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ループ・ザ・ループ

「会社の目的は、永遠に存続することです!」

私が以前に勤めていた職場では、毎朝必ず朝礼をおこなっていた。それも部署問わずアルバイトやパートを含む社員全員が、あらかじめ決められた時間に事務所に集まっては、「コ」の字になるように取り囲むように整列している。

そしてその陣形の前に立つ人は、必ず声高に音頭を取らなければならない掟があった。そこの位置はおよそ1ヶ月半を目安に、必ず自分の番が回ってくる方式を採った当番制で決められている。

ちなみに週明けの日とそれ以外の平日では、それぞれ行う朝礼の内容はおろか担当する人の順番が異なっている。あわよくば、月曜日と火曜日を同じ人が連続して朝礼の当番を受けることも決して少なくはなかった。

そのため新人で入ってきた人たちは私も含めて、その場の何とも言えない雰囲気に慣れるまでがとてつもなく大変であった。
特に連絡や報告事項などを確認した後、そこから読み上げていく経営のなんとやらに関する唱和では、第一にしっかりと声を張らなければいけない。

加えて1〜5行まで分けられたその文面を、暗記した状態で噛まずにスラスラと言わなければならなかったため、多重の意味で常に緊張感が走っていた。

ほぼ毎日繰り返し唱和していたこともあって、いざ思い出せばスラスラと口に出せるかもしれない…なんて思ってみたが、退職してからかれこれ数年経過していることもあり、すでに私の記憶からは大体の部分が欠落してしまっている状態だ。

そんな中ではっきりと思い出せるものがあるとしても、上述の通り「会社の目的は、永遠に存続すること」という理念の冒頭を、散々唱和していたぐらいしか浮かんでこないのである。


けれど今ではその概念こそが、これまでの社会人経験で得た大きな収穫であることは間違いないと思っている。

「会社を存続させること」それは、国内問わず海外でも会社を経営する人のみならず、それを支える人たちすべてに共通して当てはまることだろう。果たしてその信念を常に貫いている人間は今、この地球上でどれくらいいるのだろうか。

昨今を飛び交っている不祥事が絡んだニュースをインターネット中心で閲覧している限り、余りにも富と名声という「利益」を追求しすぎたが為に、下手すれば海の藻屑と化してしまうのではないかといった具合に、どこもかしこも火の車状態としか見えてこない。
少なくとも私の目には、彼らが「会社を存続させること」を誤った解釈でもって、行き過ぎた変化を追い求めた末路であるとしか映ってこない。

一方で、ぬるくなってしまわないようにお湯を注ぎ足すみたいな行為は、私たちがこの地で生活していく以上、必要な一つの手段としては間違ってはいない。
だがそれも続けてばかりいては、やがて予期せぬ形で相手に先を取られてしまうのも、可能性は決して低くはない。

現に日本は、至る所で過去の栄光なるものに縋り付いているせいなのか、隣国や新興国にあらゆる面で遅れを取ってしまっているのは、各国の情勢と比較してみればそれが如実に現れている。
正直その栄光がいつまで一つの形として保ってくれるのか。もしかしたら既に、何処にでも誰にも気づかれないようにハリボテとして代用されているかもわからない。

失われた10年と言われ始め、そこから何も兆しも見えず20年が経ち、そして30年へと言われるまでに突入してしまった日本は、一体いつまで負のループを回し続けるのだろうか。
そう考えるだけでも、先がどんどん思いやられてしまう。


3年前、混沌とした時代の始まりにふと耳にして、あらゆる視点からまたもや衝撃を受けたWONKの「Rollin'」が今もなお、どうにもならない悩みを抱えたままである私の頭の中で、ひたすら歩くようにしてループし続けている。
状況は違えど、私も私でなんとか回るようにして歩き続けなければならない。


最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!