曲の歌詞ごとに右下あたりの箇所に楽器の演奏者なるクレジットが記載されている。

だがそこにはヴォーカルやアコギにエレキギターだけでなく、ベースやまれにプログラミングの箇所に、スガ氏の名前がほとんどの曲に入っていたことに驚いていた。

そしてその中から「光の川」「クライマックス」「秘密」の3曲が自分の中でどハマりして、その衝動が抑えきれないままいずれも揃って収録されていた「TIME」というアルバムを、レンタルする行動を通り越して購入する運びとなったのである。

それには、私がスガシカオという人物を知るきっかけとなった「June」が収録されていたことを知ると、自分の中でいっそう歓喜に溢れていた。

現在に至るまで、私の人生の中で一番聞き込んだアルバムはこの「TIME」だと思っている。

どハマりした上記シングルの3曲と初めて聴いた「June」が収録されているからということももちろん理由の一つとして含まれている。

それよりアルバム全体の雰囲気が、割りかし暗めだった当時の自分と何か波長が合っているような気がしていて、かなりの頻度で再生していたと思う。

スガ氏はこのアルバムについて「やりすぎた」とか「偏り過ぎた」などと自負しているが、私にとって「TIME」は最高傑作だと勝手にそう考えている。

これまでスガ氏が発表してきた曲の中で、私の一番のお気に入りは「光の川」である。聴けば聴くほど人生であったり価値観であったりと、様々な視点で考えさせられてしまう。

特に「途切れた願いは消えてしまうのではなくて」から始まるサビは、今でも擦り切れてしまうくらい、栄光や挫折と色々な時を経て心に奥深く刻まれている。

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