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政治講座ⅴ1772「日本の移民政策を考える」

  米国は移民で発展したとバイデン米国大統領がのたまうが自国の開拓の歴史を忘れている。健忘症・認知症が激しいらしいが、米国は奴隷の労働力によって支えられたことを忘れている。その次に労働力は黄色人種を移民と言う形で賄われた。その後勤勉に働く日本人に対して脅威を感じて日本人に乗っ取られるという黄禍論で日本人やアジア人を排斥し出すのである。移民で移住した人には権利が発生する。今や米国はその不法移民により職を奪われていることを忘れてはいけない。欧州で起きている難民として受け入れた移民により職を奪われて失業する従来からの国民に不利益を与えている。
今回は移民に対する貴重な主張・意見の報道記事を紹介する。
 蛇足であるが、ナチスドイツの侵略方法は軍事侵攻の攻撃だけではなく、多数のドイツ人を移民として送り込んで内部から崩壊させる方法を取ったことは歴史が示すところである。移民が経済活動に寄与するとの米国のバイデン氏の主張は的外れである。昨今、米国の分断が叫ばれている原因は不法移民の増加によって米国の民主主義による政治判断が歪められていることによる。

     皇紀2684年5月10日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

衆院補選のウラで審議が進んでいた実質「移民法」のヤバすぎる中身…このままでは日本の「社会保障」が崩壊する

髙橋 洋一 によるストーリー

あまり報じられていない

衆院補選の間に、実質「移民法」とも言える、重要な制度改正が国会で審議されていた。これについては大々的に報道されていない。

小池百合子都知事が応援に回るなどの衆院補選は話題を呼んだが…/photo by gettyimages© 現代ビジネス

これらの報道では、技能実習法と出入国管理法などの改正とし、「技能実習」を廃止し「育成就労」とするとしている。

育成就労は試験などの条件を満たせば最長5年就労できる特定技能「1号」、その後に在留資格の更新に制限がない「2号」になることも可能だ。「2号」は家族を帯同でき、将来は永住権も申請できるとしている。

これで、永住者は増加するので、税金や社会保険料の未払いなどがある永住者について、国内での在留が適当でないと判断すれば許可を取り消すこともできるようになる。

一見すると、今の悪名高い「技能実習」がなくなるので、いい改正にみえる。もっとも、これまでの「技能実習」は「国際貢献」を建前として、本音は「安価な労働力としての外国人受入れ」だったが、今回の改正で、本音が前面に出てきただけだ。

筆者が思うに、酷いのは、育成就労(前の技能実習)から特定技能、さらに永住権という流れだ。この流れがあるので、筆者から見ると、今回の技能実習法と出入国管理法改正は、実質移民法に見えるわけだ。

先進国なら、外国人の受入は、短期と長期に峻別されている。それが、今回の改正では、育成就労(前の技能実習)から特定技能、さらに永住権という流れがあり、その間に試験等の条件があるとはいえ、短期と長期の峻別がなし崩しになっている。

他国の例では、こうした条件はいつのまにか形骸化している。たとえば、大学卒業資格としても、現在問題になっている小池都知事のカイロ大卒業問題のように、相手大学が卒業といえば卒業とせざるを得ない。それが高じると、大学学位を大量に発行する「大学」も出てくる。世界の制度は国によって様々で日本と違うため、形式審査では防ぐことができない。

外来種に在来種が駆逐される

今回の制度改正のベースになっているのは、昨年11月30日に出された法務省の報告書である。

その中で筆者が「奇妙」に感じたのは、「外国人材に我が国が選ばれるよう、・・・新たな制度から特定技能制度へ円滑な移行を図ること」「外国人との共生社会の実現を目指すこと」と記されている点についてだ。

根本的に言えば、外国人に日本が選ばれるようにカネをばらまくのではなく、日本が外国人を選ぶようなシステムづくりが望ましい。共生社会を目指すというのは、一部の欧米諸国のマネだろうが、これは周回遅れの政策だ。実際、欧米では共生社会を目指したツケがでている。一部の国とは文化・風習が違いすぎるので、共生はできず「外来種」に「在来種」が「駆逐」されるような事態が起きている

百歩譲って、外国人受入が経済成長に資するのであれば、いろいろな対応ができるだろう。一般的に外国人を受入すると国内の社会保障制度へのマイナスのダメージがあるが、経済成長してマイナス面を補うのであれば、外国人受入という対応はあり得る。

そこで、移民人口比と経済成長の関係を少し調べてみた。国連のデータでは、ここ最近2010ー2022年の平均データにより各国の移民人口比と経済成長をプロットすると、以下のようになる。


衆院補選のウラで審議が進んでいた実質「移民法」のヤバすぎる中身…このままでは日本の「社会保障」が崩壊する© 現代ビジネス

これは、極めてラフな分析であるが、もし移民人口比が経済成長に寄与するのであれば、右上がりの傾向が期待されるが、そうなっていない。ただし、移民人口比が高くなると経済成長しなくなるとまでともはいえない。

民主化が進むと、一般的に移民人口比が高くなるが、そこまでして移民政策を推し進めることもない。移民は、経済成長に寄与しないばかりか、社会的なコストを招く。一部の企業の労働コストを低下させるが、その業界での賃金は上がりにくくなる。

2018年11月19日付けの「現代ビジネス」コラム「誰も指摘しないのが不可解すぎる、入管法改正の「シンプルな大問題」 拙速な動きにため息連発…」において実証分析しているように、外国人労働者を受け入れた業界では賃金上昇率が低くなっている。これは、受け入れ企業にはメリットだが、その業界の労働者には大きな迷惑だ。しかも、外国人を受け入れるには社会保障などのコストもかかるし、社会不安も招く。これで、どのように正当化するのだろうか。

日本の社会保障が崩壊する

おりしも、バイデン大統領は5月1日、日本や中国などの経済が低調なのは「彼らが外国人嫌いで、移民を望んでいないためだ」と発言した。

これに対して、日本政府は、「正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」とし、日本の考えや政策について説明したとしている。

もし、日本政府は、今回の制度改正で「移民を受け入れます」なんて説明していたら、とんでもない。バイデン大統領に言うべきことは、そこではなく、「移民が少ないから経済成長しない」といのは、統計的には事実誤認と言うべきだ

今回の制度改正が個別の利害代表で世界の移民と比べてもいかに酷いものなのかは、移民受け入れに積極的とされる竹中平蔵氏ですらも、問題点を指摘しているくらいだ。

そこで書かれていることは、筆者のものと重複するが、特に「外国人受入れに関する基本戦略」の策定は重要だ。筆者であれば、外国人受入では社会保障の適用などについて原則相互主義を導入すべきだと思っていることを付言しておこう。でないと、外来種に在来種が駆逐されるように、日本の社会保障が崩壊してしまう。


衆院補選のウラで審議が進んでいた実質「移民法」のヤバすぎる中身…このままでは日本の「社会保障」が崩壊する© 現代ビジネス


日系ブラジル人はなぜ「移民化」したか 「多文化共生」先駆け、偽装戸籍で「孫」1千人も 「移民」と日本人の平成史③

日系ブラジル人が集住する「保見団地」=愛知県豊田市© 産経新聞

「移民」と日本人の平成史は、日系ブラジル人らの「デカセギ」ブームにより本格化した。日系人とは、かつて中南米などへ移民した日本人の子孫。わが国に定住する「移民」の先駆けとして、一時は30万人を超えた。それは日本人にとって「多文化共生」の始まりでもあった。

街宣車放火、機動隊出動

日系ブラジル人が多く暮らす愛知県豊田市の「保見(ほみ)団地」。住民約6700人のうち外国人が約3800人で57%を占める。85%以上はトヨタ関連の工場などで働く日系ブラジル人だ。

現在は穏やかな郊外団地の風景が広がるが、かつては日系ブラジル人らによるごみ出しのルール違反や違法駐車、深夜の騒音などをめぐり日本人住民との軋轢が深刻化していた

1999(平成11)年、一部のブラジル人と右翼関係者のトラブルから大型街宣車が放火され、両者がにらみ合う中で機動隊が出動する騒ぎとなった。住民の一人は「右翼と暴走族が連日『外国人は出ていけ』と叫んでいたごみ団地と呼ばれ、最悪の時期だった」と語る。

団地は当初、「多文化共生のモデルケース」とも呼ばれたが、軋轢の時期をへて、現在もなお模索が続く。日本人住民が減る一方、外国人住民は横ばいで推移、2017年からは外国人の数が上回っている

空前のデカセギブーム

デカセギブームが起きたのは、1990年の改正入管難民法施行がきっかけだった。かつて海外に移民した日本人の子孫に「定住者」という在留資格が与えられたためだ。

元法務省入国管理局長で日本大教授も務めた高宅茂氏(73)は「日系人の受け入れは、わが国との地縁・血縁的関係を考慮したもので、いわゆる外国人労働者や移民の受け入れではなかった」と説明する。

ただ、在留資格が最長5年で更新可能な上、就労に制限がなかったため、高宅氏は「結果的に多くの日系人が『就労目的の外国人』として来日し、滞在が長期化して『移民化』が起きた」。

背景には、80年代後半のバブル景気による人手不足と、ブラジル側の経済破綻があった。ブラジル側も日系人の日本での就労を目指しており、日系人の多いサンパウロ州の日系2世の州議会議員が来日し、自民党国会議員らに陳情していたという。

日本ではバングラデシュ人やパキスタン人の不法就労も問題化していたが、筑波大の明石純一教授(移民政策)は「政治的な働きかけかどうかはわからないが、国内での日系人の法的地位を安定させる目的と、日系人のほうが他民族より受け入れやすいという単純な考え方もあったのではないか」と推測する。

日系ブラジル人はなぜ「移民化」したか 「多文化共生」先駆け、偽装戸籍で「孫」1千人も 「移民」と日本人の平成史③© 産経新聞

一方で、デカセギブームが過熱する中、日系と無関係のブラジル人やペルー人らが「戸籍」や「出生証明書」を偽造し、日系人になりすまして来日する「偽装日系人」が問題化。2000年代に大阪入国管理局が調査したところ、これらの偽造により1人の日本人の高齢男性に「子供」が多数いて、こうした記録だけをたどっていくと「孫」が1千人いることになるケースもあった。

日本語なしで在留OK

90年施行の法整備は、「平成の大改正」とも呼ばれ、現在の外国人受け入れの基本的な考え方にもなっているという。

過去に適用事例はなかったものの、入国時に「永住者」の在留資格を与える規定を削除。永住者の資格を得るには、まず別の在留資格で日本に滞在することを求めるようにした。これは、わが国が直接的に「移民」を受け入れないことを明確化したものだ。

在留資格制度が整備され、「雇った側」の責任も問われる不法就労助長罪も新設されたが、就労に制限のない「定住者」である日系人は対象外だった。

「移民化」した日系ブラジル人は、保見団地がある愛知県や、浜松市、群馬県大泉町など自動車産業の企業城下町に集住。自治体は日本語教育や外国語による情報提供など、それまで経験したことのない生活支援に追われるようになった

入管関係者は「中国人や韓国人は留学などで来日して日本語を学ぶが、日系人は『日本人の子孫』という位置づけのため、学歴や職歴は一切不問の上、極端にいえば日本語を学ぼうとしなくてもいつまでも在留できた」と説明。

初めて日本語の通じない外国人が長期在留する事態が生じた

ピークの2007年に約30万人いた日系ブラジル人は、翌08年のリーマン・ショックの余波で「派遣切り」などに遭った。日本政府は、職を失い再就職もできなかった日系人を対象に、希望者に30万円の飛行機代を出して帰国を促進、約8万人が帰国した。

神奈川県に住む日系ブラジル人2世の男性は「あのとき出稼ぎ目的の人は帰国し、残った者は日本で頑張る覚悟を決めた」と話す。

現在、わが国の在留外国人約341万人のうち、日系ブラジル人は約21万人。ピーク時は中国、韓国に次ぎ3番目だったが、現在は5番目となっている。

保見団地では2020年、多文化共生を目指して描かれた壁画アートが落書きされた。建造物損壊容疑で逮捕されたのは、共生の相手となるはずの日系ブラジル人住民の男だった。男は容疑を否認、その後不起訴処分となり、動機はわかっていない。

日本が外国人労働者の受け入れ方針を大転換、「現代版野麦峠」から脱却か―香港誌

Record China によるストーリー

香港誌「亜洲週刊」はこのほど、外国人労働者の受け入れ方針を大きく転換しつつある日本の状況を紹介する、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。写真は東京の繁華街の池袋の様子。© Record China

香港誌「亜洲週刊」はこのほど、外国人労働者の受け入れ方針を大きく転換しつつある日本の状況を紹介する、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。以下は、同記事の主要部分を再構成した文章だ。

日本では高齢化が進み、労働力不足が急を告げている。これまで外国人労働力の導入に保守的で慎重な措置を取ってきた日本政府も、姿勢を転換せざるをえなくなった。4月16日からは、岸田内閣が提案した新たな外国人労働者の受け入れ制度である「育成就労制度」に関連する国会審議が本格化した。関連法案は成立すると見込まれている。「育成就労制度」の要点は、これまでの「技能実習」の名義による外国人労働者制度を廃止し、外国人労働者の技能育成と長期的な日本での就業を確保する「ウィンウィン」を確立し、日増しに深刻化する日本の労働力のギャップを埋め、日本の経済と産業の持続可能な発展を維持することだ。日本の「技能実習」制度は国際社会から非難され、「現代版野麦峠」などとも呼ばれてきた。その最大の弊害は、日本での実習という名目のもとで、実際には農業、縫制、建築などの「キツくて汚い」労働に従事する外国人実習生を採用したことだ。外国人実習生は学習という名目のために、懸命に働いても「同一労働・同一賃金」を享受できず、さらに仲介管理団体が存在するために、外国人実習生が実際に得られる金額は更に少ない。また、これらの実習生は自分のパスポートを手元に置けないことが普通で、外出制限があり、実際に働き始めてから最大で3年後には帰国せねばならない。その結果、外国人実習生と日本の雇用主や仲介管理団体との間に対立や凶悪事件が発生し、外国人実習生が「蒸発」して不法滞在して生計を立てるケースも多かった。

日本はついに、この国内外の人権団体が注目し批判する「労働搾取」制度の廃止を決定した。新たな「育成就労」の制度では、「同一労働・同一賃金」を確保し、雇用主や仲介管理団体による労働者の賃金の横領や労働者の自由の制限などの不法行為を防ぐ独立監視機構を新設する。また、外国人労働者は技能を養いつつ2年間働いた後、「特定技能」などの別の労働ビザに変更することができる。日本で長期にわたり働くことができ、日本の永住ビザ取得にも道が開かれる。また、日本の永住ビザを取得した外国人であっても、長期にわたって日本に住んでいなかったり、税金や社会保険料などを滞納した場合には、入国管理局が状況に応じて日本の永住ビザを取り消すことができることも重要な点だ。

高齢化による労働力の減少に直面する日本は、「育成就労」の新設以外にも、特定技能1号と同2号の名目の移民就労ビザも導入し、外国人労働力の導入の拡大を加速する考えだ。日本政府は、「特定技能」就労ビザで受け入れる外国人労働者の数を、今後5年間で80万人にする方針だ。特定技能資格で来日した外国人は2023年末時点で約20万8000人余りで、人手が不足している建設、製造、造船、農業、介護、飲食など12業種に従事している。特定技能2号ビザを取得した場合には、家族を連れて来日することもでき、日本の永住ビザ取得の可能性も出てくる。日本は自動車運輸、鉄道、林業、木材産業の4業種についても新たに外国人労働者の導入を打ち出したので、「特定技能」としての外国籍労働力移民は16業種に拡大されることになった。その中には物流関連やバスやタクシーの運転手、鉄道関連の運転士や駅員なども含まれる。日本は、伝統的で保守的労働力についての閉鎖主義から脱却し、同分野でより開放的な国際化に向かいつつある。(翻訳・編集/如月隼人)

バイデン大統領“日本は外国人嫌い”発言 日本政府「残念だ」

2024年5月4日 11時44分 アメリカ

アメリカのバイデン大統領が日本を「外国人嫌い」の国と発言したことについて、日本政府は「正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」とアメリカ側に申し入れました。

アメリカのバイデン大統領は今月1日、選挙関連のイベントで演説した際、「われわれの経済が成長している理由の1つは、移民を受け入れているからだ」と述べたあとで中国とロシア、インドと並べて「なぜ日本は問題を抱えているのか。それは彼らが外国人嫌いで移民を望んでいないからだ」と発言しました。

日本政府関係者によりますと、この発言を受けて政府は、3日までに「日本の政策に対する正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」とアメリカ側に申し入れたということです。
また、日本の考えや政策について説明したとしています。

今回のバイデン大統領の発言をめぐっては、2日、ホワイトハウスのジャンピエール報道官への取材機会の際に、記者団から「同盟国に対して不適切な表現ではないか」などと真意をただす質問が出されました

これに対してジャンピエール報道官は「バイデン大統領は移民がいかにアメリカを強くしているのかについて話していた」と釈明した上で、日米関係は重要であり続けると強調しています。

バイデン大統領 “日本は外国人嫌いで移民望まず” 発言と報道

2024年5月2日 15時20分 バイデン大統領

ロイター通信などは1日、アメリカのバイデン大統領が首都ワシントンで行われたイベントの中で、アメリカの経済が成長しているのは移民を受け入れているからだと述べたあとで「なぜ日本は問題を抱えているのかそれは彼らが外国人嫌いで移民を望んでいないからだ」と発言したと報じました。

秋のアメリカの大統領選挙で再選を目指すバイデン大統領は1日、首都ワシントンで選挙イベントを行いました。

ロイター通信は、イベントの中でバイデン大統領が「われわれの経済が成長している理由の1つは、移民を受け入れているからだ」と述べたあとで「なぜ中国の経済がひどく失速しているのか。なぜ日本は問題を抱えているのか。なぜロシアもインドもそうなのか。それは彼らが外国人嫌いで移民を望んでいないからだ」と発言したと報じました。

これについて、アメリカのメディア、ブルームバーグは、バイデン大統領は3週間前、ワシントンで岸田総理大臣を国賓待遇で歓迎したばかりだと指摘し「中国の経済的な苦しさと移民の受け入れを関連づけて指摘したことはあったが、今回はロシアだけでなく、長年の同盟国である日本も加えた彼の批判は日本の反発を招くかもしれない」と伝えています。

「日本は外国人嫌い」 バイデン米大統領が発言、移民受け入れめぐり

アメリカ大統領選挙2024

浪間新太2024年5月2日 19時30分
 米国のバイデン大統領は1日、移民を歓迎していることが米国の経済成長の理由の一つだと述べた上で、「なぜ日本は困難を抱えているのか。外国人嫌いで移民を望んでいないからだ」と発言した。ロイター通信や米メディアが報じた。
 報道によると、発言はワシントンで開かれた11月の大統領選に向けた資金集めイベントでの演説の中で出た。バイデン氏は米国と比較する形で、「なぜ中国は経済的にこれほど行き詰まっているのか。なぜ日本は困難を抱えているのか。なぜロシアは? なぜインドは? それは彼らが外国人嫌いだからだ。彼らは移民を望んでいない。移民こそが我々を強くするのだ」と語った。

 ロイター通信は「米大統領選を前に、多くの有権者にとって非正規移民への懸念が最重要課題となっている」と報道。

 米ブルームバーグ通信は「バイデン氏は同盟国の日本を、ライバルである中国やロシアとともに『外国人嫌い』と呼ぶ国のリストに加えた。日本政府の反発を招くかもしれない」と伝えた。同通信は、バイデン氏は4月にも中国の経済的苦境と移民を受け入れようとしない姿勢を結びつけた発言を繰り返していたとも報じた。(浪間新太)

林官房長官、バイデン米大統領の「日本は外国人嫌い」 「正確な理解に基づかない発言」

記者会見を行う林芳正官房長官=7日午前、首相官邸(春名中撮影)
© 産経新聞

林芳正官房長官は7日の記者会見で、バイデン米大統領が、日本経済が低調なのは外国人嫌いなためだと発言したことに関し「日本の政策に対する正確な理解に基づかない発言で残念だ。米国には日本の考えや政策を改めて説明した」と述べた。4月の岸田文雄首相の国賓待遇での訪米を踏まえ、「日米関係はかつてなく強固であり、引き続き日米関係の一層の強化に取り組んでいきたい」とも強調した。

欧州「移民受け入れ」で国が壊れた4ステップこれから日本にも「同じこと」が起きる

2018/12/30 7:40
施 光恒 : 政治学者、九州大学大学院比較社会文化研究院教授 

大量の移民受け入れによって欧州に生じた深刻な問題を、日本人も直視すべきだ(写真:jacus/iStock)

出入国管理法改正案が、12月8日、参議院本会議で可決、成立した。これにより、今後5年で外国人単純労働者を最大約34万人受け入れることが見込まれ、2025年には50万人超を受け入れることも視野に入れていると言われている。

「平和ボケ」が「国のかたち」を変えてしまう

改正出入国管理法が国会で可決され、外国人単純労働者の事実上の受け入れが決まった。今後5年間で最大約34万人の受け入れを見込んでいる。2025年までに50万人超を受け入れるという話もある。

『西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

事実上、日本の移民国家化に先鞭をつけかねない、つまり「国のかたち」を変えてしまいかねない重要法案であったにもかかわらず、審議は拙速だった。衆参両院の法務委員会での審議は合計38時間にとどまった。たとえば、今年7月のカジノ解禁に関する法案(IR実施法案)の可決に比べても審議は短かった。

周知のとおり、欧州をはじめ、移民は多くの国々で深刻な社会問題となっている。にもかかわらず外国人単純労働者を大量に受け入れようとするのであるから、受け入れ推進派は最低限、欧州のさまざまな社会問題から学び、日本が移民国家化しないことを十分に示さなければならなかった。現代の日本人はやはり「平和ボケ」しており移民問題に対する現実認識が甘いのではないだろうか。

欧州「移民受け入れ」で国が壊れた4ステップこれから日本にも「同じこと」が起きる

施 光恒 : 政治学者、九州大学大学院比較社会文化研究院教授 著者フォロー

2018/12/30 7:40

本書の描き出す欧州の現状は、先ごろ改正入管法を国会で可決し、外国人労働者の大量受け入れを決めた日本にとってもひとごとではない。本書を読むと、移民の大規模受け入れに至った欧州の状況は、現在や近い将来の日本によく似ているのではないかと感じざるをえない。

たとえば、欧州諸国の移民大量受け入れを推進した者たちの論拠は次のようなものだった。「移民受け入れは経済成長にプラスである」「少子高齢化社会では受け入れるしかない」「社会の多様性(ダイバーシティ)が増すのでいい」「グローバル化が進む以上、移民は不可避であり、止められない」。

本書の第3章で著者は、これらの論拠について1つひとつ証拠を挙げながら反駁(はんばく)し、どれも説得力のないものだと示す。

だが、欧州の指導者たちは、1つが論駁(ろんばく)されそうになると別の論拠に乗り換え、一般庶民の懸念を巧みに逸らし、移民受け入れを進めてきた。

同じことが日本でも起こる

この4つの論拠は外国人労働者や移民の受け入れ推進の主張として、日本でもよく耳にするものである。日本でも今後、推進派の政治家や学者、評論家、マスコミは、おそらく、これらの論拠を適当に乗り換えつつ、実質的な移民受け入れを進めていくのではないだろうか

そのほかの点でも、本書が描き出す欧州の過去の状況をたどっていくと、今後の日本の外国人労働者や移民受け入れの議論がどのように展開するか、大まかな予測が可能ではないだろうか。

次のようなものだ。

1:学者やマスコミは、「政治的な正しさ」(ポリティカル・コレクトネス)に過敏になり、移民受け入れに肯定的な見解や調査結果は積極的に報道する一方、否定的なものは、「報道しない自由」を行使し、大衆の耳に入りにくくする(たとえば、「移民受け入れは財政的に大きなマイナスだ」という研究結果は報道されない)。

2:同様に移民の犯罪についても、「人種差別だ」というレッテル貼りを恐れて、警察もマスコミもあまりはっきりと犯人の社会的属性や事件の背景などを発表しなくなる。

3:「ドイツのための選択肢」(AfD)といったいわゆるポピュリスト政党の躍進など移民受け入れを懸念する動きが一般国民の間に広がった場合、マスコミや政治家は、その第一の原因としての従来の移民受け入れ政策の是非をきちんと吟味することはせず、懸念を表明する人々のほうばかりに目を向け、ことごとく「極右」「排外主義」「人種差別」などと攻撃する。つまり、「問題そのものではなく、問題が引き起こす症状のほうを攻撃する」ようになる。

4:こうしたことが続く結果、政治家や大手メディア関係者といったエリート層と一般国民の間の意識のズレがますます大きくなり、国民の分断が生じてしまう。

西欧諸国に比べて、ハンガリーなどの東欧諸国は、近年、移民受け入れに対し断固たる抑制策をとることが多い。著者はこの相違に関して、過去の植民地主義や第2次大戦中のナチズムなどのために西欧諸国は、欧州の文化に対して自信を失い、贖罪意識を持っていると指摘する。自文化への自信の喪失や贖罪意識が、移民受け入れ政策を方向転換することができない理由の1つとなっているというのである。

自文化への自信の喪失や歴史的な贖罪意識という点でも、西欧諸国と日本は似ている

改正入管法をめぐる日本の国会審議は、欧州の失敗例をほとんど分析せずに終わってしまった。手遅れになる前に、本書『西洋の自死』を多くの日本人が読み、欧州の現状や苦悩を知り、日本の行く末について現実感をもって考えてほしいと思う。

施 光恒 政治学者、九州大学大学院比較社会文化研究院教授

厳格化する欧米の移民政策 大量流入の欧州は悲鳴、米国は大統領選視野に方針転換

2024/1/3 11:20

黒沢 潤

欧米の主要国が移民・難民への対応を厳格化させている。
不法移民らが大量に流入する事態に悲鳴を上げる欧州連合(EU)は2023年末、新制度案で大筋合意。移民対策で寛容な姿勢が批判されてきた米民主党政権も今秋の大統領選を控え、流入抑制へと舵を切った

「衝撃波」耐えられず

「歴史的な日だ」。欧州議会のメツォラ議長は先月20日、EUの主要機関が大筋合意した新案に満足の表情を浮かべた。

同案では、入国者の国境審査が厳格化されるほか、亡命資格がないと確認されれば迅速に強制送還される。EUは6月までの発効を目指す。

新案導入の背景には、地中海を船で渡る人々が23年夏、EU域内に大量に押し寄せたことなどがある。到着地の一つ、イタリア南部の島の市長は「人々が押し寄せる『衝撃波』には耐えられない」と声を上げた。EUの欧州国境・沿岸警備機関(FRONTEX)によると、23年1~11月の不法入国摘発者は前年1年間を17%も上回る。

仏で「死の口づけ」

欧州各国では、6月までのEU共通制度案成立を待たず、独自案を相次ぎ示しつつある。

フランスでは先月19日、新移民法が成立した。法案は当初、野党の左右両派の反対で棚上げされていたが、極右「国民連合」の賛成を得て修正案が辛うじて成立。仏ルモンド紙が「(極右の)死の口づけ」で可決されたと評すほど厳しい内容だ。同国では従来、外国人の親のもと生まれた子供は自動的に仏国籍となる出生地主義を採用していたが、今後は16~18歳時に申請する必要がある。外国人労働者が社会保障を受ける条件も厳しくなる

ドイツも昨年10月、不法移民の送還を容易にする法案を閣議決定した。国境警備も強化する。

手厚い社会保障が〝ゆりかごから墓場まで〟と評されるスウェーデンも翌11月、移民の強制退去要件の導入を検討すると発表した。薬物乱用▽犯罪組織関与▽国家の価値観を脅かす思想表明ーなどが要件。移民相は「社会統合には品行方正さが必要」と強調した。

隣国フィンランドも同月末、ロシアとの国境(約1300㌔)経由で中東などから流入する事態を警戒し、全8検問所を一時閉鎖した。


米でも一段と逆風

4年前にEUを離脱した英国は、なりふり構わぬ対策を講じている。不法入国者をアフリカ・ルワンダに強制移送する計画を巡り、最高裁は23年11月、欧州人権条約に基づく英国内の人権法に違反すると判断。これに対し英政府は翌月、計画続行のための緊急法案を策定、押し切る構えだ。

米国では、バイデン大統領が23年5月、亡命申請手続きの厳格化を柱とする規制策を発表した。同氏は移民問題で強硬姿勢を見せるトランプ前大統領を批判したが、不法移民急増への危機感が国内で高まる中、大統領選を控え方針転換を余儀なくされた形だ。

「外国人嫌いの国は経済が停滞する」は本当か いや、日本には当てはまらないシンプルな理由

「外国人嫌いの国は経済が停滞」は本当か、いや……© ITmedia ビジネスオンライン

 「どうして中国は経済的にこれほどひどく停滞しているのか。どうして日本は大変な思いをしているのか。ロシアはどうして? インドはどうして? この国々は、外国人を嫌っているからです。移民に来てほしくないから」

 5月1日、こんな感じで米国のバイデン大統領から「外国人嫌い」(xenophobia:ゼノフォビア)の国として名指しでディスられたことで、愛国心あふれる人々がブチギレている。

 ご存じのように、日本のテレビは「日本の◯◯は世界一」「今度生まれ変わったら日本人になりたい」という感じの“親日外国人”が大好きだ。ニュースでも基本的には「米国人が大谷翔平の活躍に熱狂」とか「岸田首相がホワイトハウスで爆笑をかっさらって人気者に」みたいに「日本スゴい報道」がメインとなっている。つまり、「外国人に自国の悪口を言われる」ことへの耐性があまりない。

 それに加えて、日本人の多くが「人権のない国」と“下”に見ているロシア、中国と同一視されたことで、「西側諸国の一員」「米国の盟友」というプライドまでズタズタに傷つけられた。そのため売り言葉に買い言葉ではないが、「移民で治安と雇用がボロボロの国に言われたかねーよ」「裏で陰湿な人種差別をしている白人至上主義のくせに」と反米感情につながってしまっている人もいるのだ。

 さて、そういうナショナリズム的論争はさておき、ビジネスパーソンの皆さんが気になるのは、バイデン大統領が主張している「ゼノフォビア(外国人嫌い)の国は経済が停滞」しているのは本当なのか、ということではないか。

 確かに「移民排斥」が問題になっている西側諸国では、インテリ知識層がバイデン氏と同じことを盛んに主張している。例えば分かりやすいのは、『ロイター通信』が2023年5月8日に報じた「アングル:移民に厳しいイタリア、高学歴スキル認めず低成長に拍車」という記事だ。

●「外国人嫌いの国は経済が停滞」は本当か

 この記事では「イタリアが移民の受け入れに後ろ向きで、彼らの自由や権利を制限するような法律もあるため、多くの移民が単純労働しかできず、それが結果としてイタリア経済を冷え込ませている」と指摘している。

 ただ、イタリアが抱える問題が、全ての国に当てはまるわけではない。世界には移民に優しくなればなるほど経済が停滞していく国もあるからだ。

 その代表が他でもない日本である。

 実は日本は「移民」に後ろ向きどころか、政官民一体で「じゃんじゃん来てください」と歓迎している。そんな「外国人好き」のイメージが国内外に広まっていないのかというと、日本のお家芸である「言い換え」だ。日本に移り住んで働く外国人を全て「外国人労働者」と呼ぶことで、「日本は移民政策をやってません」と言い張っている。ただ、国際的な基準でみれば、日本の外国人労働者はまぎれもない「労働型移民」なのだ。

 OECD(経済協力開発機構)が発表しているコロナ禍前の2019年のデータでも、先進国の「永住型移民」の受け入れ数は、オーストラリア、オランダに次いで、日本は10位(約13万人)に付けている。毎年、100万人もの移民を受け入れる米国の大統領からすれば“レベチ”ではあるのだが、それなりの「移民国家」なのだ
そこに加えて、年を追うごとにこの「移民政策」を加速させている。

●外国人労働者数は過去最高に

 2023年10月時点で外国人労働者は204万8675人と初めて200万人を超えて過去最多となった。前年比で12.4%増加し、2013年からは11年連続で過去最多を更新している。

 ちなみに、2024年度から5年間に関しては、受け入れ枠の上限を2023年度までに定めていた人数の2.4倍に増やすことも決まっている。「えっ! 知らなかった!」と驚く人も多いだろう。岸田内閣の閣議決定でサクっと決まってしまった。

 このように「労働型移民の皆さん、日本へじゃんじゃんお越しください」という国策を政官民一体で進めてきたことで、「ゼノフォビア」もかなり解消に向かっている。

 「官」がコントロールしやすいテレビや新聞で「外国人をどんどん受け入れましょう」ということを繰り返し報じさせたことで、「やっぱこれからの日本は外国人労働者に働いてもらわないとダメか」という世論形成が成功しつつあるのだ。

 『朝日新聞』の4月28日付記事「外国人労働者受け入れ『賛成』62%、高齢層で大幅増」によれば、「外国人労働者の受け入れ拡大方針」の賛否を尋ねたところ、「賛成」が62%で、「反対」の28%を大きく上回ったという。

 この調査は安倍政権下、外国人労働者の受け入れ拡大を決めた2018年にも行われたが、その時は「賛成」が44%で、「反対」は46%。当時は完全に世論が真っ二つに割れていた。それがわずか6年でここまで「移民」に優しくなった。この調子ならあと4~5年すれば、「反対」は10%台に落ち込み、「人種差別主義者め」なんてたたかれるムードになるだろう。

●「外国人好き」に舵を切った日本はどうなったか

 さて、「外国人嫌いの国は経済が停滞」というバイデン理論に基づけば、日本はそろそろ経済の停滞から抜け出して、明るい兆しが見えていなくてはいけない。この6年で外国人労働者という「労働型移民」を大量に受け入れて、国民の外国人嫌い、移民受け入れへの拒否反応もかなり改善してきたからだ。

 では、現実はどうかというと、明るい兆しどころかどんどん貧しくなっている

 その国の豊かさを表す「1人当たりGDP」という指標がある。その中でも物価水準の違いなどを調整した「購買力平価」(PPP)の数値で、日本の2016年の1人当たりGDPは4万1534ドル。OECD加盟諸国35カ国の中で17位と真ん中くらいに付けていた。

 しかし、2018年に「外国人労働者の受け入れ拡大」を表明してからこのポジションはどんどん低下して、韓国にも抜かれてしまう。2022年は同4万5910ドルで、OECD加盟諸国38カ国の中で27位まで転落した。

 では、バイデン大統領ら西側諸国の言う「移民を受け入れて経済成長」を実践すればするほど、経済が停滞してしまうのか。

 「それは外国人労働者がその国の人の雇用を奪うからだ」「いや、そうじゃなくて治安が悪化して社会的コストがたくさんかかるからだ」など、さまざまな声が聞こえてきそうだが、日本の場合、そんな複雑な問題ではなく答えはシンプルだ。

●日本経済が停滞に向かう理由

 外国人労働者という「低賃金ですぐにクビを切れる労働者」が大量に流入すると、その国の労働者の「低賃金」を固定化させてしまうからだ

 このあたりの問題は5年半前、2018年10月に本連載の記事『だから「移民」を受けれてはいけない、これだけの理由』の中で指摘させていただいている。

 当時、安倍政権は「人手不足」が深刻なので、外国人労働者の受け入れ拡大を表明した。ただ、データを見ると日本の「人手不足」は、労働者の数が足りないという話ではなく、「低賃金ですぐにクビが切れる労働者」が足りていないだけだった。

 安い給料のわりに過酷な仕事、長時間労働を強いられる仕事、家族を養っていけるという希望が抱けない仕事なので、労働者が敬遠する。そういう問題も「人手不足」にひっくるめられている。

 このような雇用のミスマッチを解消するために最も効果的なのは、労働者から敬遠される業界側が賃上げや生産性向上をして待遇改善をすることだ。つまり、経営者側が「成長」しなくてはいけない。これが産業の新陳代謝につながって、経済成長へとつながっていく。

 しかし、国が海外から「安価な労働力」を輸入してしまうと、経営者側はそんなめんどくさいことをしないで済む。これまで安い賃金でコキ使っていた日本人労働者がベトナム人や中国人に代わるだけで、賃上げや生産性向上などの「成長」を目指さなくていい。

 こうなると、日本経済は完全に停滞してしまう。

●日本経済停滞の大きな原因は

 マスコミのニュースを見ていると、グローバルで活躍しているトヨタなどの大企業が日本経済をけん引しているという錯覚に陥ってしまうが、実は日本経済はGDPの6割を占める個人消費が支えている。ここが冷え込むので経済が停滞する。

 では、なぜ冷え込んでいるのかというと「低賃金」だ。そう言うと、「それは税金が高いからだ」という人たちがいるが、紙幣を刷れば経済成長ができるならみんなやっている。例えば、月10万円しか稼げない人の消費税をゼロにしても、その人は貧しさから抜け出すことはできないし景気も良くならない。労働の対価で得るカネそのものを「底上げ」しないことには、焼け石に水なのだ。

 そこで賃上げが必要なわけだが、春闘がどうしたとか大企業のベアはほとんど関係ない。日本の会社の99.7%は中小企業であり、日本人の7割がここで働いている。わずか0.3%の大企業の賃上げが99.7%の賃上げにまったくつながらないことは「失われた30年」を見れば明らかだろう。

 つまり、日本経済の停滞とは突き詰めれば「中小企業の賃金の停滞」なのだ。そして、これまで説明してきたように、「移民」はこの構造的な問題をさらに悪化させてしまう。手前味噌(みそ)だが、筆者はそれを5年半前の記事でも以下のように指摘させていただいている。

人手不足というクライシスは、低賃金労働に依存する経営者を追いつめて、「生産性向上」と「賃金アップ」に踏み切らせる。だが、安易に外国人労働者を受け入れて経営者を甘やかすと、そのイノベーションは全てパアになる。

安倍政権の移民政策は、このような残念な結末を招く恐れが極めて高いのだ。

 残念ながらこの「予言」は的中してしまっている。日本の賃金はいっこうに上がらず、岸田政権になってからも実質賃金は23カ月連続でマイナスだ(2月の毎月勤労統計調査)。平均給与では韓国に抜かれ、ベトナムなどの都市部では日本よりも高給取りが山ほどいる。

 「円安」「デフレ」うんぬんではなく、海外から「低賃金労働者」をたくさん受け入れたことで、「低賃金企業」が大量に生き残ることができて、その結果、国内労働者の賃金まで低くなっているのだ。

●「国破れて移民あり」の未来

 生産性についても、目もあてられない。「DXで生産性アップ!」とかいろいろ言っていたが、2023年の日本の時間当たり労働生産性は52.3ドル(5099円)でOECD加盟38カ国中30位だ。ASEAN諸国に追い抜かれるのも時間の問題だ。

 ……ということを言っても、おそらく日本が「移民政策」をやめることはできない。「外国人労働者受け入れ拡大」を要望している中小企業の経営者団体「日本商工会議所」は、自民党の有力支持団体だ。ここと敵対したら落選議員がたくさん出て、政権維持も難しい。つまり自民党が与党である限り、どんなに賃金が低くなっても「外国人労働者受け入れ拡大」は続いていくのだ。

 このように日本の政策というのは、それがどんなに悪い影響が出てきたとしても、ブレーキの壊れたダンプカーのように一度走り出したら誰も止められないのだ。

 いや、止まらないどころか、「加速」していく恐れもある。先ほどの朝日新聞調査で、「外国人労働者の受け入れ拡大」に賛成と答えた割合が大幅に増えたのは、60代と70代だ。70歳以上は38%(2018年)だったのが62%に、60歳以上も同35%から63%に増えている。

 外国人労働者に自分の介護をしてもらいたいということなのかもしれないが、日本人は歳を取れば取るほど「外国人労働者をたくさん受け入れたい」と思う傾向があるのだ。ということは、高齢化が加速する日本は「移民歓迎ムード」がさらに高まっていく可能性があるということだ。

 実際、今回のバイデン大統領の発言を受けて、「確かに日本の移民政策は遅れている。先進国の責務としてもっと積極的になるべきだ」なんてことを主張している、立派なインテリ紳士もたくさんいる。「共生社会」「多様性」という美辞麗句が並べられると、「より良い世界を築くために日本も移民を受け入れるべきだ」と思う人も増えるだろう。しかし、それは日本の低賃金・低生産性にも歯止めがかからないということでもある。
地獄への道は善意で舗装されている」ということわざがあるが、今のわれわれは「より良い世界」を目指して地獄へ向かって一直線に進んでいるような状況なのだ。
国破れて移民あり」という未来がもうそこまで近づいている。(窪田順生)

参考文献・参考資料

衆院補選のウラで審議が進んでいた実質「移民法」のヤバすぎる中身…このままでは日本の「社会保障」が崩壊する (msn.com)

日系ブラジル人はなぜ「移民化」したか 「多文化共生」先駆け、偽装戸籍で「孫」1千人も 「移民」と日本人の平成史③ (msn.com)

日本が外国人労働者の受け入れ方針を大転換、「現代版野麦峠」から脱却か―香港誌 (msn.com)

バイデン大統領 “日本 外国人嫌い 移民望まず”発言 日本政府「正確な理解に基づかない発言 残念だ」 | NHK | アメリカ

林官房長官、バイデン米大統領の「日本は外国人嫌い」 「正確な理解に基づかない発言」 (msn.com)

欧州「移民受け入れ」で国が壊れた4ステップ これから日本にも「同じこと」が起きる | 国内政治 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

厳格化する欧米の移民政策 大量流入の欧州は悲鳴、米国は大統領選視野に方針転換 - 産経ニュース (sankei.com)

排日移民法 - Wikipedia

「外国人嫌いの国は経済が停滞する」は本当か いや、日本には当てはまらないシンプルな理由 (msn.com)

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