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政治講座ⅴ1096「アメリカが衰退するのか?」

 アメリカは混乱ゲームと戦いが好きな国であり、どこに向かっていくのか理解不能である。
 日本がべったりと従属して属国のままでいいのかと不安になる場面が多い。
 直近の米国の債務上限問題でのチキンゲームを見ているとまた「茶番劇」を始めたのかと失笑を禁じ得ない。
 ちょっとした手違いで債務不履行(デフォルト)が起きたらどうするつもりだろうか。
 米国政治家は有権者・支持者に見せる「茶番劇」を演じているのであろう。観客はハラハラしながら成り行きを見るのである。ある程度の筋書きは出来上がっている「出来あいレース」なのである。今回も報道記事から紹介する。

     皇紀2683年5月20日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

アメリカの衰退に忍び寄る「内戦」と「革命」リスク トクヴィルも警告した「最も危険な時期」の到来

会田 弘継 によるストーリー • 5 時間前

オバマ・トランプ・バイデン政権は本質的にはひとつながりの改革の動きであるというのは、専門家の間では徐々に共通理解となりつつある(写真:Chip Somodevilla/Getty Images)© 東洋経済オンライン

2021年1月、アメリカ、そして世界に衝撃を与えた「Qアノン」煽動による前代未聞の連邦議会襲撃事件。次期大統領選への出馬を表明しているトランプ氏の動向次第では、再びこのような事態を招くのか。さらには2度目の「南北戦争」を招いてしまうのか。

世界中で「内戦」が急増している現状とその原因、アメリカでも内戦が勃発する潜在性が高まっている状況について、アメリカを代表する政治学者が分析し警告した『アメリカは内戦に向かうのか』(バーバラ・F・ウォルター著)を、アメリカの保守思想に詳しい会田弘継氏が読み解く。

現代アメリカにも当てはまる洞察

「悪しき政府にとって最も危険な時期とは、一般に自ら改革を始めるそのときである」

冷戦終結間際の1990年前後、ゴルバチョフ共産党書記長の下で旧ソ連はペレストロイカと呼ばれた改革路線を突っ走っていた。その当時、アメリカの知識社会でときおり引用されていたフランスの政治思想家アレクシ・ド・トクヴィルの言葉である。『旧体制と大革命』の一節だ。

結局、旧ソ連の改革は共産主義旧体制の維持を図る守旧勢力の反動クーデター未遂からソ連邦解体、ゴルバチョフ失脚となり、「悪しき政府」の改革は失敗した。そのツケは、いまのウクライナ戦争にまで回ってきている

トクヴィルは大革命(フランス革命)前後数十年を視野に収めて『旧体制と大革命』を著したが、冒頭に掲げた一節だけでも、その洞察の鋭さには驚く。

アメリカ現代政治を論ずるとき、どうも議論が狭くなりがちだ。昨今の雲行きでは2024年大統領選挙もバイデン大統領とトランプ前大統領の対決になりそうな気配だが、不確定要因はトランプをめぐるさまざまな刑事事件捜査の進展である──というあたりに議論が集約されてしまう。

もっと対象から距離をとって、長い時間軸で考察してみることもできるのではないか。トクヴィルがフランス革命に対して示した鋭い病理学的診断は、帝国化した革命国家ソ連の終わり(これも一種の革命だ)にも当てはまり、その余波は現在にまで及んでいる。

そのソ連との対決を世界史的命題としていた自由主義革命国家アメリカはソ連崩壊を受けて、むしろ一種の変調をきたした。1990年代からの新自由主義(ネオリベラリズム)新保守主義(ネオコンサーバティズム)の異様な興隆だ。そのあたりから、いまのアメリカの混迷を考えてみる必要があろう。問題をトランプ出現以降に限り、トランプに混乱の責任をなすりつけ、来年の大統領選挙を論議していては、見失うところが大きい。

「悪しき政府」の改革が招く危機

そうした視点を取るときに格好の補助線を提供する好著が出た。バーバラ・F・ウォルター著『アメリカは内戦に向かうのか』である。原題は「内戦はいかにして始まるか────そしていかにしてそれを止めるか」だ。

著者は内戦の専門家としてさまざまな学者と協力し、世界の内戦に関するデータを収集してきた。その学者グループ「政治的不安定性タスクフォース」(PITF)の目的は、他国の内戦を予測し、アメリカが周到に対応できるようにすることであった。

だが、著者は不安にかられだしたというのも、研究している内戦の兆候は、最近10年間アメリカ国内で認められる状況そのものだったからだ。この本を書き出した動機だ。その意味で、邦語タイトルこそ適切だ。本書には、1990年代の旧ユーゴスラビア紛争など冷戦後世界で起きた内戦の事例も豊富に引用されるが、それらの分析をアメリカに当てはめて、いまのアメリカが内戦(ないし革命)寸前の状況にあると警鐘を鳴らすのが目的となっている。

原著は大統領選挙結果をめぐる連邦議会襲撃事件からちょうど1周年の昨年1月に出版され、ニューヨーク・タイムズだけでもすぐに3人の著名記者がそれぞれのコラムで取り上げるなど、話題をさらった。

著者自身は人々の恐怖心をあおる本と見られるのを恐れていたが、実際それを戒めた記事もあった。ただ、内戦に関する政治学が到達した成果をアメリカに当てはめてみるのは、それなりの意味を持つ。

興味深い点の1つは「アノクラシー」の概念と「ポリティ・インデックス」という指標の応用だ。
後者は(自然科学を装って)何でも数値化・指標化したがるアメリカ型政治学の悪癖のようなところもあるが、耳を傾ける価値はある。

「アノクラシー」は、ある国が民主主義に向かうか、あるいはそれから離反するとき置かれる中間状態を指す概念だ。内戦が発生するのは、この中間的局面だというのが、研究者らの見方だ。それは、トクヴィルのいう、悪しき政府が改革を始めるときに訪れる「最も危険な時期」と一致しよう。現在の最先端の内戦研究は、2世紀前の偉大な思想家の思索をなぞっていることになる。

「ポリティ・インデックス」は、内戦研究者が民主主義、専制、アノクラシーを分類するのに用いる「最も高い有効性を持つ指標」だという。−10(最も専制的)〜+10(最も民主的)の21段階で評価される。+6〜+10点であれば民主主義、−6〜−10であれば、専制国家と見なされる。アノクラシーはその中間に位置する、−5〜+5のスコアである。

この指標を当てはめて計測すると、アメリカは南北戦争期やニクソン辞任で+8に落ち込んだことがあった。2016年大統領選挙を機にまた+8に落ち込み、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件を境に、ついに+5に下降した。つまりアノクラシー状態に入ったという。2016年以前は+10だったのが、5年で5ポイント低下した。内戦が起きる国の多くは、3年以内に6ポイント以上低下するというから、アメリカはかなり危ういところにいる。

ただ、アノクラシーが必然的に内戦をもたらすわけでなく、著者らによればシンガポール、ハンガリーなどはアノクラシー状態で安定しているという評価になる。かつては専制(共産主義体制など)から民主化に向かう途中のアノクラシーで内戦に陥ったが(ユーゴ紛争など)、今日の主たる問題は、民主化した国が専制へ向かう途中のアノクラシーにある。

データでわかる改革の危険性

アメリカに限らない。ドイツ、フランス、英国、さらには北欧諸国も含めて2010年ごろから民主主義は衰退している。

世界的な民主主義研究機関V−Dem研究所(本部・スウェーデン)は、世界の民主主義国家数は2006年に頂点に達したところで民主化潮流は幕を閉じたと判定し、2020年には発足以来はじめて「専制化警報」を発した。世界全体に民主主義の不調が起きているわけだ。1970年代に始まった世界的な民主化の波(「第3の波」)は冷戦終結でさらに勢いづいたが、21世紀に入って逆転し専制化の波が起きていることになる。トランプが出てきたから混乱したというレベルの話ではない。

この大きな変調を考えるには、トクヴィルのような長く、深い視点が必要だろう。冷戦終結後のアメリカ主導となった世界が思想面も含めてどう動いてきたか。そこを考え抜かずには、トランプ現象もウクライナ戦争も本質的には理解はできない。

ウォルターの著作は、そのための興味深いデータを数多く提供してくれる。たとえば、アメリカの白人民族主義者集団の動向をSNS上で追っている暴力過激派問題の専門家によれば、2012〜2016年にフォロワーが600%増えたケースがあるという。これはトランプ登場以前であり、トランプでさらに過激派が殺到する動きが見られるが、2018年には頭打ちになる。

不安定な状態はオバマ政権下で起きている。トランプがオバマの生誕地問題などを差別的にあおっていた事実はあるが、大統領候補になる前の影響力は限定的だ。むしろ、フランスの経済学者トマ・ピケティらの「世界格差データベース」が示すように、オバマ時代にこそアメリカの中産階級が崩壊し、格差が激しく拡大した事実などと結びつけて考えられるかもしれない。

オバマが「原因」でトランプが「結果」

本書では、もっと長い潮流もデータとして取り上げられている。アメリカにおける民主主義否定論者は1995年の9%から14%まで上がっているが、これもトランプ登場の2016年までにすでに起きていた現象だ。

「軍による統治」を容認する割合も、1995年のわずか7%から現在(と本書は記述するが、実際は2017年)の18%まで急上昇している。これもほとんどトランプ以前に起きていた

つまり、アメリカ人の権威主義的思考の高まりも含め、トランプはアメリカの異変の原因なのではなく、むしろ結果なのだということが確認できる。

現状はトクヴィルのいうように「悪しき政府(統治)」が始めた改革が危険な状態をもたらしたと見るのが妥当なのだ。

オバマ・トランプ・バイデン政権は本質的にはひとつながりの改革の動きであるというのは、徐々に常識的理解となりつつある。この5月で1周忌を迎えたアメリカ政治学者、故・中山俊宏慶慶應義塾大学教授の遺稿集『理念の国家がきしむとき:オバマ・トランプ・バイデンとアメリカ』(千倉書房)の論述の基調でもある。

アメリカは21世紀に入って、冷戦後ずっと続いてきた独り勝ちのような状態の大きな矛盾に直面した。独り勝ち状態の底辺には、激しい格差などで人々の不満が鬱積し、権威主義的解決を求める声が高まってきた。これが「悪しき政府(統治)」の状態だ。

その悪しき政府が改革を始めたのがオバマ政権以降なのだが、それはトクヴィル的叡智から見れば、危険極まりない所業となっている公算が大きい。そうした中長期的視野での政治思想的な分析には欠けているが、データをもって改革の危険を教えてくれているのが、ウォルターの著書だといえるだろう。

アメリカが近づいているのは内戦というよりも革命なのかもしれない。 

米国債務上限・デフォルト問題では金融市場の混乱と世論の動向が鍵に

5/16(火) 6:02配信
問題解決の鍵を握る世論は大きく分かれている
NRI研究員の時事解説

米国の債務上限問題では、民主、共和両党の主張は平行線を辿っており、妥結に至る兆しは見えてこない。
そうした中、金融市場は、米国債がデフォルト(債務返済不履行)に陥る可能性を徐々に織り込み始めている(コラム「債務上限問題で米政府がデフォルトに陥るXデーが近づく:景気悪化や銀行不安再燃の引き金にも」、2023年5月9日)。
共和党は、債務上限引き上げを認める条件として、大幅な歳出削減を求めている
バイデン政権が重視するクリーンエネルギー絡みの税優遇の見直し、新型コロナウイルス流行時に実施された緊急経済対策の未使用資金を回収する、メディケイド(低所得者向け公的医療保険制度)の受給要件に就労を含めて歳出を抑制する、などの内容を含んだ法案を、既に下院で成立させている。
他方でバイデン政権は、無条件で債務上限を引き上げるよう、共和党に求めている。 問題解決に向けて鍵を握るのは、世論の動向だ。
債務上限問題を政争の具とし、経済、金融市場を人質にとってデフォルトリスクを高めている責任が野党・共和党にあるとの認識が広まり、世論の批判が高まれば、来年の大統領選挙を睨んで共和党が譲歩せざるを得なくなるだろう。
他方、経済政策運営全体に責任を持つ与党・民主党の責任、との批判が高まれば、バイデン政権が譲歩する形での問題解決が見えてくる。
現状では、米国の分断を象徴するかのように世論は真っ二つに分かれている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が4月11日から17日に集計した1,500人の有権者を対象とする世論調査の結果によれば、共和党支持者を中心に45%の有権者は、(歳出削減を実施せずに)債務上限を引き上げることに反対、民主党支持者を中心に44%は賛成、と大きく判断が分かれている。

物価高騰が前回2011年と大きく異なる点

2011年のように、過去には民主党政権下でねじれ議会が生じている際には、野党・共和党が債務上限引き上げに反対すると、世論は共和党への批判を高める傾向が概ねみられた。
しかし現状では、世論は共和党批判に明確に傾いてはいない。それは、足元でのインフレの問題が影響しているのだろう。 バイデン大統領2021年に実施した1兆9,000億ドルの景気刺激策が、物価高騰の一因となった、と共和党はバイデン政権を批判してきた。
国民の間でもその主張が受け入れられており、この点から、物価高対策も視野に入れた歳出削減策が支持されている面がある。
2011年夏のオバマ政権下で、今回と同様に債務上限引き上げ問題が紛糾した際には、最終的にはオバマ政権が共和党の歳出削減提案を一部受け入れざるを得なかった。その時と、今回とでは経済情勢が大きく異なる。当時は、2008年のリーマンショックの影響も色濃く残っており、物価も安定していた。失業率は8%台だった。 それに対して現在は、需給はひっ迫しており、物価上昇率は高い。そのため、一定程度歳出を抑制することでインフレ圧力を抑え、金融政策が担っている物価安定の回復に向けた重荷の一部を財政政策が担うことが支持されやすい環境となっている。

参考文献・参考資料

アメリカの衰退に忍び寄る「内戦」と「革命」リスク トクヴィルも警告した「最も危険な時期」の到来 (msn.com)

米債務上限問題、下院議長と民主上院首脳は6月1日前の採決視野 - Bloomberg

米国債務上限・デフォルト問題では金融市場の混乱と世論の動向が鍵に(NRI研究員の時事解説) - Yahoo!ニュース

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