やさしい法律講座ⅴ63「報道機関の不勉強さ」
以前のブログで「夫婦別姓」を盛んに喧伝するマスコミを非難した。日本は明治から苗字を「氏」に統一して家制度の「家族」として「氏」と定められている。そして、「姓」を使う国として中国と韓国があるが、これは「家族」ではなく「血族」としての「姓」である。だから結婚しても「血」は交じり合わないので夫婦別姓となる。生まれた子は男尊女卑で男系の姓を名乗ることになる。日本の「氏=家族」と中国・韓国の「姓=血族」の違いも分からずに、「夫婦別姓」と騒ぐ左派や報道機関の不勉強さには呆れている。又しても、同様な記事を見つけた。その記事を後述する。
それは「被告」と「被告人」の表記である。
新聞記事の犯罪報道で「~被告」という呼称で記載されている。しかし法律的には、この「~被告」という呼称は誤りなのです。法律の世界では、「被告」は民事訴訟で訴えられた人を意味します。これに対して、刑事裁判で検察官により訴追された人は「被告人」と呼ぶのが正解です。
なお、「被告人」はあくまでも罪を犯したことを疑われている段階なので、犯罪者であると確定したわけではない。ちなみに、「被告人」と呼ばれるようになるのは、検察官によって起訴(公訴提起)された時点以降です。今回は報道記事の記載内容を確認してみよう。日経・読売・毎日など大手新聞社でも「被告」と記載している。
さて、今回の問題とする事案は「カルロス・ゴーン氏(被告人)の日産に対する損害賠償(民事訴訟)についてである。裁判の管轄権は? 提訴の裁判はどこに出すべきか?
以下は、浅学菲才の吾輩の独り言である。
皇紀2683年6月22日
さいたま市桜区
法律研究者 田村 司
カルロス・ゴーン氏(被告人)が日産に対する損害賠償(民事訴訟)の提訴をすることについて
訴状を確認しないと明快な判断はできないが、報道記事によると次の背景から契約内容に記載された裁判管轄がどこにしたかである。多分ドバイであろうと推定される。
・2008年、日産と中東の企業アル・ダハナとの合弁会社契約をした。
・2019年 同合弁契約は終了。
・2019年7月4日にアル・ダハナは契約違反で損害を受けたとして賠償を求めて日産と同社の子会社の中東日産などを提訴。
カルロス・ゴーン氏(被告人)の日産に対する個人の損害賠償(民事訴訟)までその契約にレバノンの裁判所の管轄が記載されているならよいが、もし別案件なら日本の本社に訴えを起こすことになろうと考える。特別な契約がないなら、準拠法として、民事訴訟法の手続法に従うことになる。その法的根拠は次の通りである。
民事訴訟法 第二節(管轄権に関する合意)
第三条の七 当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる。
2 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
4 外国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意は、その裁判所が法律上又は事実上裁判権を行うことができないときは、これを援用することができない。
(応訴による管轄権)
第三条の八 被告が日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、裁判所は、管轄権を有する。(特別の事情による訴えの却下)
第三条の九 裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができる。
管轄(普通裁判籍による管轄)
第四条 訴えは、被告(この場合は日産)の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2 人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
3 大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは、その者の普通裁判籍は、最高裁判所規則で定める地にあるものとする。
4 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
5 外国の社団又は財団の普通裁判籍は、前項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
6 国の普通裁判籍は、訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。
ゴーン被告、日産や幹部らに1420億円以上の損賠求め訴訟…逃亡先のレバノンで
読売新聞 によるストーリー • 1 時間前
【カイロ=西田道成】米ブルームバーグ通信などは20日、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が、資産と名誉を深く傷つけられたとして、日産や同社関係者らを相手取り、10億ドル(約1420億円)以上の損害賠償を求める訴訟を、逃亡先のレバノンの裁判所に起こしたと報じた。
ブルームバーグ通信などによると、提訴は5月18日付。裁判は9月18日に始まる見通しだという。
ゴーン被告は、2018年に日本で逮捕され、その後、会社法違反(特別背任)などで起訴されたが、保釈中の19年12月に不正に出国し、レバノンに逃れた。
日産は信用が傷つけられたなどとして、ゴーン被告を相手取り、約100億円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。ゴーン被告は一連の事件について「陰謀」などと主張しており、日本で刑事裁判を受けるめどは立っていない。
日産元会長ゴーン被告、レバノンで日産と関係者らに10億ドル損賠提訴
リード スティーブンソン によるストーリー • 昨日 15:53
(ブルームバーグ): 会社法違反(特別背任)などの罪で起訴され、公判中に国外逃亡した日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が、個人の資産と名誉を深く傷付けられたとして、日産と複数の同社関係者らを相手取り、10億ドル(約1420億円)の損害賠償を求める訴訟を逃亡先のレバノンの裁判所に起こした。
ブルームバーグが確認したゴーン被告の裁判資料によると、訴訟は5月18日に提起され、5億8800万ドルの賠償請求のほか懲罰的な措置として5億ドルを求めている。資料は原文のアラビア語から英語に翻訳されたもの。
訴訟の対象となったのは日産のハリ・ナダ専務と豊田正和、永井素夫の両社外取締役のほか、ゴーン氏のスタッフだった大沼敏明氏や元監査役の今津英敏氏、川口均元専務らが含まれている。
ゴーン被告は2018年11月に逮捕、その後起訴され、19年12月に保釈中にレバノンに逃亡していた。日産も20年2月に不正行為で発生した損害を取り戻すとしてゴーン被告を相手取り、100億円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こしている。
日産の担当者は訴訟に関する資料をまだ受け取っていないか認識していないと述べた上で、ゴーン被告の主張について会社としてコメントしたり、当事者にコメントさせることはできないとした。
ゴーン元会長、レバノンで日産提訴 10億ドル超の賠償請求
Reuters によるストーリー • 昨日 18:51
[ベイルート 20日 ロイター] - 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が逃亡先のレバノンで同社に10億ドル以上の賠償を求める訴訟を先月起こしていたことが明らかになった。
ロイターが裁判資料を入手した。元会長はレバノンの検察官に訴訟を提起。名誉棄損、誹謗、中傷、証拠捏造などで日産など3社と個人12人を訴えている。
司法関係者によると、9月18日に裁判所の審理が行われる。
ゴーン被告、レバノンで日産などに約1415億円の損害賠償を求め提訴
ABEMA TIMES によるストーリー • 昨日 19:52
ゴーン被告、レバノンで日産などに約1415億円の損害賠償を求め提訴© ABEMA TIMES
日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が、逃亡先のレバノンで日産などに対して、10億ドル、約1415億円の損害賠償を求める訴訟を起こしたことがわかりました。
ブルームバーグなどによりますと、損害賠償訴訟はレバノンの裁判所で5月18日に起こされ、対象となっているのは日産や複数の日産関係者だということです。
ゴーン被告側は個人の資産と名誉が深く傷つけられたとしており、5億8800万ドルの賠償請求のほか、懲罰的な措置として5億ドルを求めています。
ゴーン被告は2018年11月に、金融商品取引法違反の疑いで逮捕され、保釈中の2019年12月に日本からレバノンに逃亡して以降、レバノンを拠点に生活しているとみられています。(ANNニュース)
ドバイ裁判所が日産に400億円賠償命令-ゴーン被告友人企業発表
稲島剛史、リード スティーブンソン
2021年10月15日 14:50 JST 更新日時 2021年10月15日 16:36 JST
中東での販促合弁先、契約違反で損害を受けたとして19年7月に提訴
さらなる訴訟手続きの可能性も、「終始適切に行動してきた」と日産
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ第一審裁判所は日産自動車に対して、13億ディルハム(約403億円)の損害賠償金を中東の企業アル・ダハナに支払うよう日産に命じた。アル・ダハナが14日発表した。同社は日産前会長のカルロス・ゴーン被告の友人らが所有する企業。
発表によると、アル・ダハナは契約違反で損害を受けたとして賠償を求めて2019年7月4日に日産と同社の子会社の中東日産などを提訴。同裁判所は9月29日に損害賠償の支払いを命じる当初判決を出した。また、ドバイ緊急問題裁判所は4日、2社の商品などに対する予防的差し押さえ命令を出したという。
アル・ダハナはゴーン被告の友人のサウジアラビアの富豪ハリド・ジュファリ氏と実業家のナセル・ワタル氏が出資する企業。日産は08年、アル・ダハナと中東の一部市場での販売促進のため合弁会社を設立すると発表。日産の広報担当の百瀬梓氏によると、同合弁契約は19年に終了した。
百瀬氏は、それ以来アル・ダハナから日産には複数の訴訟が提起されていると述べた上で、一連の手続きは継続中で、ドバイの控訴裁判所でさらなる訴訟手続きが行われる可能性があるとした。日産は「契約上の義務を完全に順守してきた」と主張しており、「終始適切に行動してきたと確信している」という。
(主見出しや第1段落を差し替えて記事を更新します)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE 関連記事 More stories like this are available on bloomberg.com ©2023 Bloomberg L.P.
ゴーン元会長、日産などをレバノンで提訴 9月18日に審理予定
毎日新聞 によるストーリー • 昨日 20:39
ロイター通信は20日、中東レバノンに逃亡した日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が日産などに対し、名誉を傷つけられたなどとして10億ドル(約1414億円)以上の損害賠償を求めてレバノンで提訴したと報じた。報道によると、提訴は5月18日付で、被告は日産など3社と関係者とみられる12人。9月18日に審理が予定されているという。
ゴーン元会長は2018年11月、有価証券報告書に役員報酬を過少に記載したとして金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕され、その後、日産の資金を私的に流用したとする会社法違反でも起訴された。19年4月に再保釈された後、同年末に「私はいま、レバノンにいる」と声明を出し、海外逃亡が発覚した。【カイロ金子淳】
My opinions.
日本国憲法
第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
③ 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
しかしながら、ゴーン元会長は2018年11月、有価証券報告書に役員報酬を過少に記載したとして金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕され、その後、日産の資金を私的に流用したとする会社法違反でも起訴された。
19年4月に再保釈された後、同年末に「私はいま、レバノンにいる」と声明を出し、海外逃亡中である。逃亡中の刑事被告人に民事訴訟の損害賠償の訴えの権利が与えられるのであろうか。甚だ疑問である。今後の進展を楽しみにしている次第である。乞うご期待!
To be continued. See you later.
参考文献・参考資料
ゴーン被告、日産や幹部らに1420億円以上の損賠求め訴訟…逃亡先のレバノンで (msn.com)
どこで裁判をするべきか?裁判管轄をわかりやすく【民事訴訟法その3】 | はじめての法 (forjurist.com)
日産元会長ゴーン被告、レバノンで日産と関係者らに10億ドル損賠提訴 (msn.com)
ドバイ裁判所が日産に400億円賠償命令-ゴーン被告友人企業発表 - Bloomberg
ゴーン元会長、レバノンで日産提訴 10億ドル超の賠償請求 (msn.com)
ゴーン被告、レバノンで日産などに約1415億円の損害賠償を求め提訴 (msn.com)
ゴーン元会長、日産などをレバノンで提訴 9月18日に審理予定 (msn.com)
深津栄一著 『国際法』日本大学 平成12年10月6日発行
大森正仁著 『国際法』慶応大学 2002.8.20 初版4刷
石原豊昭・石原輝・平井二郎著『訴訟は本人で出来る』自由国民社 1998.7.20 1刷発行 p60
中西康・北澤安紀・横溝大・林貴美著『国際司法』有斐閣2015.11.20 3刷発行
久保岩太郎著『国際司法』慶応大学 2005.4.1 2版4刷発行
北脇敏一著『国際司法』日本大学 平成13年5月25日発行
染野義信著『民事訴訟法』日本大学 1999.2.15 1版3刷発行
板倉宏編著「刑事訴訟法』日本大学 平成14年4月1日 初版発行
安富潔著『刑事訴訟法』慶応大学 2005.10.1 初版3刷発行
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?