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政治講座ⅴ1939「喧嘩腰ではビジネスは成功しない」

 中国共産党は経済破綻した旧ソ連から何を学んだのであろうか。社会主義経済は計画経済と言われるが、その計画が「需要と供給」に基づかない「供給だけの経済」は、効率が悪いのである。
商売相手を脅して売りつける商売は「悪徳商法」の最悪の恐喝の犯罪である。中国共産党はそれの恐喝で商売するのである。ビジネスではない、喧嘩腰の恐喝商法である。中国からドン引きする理由が分っていないようである。二度と中国へは進出することはない。
今回はそのような報道記事を紹介する。

     皇紀2684年9月21日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

処理水監視参加が〝条件〟中国、日本産水産物の輸入再開表明へ 習政権の「日本たたき」破綻も「新たな言いがかり与えるリスク」


東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を受け、日本産水産物の輸入禁止を続けてきた中国が一転、輸入再開を表明する見通しとなった。ただ、〝条件〟として、中国も参加できる形で処理水のモニタリング(監視)体制を強化する方針が浮上している。科学的根拠に基づかずに処理水を「核汚染水」と主張してきた中国の参加は、新たな言いがかり材料を与えかねないという懸念の声も出ている。

岸田文雄首相とIAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長は20日、電話会談を行って監視体制を強化することで合意する。

日本は現在、IAEAの指揮の下、第三国の専門家も参加し、各国の分析機関で結果を比較する体制を構築している。これに対し、中国は7月の日中外相会談などで、「独立した試料採取」や「長期的な国際監視体制の構築」を求めてきた。

外交筋によると、今後は試料の採取ポイントを増やすほか、中国を含む希望する第三国の役割を拡充し、海水や、水産物などの試料採取に加わるようにする。政府は中国とも並行して協議しており、新たな体制を踏まえ、日本産水産物の輸入を着実に再開させると表明する見込みという。

中国は昨年8月の処理水放出開始を「核汚染水の放出強行」と非難し、日本産水産物の輸入を全面停止した。日本は科学的根拠に基づかない措置だと主張し、即時撤廃を求めてきたが、中国側は今月16日のIAEA総会でも「汚染水」と呼び、放出反対を訴えていた。

中国の理不尽な「禁輸措置」に対し、日本政府は水産物の販路拡大を進めてきた。農水省は欧州や南米など各国でPRイベントを開催するなど売り込みを本格化させている。中国に依存しない形での市場開拓が進むなかで、今回の動きをどうみるか。

石平氏「中国の『日本たたき』破綻」

中国事情に詳しい評論家の石平氏は「国際社会が中国の『汚染水キャンペーン』に同調しなかったため、習近平政権は、こぶしを下ろさざるを得なくなったのだろう。中国の『日本たたき』が破綻したことを示しているのではないか」と話す。

日本産水産物の輸入再開表明の前提となる、処理水の監視態勢強化に懸念を示す意見もある。

平井宏治氏「新たな言いがかり与えるリスク」

経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「中国の参加は、処理水の安全性を認めているIAEAの独立性にも関わる。中国に言いがかりをつける根拠を与え、それをもとに別の貿易交渉の条件に利用されるリスクもある。中国の過度な口出しを制限する線引きが必要だ」と語った。

習氏が高める中国ナショナリズム、日本人男児死亡で露呈した危険性

Bloomberg News によるストーリー
• 17 時間 • 読み終わるまで 2 分

(ブルームバーグ): 中国の習近平国家主席は競争相手国などとの緊張が高まる中、政府の求心力を高めるのにナショナリズムの高揚を利用してきた。そうした政治的戦略の危険性は、深圳で日本人の男子児童が刃物で刺されて死亡した事件で露呈した。
日本人男児が死亡、中国外務省が哀悼の意-日中関係悪化の懸念
  日本人学校近くで10歳の男児が襲われた事件で、中国当局は容疑者の犯行動機について明らかにしていない。現地警察当局は当初、被害者の国籍に言及していなかった。
  中国外務省の林剣報道官は19日に北京で開いた定例記者会見で、男児が死亡したことに哀悼の意を示すとともに、心を痛めていると表明。同事件は個別事案だとした上で、「中国はすべての外国人を保護するための有効な措置を今後も講じ続ける」と述べた。


China's Top 10 Cities for Economic Protest | Dissent events in Guangdong province reflect strains in manufacturing hub© Bloomberg

  中国当局は、6月に江蘇省蘇州で日本人母子ら3人が刃物で襲われた事件や、吉林省で米国人教員4人が刺された事件についても、「個別」の事案だと説明していた。今回の事件は、満州事変のきっかけとなった「柳条湖事件」が起きた9月18日に発生した。
  中国共産党は近年、国際社会での中国の強さをアピールすることで自らの政策を正当化してきた。そうした手段は米国や日本などへの敵対感情をあおることにもなる。中国経済の減速に対する社会不安が高まる中、同国政府は現在、オンライン上の憎悪が現実の暴力に波及している問題への対応を迫られている。
  ライデン大学の中国専門家、フロリアン・シュナイダー氏は「中国当局は世界を理解する『正しい』方法としてナショナリズムを一般化してきた」と指摘。「市民がその理解に基づいて何をするかは、個々の指導者には決められない。時には思いがけないほど悪い結果を招くこともある」と述べた。
  同氏はその上で、最近の相次ぐ暴力事件はナショナリズムの高揚がきっかけとなった可能性はあるものの、「もっと根深い要因があるとみられる。より広範な社会や経済の不安と結びついている」と述べた。
  外国人に対する暴力行為は、外国からのビジネス誘致という中国政府の目標を損なう。中国に進出している日本企業を対象に最近行われた調査では、今年は支出を増やさない、もしくは投資を削減するとの回答が約半数に上った。賃金上昇や物価下落の他、地政学的な緊張を理由に挙げている。
  「日本人学校の児童が刺された事件は、こうした問題への新たな懸念材料となるかもしれない」。シンガポール国立大学の東アジア研究所で非常勤シニアフェローを務めるリム・タイ・ウェイ氏はこう語り、日中関係に改善の機運があった時期に今回の事件が起きた点を指摘した。

Japan Inc. Not Spending Much in China | Investment slumped in the past few years, with no sign of improvement© Japan's Ministry of Finance.

  中国のソーシャルメディア、微博(ウェイボ)では反日感情の高まりを疑問視する声もある。「その日本人少年のことを思うと今も悲しい」と題された投稿には、「中国と日本の友好的な交流を支持する声は、オンライン上では徐々に追いやられ、消し去られることさえある」と書かれていた。
同投稿は現地時間19日午後の段階で1万2000回余り閲覧され、4000を超える「いいね」が付いていた。
  その後、同投稿は「違反行為があった」との理由で非表示になった。原題:Xi’s Nationalism Faces Reckoning After Murder of Japanese Boy(抜粋)--取材協力:Dan Murtaugh、Colum Murphy、Josh Xiao.More stories like this are available on bloomberg.com©2024 Bloomberg L.P.広告

水産物禁輸緩和へ日中が一致 原発処理水の監視拡充で合意

朝日新聞社 によるストーリー

取り出したホタテの貝柱から不純物を取り除く作業=2024年8月9日、北海道紋別市港町、丸石伸一撮影© 朝日新聞社

 日中両政府は20日、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり、中国による日本産水産物の全面禁輸措置を緩和することで一致した。日本政府と国際原子力機関(IAEA)が同日、中国も交えた処理水のモニタリング(監視)の追加実施を決めたことを受け、合意にこぎつけた。

 岸田文雄首相が同日、IAEAのグロッシ事務局長との電話協議後、記者団の取材に明らかにした。首相は「我が国として、この追加的なモニタリングを歓迎する」と表明。中国との合意については「中国側は輸入規制措置の調整に着手し、基準に合致した日本産水産物の輸入を着実に回復させることになった。我が国の立場が規制の即時撤廃であることに変わりはなく、今回の発表を規制の撤廃につなげていく」と説明した。

 首相とグロッシ事務局長との電話協議では、IAEAの管理のもとで各国が参加し、専門家による海水の試料採取や、分析機関どうしの比較を行う「追加的なモニタリング」を実施することで一致した。中国を含む周辺国の参加が想定されている。

 中国は処理水を「核汚染水」と呼んで批判し、昨年8月の海洋放出を受けて日本産の水産物の全面禁輸に踏み切った。その後、首相と習近平(シーチンピン)国家主席が昨年11月の会談で、処理水問題を「協議と対話を通じて問題を解決する」ことで一致。今年から実務者間の交渉が続いていた。(高橋杏璃)

【中国・日本人男児殺害】事件は「国恥日」に起きた…背景に習近平政権の反日世論誘導、社会への不満の矛先が日本に

福島 香織 によるストーリー

日本人男児殺害事件について記者会見で説明する中国外務省の林剣副報道局長(9月19日)、犯行の動機は明らかになっていない(写真:共同通信社)

9月18日、中国・深圳の日本人学校に通う10歳の男児が刃物で襲われ、翌日死亡が確認された。18日は反日感情が高まる「国恥日」だった。6月にも日本人学校のスクールバスを待つ日本人母子が襲撃されている。日本人は標的にされているのか、背景を検証する。

(福島 香織:ジャーナリスト)

 9月18日、深圳の日本人学校に登校中の10歳の男児が44歳の中国人男に刃物で襲われ、腹部を刺された。病院に搬送され治療をうけるも翌日に死亡が確認された。

 この事件はすでに日本メディアが繰り返し報道している。だが、未だに男がなぜこの少年を襲ったのか動機は明らかにされていない。一つ言えることは、9月18日には中国人の仇日情緒、反日情緒が特にたかまる「国恥日」、柳条湖事件が起きた日であったこと。

事件が起きた中国・深圳には日本企業も数多く進出している(イラスト:共同通信社)

 そして3カ月の間に日本人学校の生徒を標的にした襲撃事件が2回も起きたことから、やはり日本人を狙った事件であろう、と多くの人たちが想像しているということだ。

 6月に蘇州の日本人学校スクールバスを待つ日本人母子が刃物男に襲撃された事件のときは日本人をターゲットにしたものではない、と中国当局は説明していたが、その時も私は日本人が特に狙われやすい事情があると、このコラム欄でも警告したと思う。

【関連記事】

中国での日本人母子刺傷事件は本当に「偶発」か?弱腰日本は格好のターゲット、反日高揚の危険な周期に

 繰り返しになるが、なぜ日本人が今の中国社会で人民の不満や憎しみの矛先を受けやすいのか、背景を今一度整理したい。

 国恥日とは、1931年9月18日、遼寧省瀋陽市近郊の柳条湖付近で、関東軍(日本軍)が南満洲鉄道の線路を爆破した事件、柳条湖事件の屈辱を忘れてはならない、という意味で呼ばれている。柳条湖事件が発端となり、関東軍の中国東北部占領、1932年3月1日の満州建国という流れになる。

 毎年、9月18日は、中国社会で反日情緒の発露がとくに起きやすい日であり、各地でこの日を記念するイベントが催される。事件の現場の瀋陽では9月18日午前9時18分、防空警報が鳴らされ、車道を通る車が一斉にクラクションを鳴らし、日本になめさせられた屈辱、辛酸を忘れない決意を表明する。中国には、こういう仇日情緒、反日情緒が高まる特別な日というのが、1年のうちに何日かあるということを忘れてはならないだろう。

 今回の事件は、そんな特別反日情緒の高まる9月18日に発生した。経緯を振り返ってみよう。

事件について中国・ネット民はどう反応したか

 9月18日午前8時ごろ、深圳の日本人学校の校門200メートルのところで、通学中の10歳の男児が刃物を持った男に襲われた。母親に電動自転車で送ってもらい、校門に向かうところで、母親の目の前の凶行だった。男は現場で取り押さえられ逮捕された。

 男児はすぐに病院に搬送されたが、腹部を刺されており、緊急手術を行うも、翌日に死亡が確認された。

死亡した日本人学校の児童が男に襲われた現場=9月19日、中国広東省深圳市(写真:共同通信社)

 事件が9月18日に起きたのが偶然だったのか、犯人の動機に反日情緒が関係あったのか、それに関する情報はこの原稿執筆時点では得られていない。

 香港・星島日報などによれば両親は日中の国際結婚カップルであり、男児は本来なら日中両国をつなぐ架け橋となるような存在であるはずだったが、もしその命が、中国の歴史教育の影響を受けた反日情緒が関係していたとしたらこれほど皮肉なことはない。

 日本メディアは、現地の中国人もこの犯行に対し憤り、男児の犠牲を悼んでいることを伝えている。だが微博などでこの事件を報じるニュースに付いたコメントをみると、無辜(むこ)の子供が犠牲になった、ということで同情の声はもちろん多いのだが、やはり反日教育や日中関係の変化について言及する意見も散見されている。

 ある微博コメントはこう指摘している。

「コメント削除を覚悟の上で書くけど、深圳含む国内の大都市では外資を吸引し、外資を留めようとしているが、一方で、民衆と子供たちに対しては西側や日本に抵抗せよ、反対せよといった宣伝と教育を行っている。我が家の娘ついていえば、10代の小学生だが、日本の話題を出すと、異様な興奮状態になって、いろんな罵り言葉を言い出す。理由を聞くと学校で先生たちが、日本は核汚染水で海を汚染し、そのせいで我々は海鮮を食べられなくなった、日本人たちは毒で我々中国人を死なそうとしているのだ、日本人は本当に卑劣だ、などと教えているのだという」

「数日前に新学期が始まり、最初の日は学校で労働を行う日だったが、娘が家に帰ってくるなり『今日は大事件があって、とても楽しかった』という。娘によればクラスメートと一緒に抖音(中国版TikTok)にアップされていた日本大使館かどこかの電話番号に、順番に電話をかけて日本人を一方的に罵ってきたのだという。相手側は娘が誰かもわからなかったようだ」…

 犯人への擁護、同情のコメントもあった。

「犯人は人間性を失ったが、愛国者である」

「犯人を擁護する書き込みをすると削除される」…

 この事件は中国政府にとって大きな外交的打撃になるだろうという見立てとともに陰謀論のコメントもあった。

「この事件で一番得をするのはまもなく自民党総裁選を迎える自民党だろう。自民党総裁になれば必ず首相になる。この事件で、より対中強硬的な首相が誕生することになるだろう」

「日本側の自作自演ということか」

「日本は最も反中的国家で、地政学上からいっても、統一された強大な中国を最も望まぬ国だ」

「日本が反省しないから、こういう事件が起きたのでは?」

「英国とフランスは和解に100年かかったのだから日中韓も100年かかる」

「これは仇恨教育の呪詛返しだ。(反日教育をやりすぎて、中国が窮地に追い込まれている、の意味)」…

 こうしたコメントをざっくり眺めるだけでも、この事件を非難するにしても、犯人を擁護するにしても、犯行を反日、仇日の感情と関連づけてみる人は相当数いるのだ。

 しかも、同様の事件が3カ月前にもあったのだ。中国江蘇省蘇州で今年6月、中国人男が、スクールバスをバス停で待っていた日本人母子を刃物で切り付けて襲うという事件があり、この時バススタッフの女性・胡友平さんが、男がスクールバスに乗り込もうとするのを身を挺して防ごうとして命を落とした。3カ月の間に2度、現場は日本人学校。これを偶然といえるだろうか。

中国で多発する「社会報復性テロ事件」

 日中の世論がともに胡友平さんの英雄的行動に強く関心を寄せたことで、蘇州の事件については「日本人が狙われたのか」というところに報道の焦点があまり当てられなかった。中国側は日本人を狙った犯行ではない、と説明し、日本側メディアも世論もそのように受け止めた。

 だが、今から思えば、中国において日本人は暴力事件のターゲットになりやすい、という意識をもっと喚起しておけば、再発防止措置がもっと徹底されたかもしれない。犯行の真の動機がどうであれ、今の中国で日本人が攻撃されやすい社会のムードがある、という前提をもっていれば9月18日に日本人学校を臨時休校することぐらいしたかもしれない。

 中国ではもともと「社会報復性テロ事件」と呼ばれる、社会に不満や恨みをもった人間がその恨みの矛先を無差別に周囲、特に子供や女性など弱者に向ける犯罪が多い。最近は、経済の長期的な低迷や統制強化による息苦しさなどで社会の雰囲気は極めて悪く、こうした事件が急増している。

 パターンとして多いのは車を暴走させて無差別に歩行者をはねる事件だ。9月10日、湖北省武漢で、車が通学中の子供たちの列に突っ込み、大勢の子供たちが血まみれになって倒れている様子の動画や写真がネットで拡散された。詳細は報じられていない。


男に襲われ命を落とした男子児童が通っていた日本人学校前に手向けられた花束やメッセージ=9月19日(写真:共同通信社)

 9月3日、山東省泰安市の仏山中学で、スクールバスが暴走し、バスを待つ子供たちの列に突っ込み11人死亡13人負傷という大事件が起きた。スクールバスの暴走の原因については報じられていない。

 7月に湖南省長沙市で車が人込みに突っ込み8人死亡、5人負傷の事件が起きた。これは住居を強制退去させられた容疑者が自分の不幸を社会に広く知らしめようとして起こした社会報復性テロ事件とされた。

 刃物でいきなり人を襲う事件も多い。5月23日に湖北省孝昌市郊外の農村で男がナイフで自分の80歳代の母親を含めて村人を次々と襲い8人死亡、1人負傷という事件があった。

 5月21日四川省自貢市の路線バス上で52歳の男が刃物で乗客を次々襲い、3人が負傷。20日には江西省鷹潭貴渓の小学校で刃物をもった女が次々子供たちを切りつけ、少なくとも2人死亡10人負傷という事件があった。

 立て続けに刃物を使った無差別襲撃事件が起きたので、当時は、これも社会報復性テロだとネットで噂になった。ただ当局は事件の詳細については報道統制しており、事件の詳細な背景、犯行の動機についてははっきりしていない。

 こういう事件について当局はだいたい、原因を犯人の精神疾患などとして、動機などは深くは追求していない。だが中国世論の受け止め方は、世の中に不満をもち、不幸に苦しむ人間が、周囲をその不幸に巻き込み、自分の不幸を世に知らしめるために起こす事件だとみている。そして社会不満の原因は、政治の悪さであり、その責任の矛先が共産党、あるいは習近平政権という風になりかねないので、報道が統制されるのだろう、と見ている。

社会の不満が日本や日本人に向かいやすい理由

 今回の深圳の男児殺害事件も、6月の蘇州の事件も、犯人の直接的動機が何であれ、本質は中国の社会不安、不満を反映した事件ととらえることができる。だが、同時にその社会の不満が日本や日本人に向きやすい政治的歴史的背景は間違いなく存在する。

 中国人は社会不満を暴力で発露することがよくあるが、共産党政権はそうした民衆の不満を自分たちに向かわないように誘導する。その誘導先が日本であることは今に始まったことではない。

 2005年に起きた反日デモは、最初は明らかに官製デモであった。2010年や2012年の反日暴動も当局による動員があった。反日デモが社会不満の適度なガス抜きとして、ある程度容認されていたことは比較的周知の事実だろう。

 私の考えを言えば、習近平政権になって、中国人民の情緒を反日に誘導する傾向が強まったとみている。理由は、習近平の政策の方向性が鄧小平路線から中国式現代化、習近平式改革という方向に転換したからだ。

 つまり経済至上の政策から安全至上の政策に転換し、米国や日本などと経済を緊密化して先進国の仲間入りを望む方向性から、ロシアやイランの反米国家と組んでグローバルサウスの途上国を引き込み、欧米日本に対抗していく新たな経済圏を構築する方向性に切り替えた。

 反日教育は今に始まったことではないが、胡錦涛政権までは日本との経済関係も重視し、同じ反日でも「コントロール可能な反日」を目指していた。適当なところで関係を回復しようと反日世論を抑えようともした。

 だが習近平政権は日本との経済関係を配慮して、反日世論を抑えようという考えはない。習近平の反日誘導には手加減はない。

 かつて反日世論は、「南京大虐殺」「慰安婦」「徴用工」といった戦争歴史問題、尖閣諸島など領土問題の宣伝、プロパガンダで誘導されてきた。だが、最近は日本の「スパイ問題」、「福島核汚染」「台湾独立に加担」といった問題を喧伝し、過去の歴史ではなく、今後、日本が中国に害をなそうとしている、といったより明確で激しい日本敵視情緒を醸成しようとしている。

 本心では親日的な中国人も、こういう状況で日本人に同情的、擁護的な態度は表にできない。こうして中国人社会全体がより日本人に敵意を向けやすいムードに染まっていくだろう。

 日本政府は中国に再発防止を求めたそうだが、習近平政権が目下行っている手加減のない反日、仇日、日本敵視の宣伝、教育、世論誘導をやめさせないかぎり、またこういう事件が起きうるという覚悟と警戒が必要だろう。

 日中関係が昨年から今年にかけて、明らかに悪い方向へ大きく転換し、それは当面改善されそうにない。2010年や2011年に起きた反日暴動時代以上にやっかいな反日情緒がこれから中国に全面的に広がっていくと私はみている。

福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト

大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。

参考文献・参考資料

処理水監視参加が〝条件〟中国、日本産水産物の輸入再開表明へ 習政権の「日本たたき」破綻も「新たな言いがかり与えるリスク」 (msn.com)

習氏が高める中国ナショナリズム、日本人男児死亡で露呈した危険性 (msn.com)

水産物禁輸緩和へ日中が一致 原発処理水の監視拡充で合意 (msn.com)

【中国・日本人男児殺害】事件は「国恥日」に起きた…背景に習近平政権の反日世論誘導、社会への不満の矛先が日本に (msn.com)

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