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ジェットコースターにファラオをのせて

小学生のとある夏休みに、2泊3日で私の伯母にあたるいとこの家に行っていた時の話である。

そのいとこたちは3人兄妹で、いずれも歳は私よりも上である。家は私の住んでいた実家と同じ市内にあったが、およそ10キロメートルと地味に離れた場所に位置している。

たまにしか会うことができないという距離ではなかったが、夏休みなどの長期休暇や法事といった特別な用事以外では遊ぶ機会がなかった。

とはいえ、別段お互いに仲が悪いわけではない。まだ学生でも、携帯を持つのが当たり前でなかった時代だからというのも一理はある。
それでも特に「TUBE」というバンドが好きな二番目のいとこと会うたびに、ゲームを中心によく遊んでいたりしたものである。

その連泊の一日目の夜には、当時熱中した「サルゲッチュ」というサルを捕まえるアクションゲームを二番目と一緒にプレイしていた。
その最中で、あるステージのボス戦とやらを二人で協力して倒すのだが、その後で現れて捕まえたサルのコメントに「ファラオ?」という言葉を目にした。

間もなく日付が変わろうとしている中で、既に皆が寝静まっているにも関わらず、お互いにその画面を見合わせた途端「ダハハハ!」と思いっきり爆笑してしまったのを今でも憶えている。

その熱(?)が収まりきれないまま翌日になると、地元では当時賑わっていた遊園地へと一同で遊びに向かった。
その道中でも園内に入っても、私と二番目はひたすら「ファラオ、ファラオ」と何の意味もなく連呼していたのである。
おそらく周りからは伯父伯母を含めて「いったいこの子たちは何を言っているんだ?」と疑問視されてもおかしくないくらい、かなり奇妙だと思われていたことだろう。

挙げ句の果てには、ジェットコースターに乗って頂上から急に降り始めた時も、その熱は冷めないままだった。
普通であれば「うわー!!」と絶叫するところを案の定「ファラオー!!」と共に叫びながら楽しんでいたのも、今となっては思い返せば少々気恥ずかしいが良い思い出である。 


という出来事を振り返るまで今日もほぼ一日家で過ごしていたのに、なかなか書けるようなネタでや単語が頭から一つも降りてこないまま悶々としていた。

まるでジェットコースターみたいに低速のままと上がってきていると考えていた瞬間、のぼり詰めた頂上なるものから一気に加速して急降下するように、幾つもの言葉が溢れ出してきた次第である。

ようやく外では秋らしい涼しげな風が吹いてきたというのに、的外れな夏の思い出がこのタイミングで浮かんでくるのは、我ながら如何なものかと不意に思ってしまった。


ちなみに私は中学生あたりからなぜか、それまで平気で乗っていたジェットコースターを含む、いわゆる絶叫系のアトラクションが苦手となってしまっている。
成人して以降も今に至るまで、千葉の舞浜にある某有名テーマパークや山梨の富士吉田にある某遊園地などには一度も足を運んでいない。

仮に友人たちから久しぶりに一緒に乗りたいと誘われたとして、新たな気持ちで持って乗れる自信は…正直あまりないかもしれない。

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