政治講座ⅴ727「防衛議論の前に憲法改正議論が必要。なし崩し的に国家機構の土台は崩れていく」
中国の脅威から日本は平和憲法の理念から行動・計画がどんどん乖離してきている。ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾侵攻の可能性が高まってきた。米国の軍事プレゼンスの縮小に伴う日本の自衛隊の防衛強化の必要性が高まっている。しかしながら、平和憲法と称される9条で今まで縛られてきた。憲法改正せずに「自衛だ!自衛だ!」だからあいまいな憲法でも良いとは言えない。法治国家の日本としては憲法をあいまいなままで敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を明記した安全保障関連の3文書を閣議決定は許されるものではない。マスコミもこのような重要なことには沈黙を守っている。吾輩は憲法違反の領域に入ってきていると考える。これこそ危険な兆候である。
皇紀2682年12月28日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
「日本は世界屈指の防衛能力を手に入れる」シン安保戦略の衝撃の中身
小倉健一 - 3 時間前
日本政府は12月16日、安全保障関連の3文書を閣議決定した。敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を明記したことから、国内のみならず同盟国や周辺国にとっても極めて大きな関心事となっている。この安保3文書の改定に携わった自民党議員の解説とともに、戦後の「専守防衛」という安全保障の基本方針が完全に終わったことを示唆する「シン安保戦略」の衝撃の内容をお伝えしたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)
「反撃能力」か「敵基地攻撃能力」か安保3文書改定で大きな波紋
岸田文雄首相は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の3文書を同時に改定した。自衛隊の体制を規定してきた「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を「国家防衛戦略」に移行するなど、大胆かつ大幅な見直しを行った。
特に画期的だったのは2点。自衛目的で敵ミサイル発射拠点などを破壊する「敵基地攻撃能力」の保有明記と「ODA(政府開発援助)の根本的な戦略変更」だ。今回は「敵基地攻撃能力」について、米国と、中国・韓国など周辺諸国の反応を交えて解説したい。
「敵基地攻撃能力」は、3文書内では「反撃能力」と明記されているものだ。政府はあくまで「反撃能力」と強調するが、朝日新聞や共産党は「敵基地攻撃能力」のことだと強調している。
朝日新聞は12月16日に、わざわざ「引き続き、『敵基地攻撃能力(反撃能力)』と表記します」と題する記事を掲載。その中で、「おことわり 閣議決定した安保関連3文書で、政府は敵基地攻撃能力を『反撃能力』と表記しています。『反撃』とは攻撃を受けた側が逆に攻撃に転ずる意味ですが、実際には攻撃を受けていなくても、相手が攻撃に着手した段階で、その領域内のミサイル発射拠点などを攻撃することも想定しています。このため、朝日新聞では引き続き、『敵基地攻撃能力(反撃能力)』と表記します」と読者に丁寧な注意喚起を行っている。
私もどちらで表記しようかと考えたが、上記の朝日の「おことわり」にもあるように、「実際には攻撃を受けていなくても、相手が攻撃に着手した段階で、その領域内のミサイル発射拠点などを攻撃すること」を理論上は可能にしている。これは国際法上、どの国にも認められた権利であるにもかかわらず、日本が一方的に考えないようにしてきた安全保障上の制約であった。
そのことから考えても、「敵基地攻撃能力」と表記した方がよいと考えたので、本稿において、私自身は「反撃能力」とはあえて記さないことにした。ただし、かぎかっこ内で引用したコメントや文書では、話者次第、引用元次第とする。
「これまでの安保戦略とは全く違う革命的といっていい転換」
今回の安保3文書の改定に関わった自民党中堅議員は、運用上の問題について、こう明かす。
「反撃能力とは、これまでの安保戦略とは全く違う、革命的といっていい転換です。専守防衛を掲げてきた日本が、まさか敵の領土内にある基地やミサイルを攻撃するという発想は出てこなかった。集団的自衛権は、攻撃されたら対応する、日本の存立を脅かす場合のみというかなり狭い範囲にしか適用されていなかった」
敵基地攻撃能力について政府は、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」(1956年2月29日・政府見解)としてはいた。しかし、これまで政策判断として保有することとしてこなかった能力だ。
問題は、どの時点から日本は敵基地を攻撃していいかというタイミングである。そのタイミングのことを外交・防衛関係者ら安保界隈(かいわい)では、「(わが国に対する攻撃の)着手」と呼んでいる。
今回の3文書の一つ、国家安全保障戦略には、「(反撃能力とは)我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力(編集部注:脅威圏外の離れた位置から対処を行える防衛能力)等を活用した自衛隊の能力」と記されている。
ちょっと堅い表現なので、意味が分かりにくいかもしれない。簡単に言えば、相手が実際にミサイルを撃っていない状態であっても、攻撃に着手しさえすれば、日本に対する武力攻撃が発生したと見なすことができるということだ。
野党第1党である立憲民主党はこの「着手」について、「【代表声明】政府が示した「安保三文書」の問題点について」(12月16日)の中で、次のように指摘している。
「政府見解では、『我が国に対する攻撃の着手』があれば、先制攻撃にあたらないとされているが、正確な着手判断は現実的には困難であり、先制攻撃とみなされるリスクが大きい」「専守防衛を逸脱する可能性がある」
立憲民主党の懸念も当然の部分があるだろう。ミサイルが発射されていない、実害が発生していない段階(着手の段階)で、日本は相手国を攻撃することが理論上、可能だ。また着手したかどうかの判断も日本政府が行うため、判断を誤れば国際法違反の先制攻撃になる危険性もある。
「このままいけば2027年には世界屈指の防衛能力を持つ国になる」
先述の自民党議員は次のように課題を挙げる。
「国際法では、相手国が武力攻撃をこれからすることが客観的に明らかな状態であれば、武力の行使と見なされます。これをたたくことは、先制攻撃とは呼びません。今回の安保改定で新しいのは、まだ日本に被害が出ていない状態でも、武力行使が明らかであれば相手国へミサイルを撃ち込める点です」
「着手の判断は、確かに課題が多い。今の日本が持っている人工衛星の能力や情報収集能力からすると、着手かどうかを判断するのは、ほぼ無理といってもいい段階です。結局、アメリカのインテリジェンスの支援を受け、アメリカに相談しながら、着手の判断をすることになる」
「とはいえ、この反撃が理論上でもできるようになったのは、非常に大きな成果です。よくこんなに大きなことが憲法解釈の変更もせずに、すんなり通ったなというのが本音です。このままいけば、2027年には世界屈指の防衛能力を持つ国に、日本はなります」
さて、この革命的な安保改定に、関係国や周辺国はどのような反応をしたのだろうか。
まず、手放しで喜んでいるのが同盟国である米国だ。
ジョー・バイデン大統領は、「米国はこの重要な瞬間に日本とともにある。われわれの同盟は、自由で開かれたインド太平洋の礎であり、平和と繁栄への日本の貢献を歓迎する」とツイート。ロイド・オースティン国防長官は、「われわれは、日本が反撃能力を含む地域の抑止力を強化する新たな能力を獲得するという決定を支持する。また、日本が防衛費を大幅に増加させ、2027年にはGDPの2%に達するという決定を支持する」と談話を発表した。
他にも、米国ではナンシー・ペロシ下院議長とラーム・エマニュエル駐日大使などが、他の国や地域ではオーストラリア、カナダ、台湾も今回の改定を高く評価し、支持を表明している。
激怒する中国日本の朝鮮半島介入を恐れる韓国
一方、激怒しているのは、中国だ。
「日本側は事実を顧みず、両国関係に対する日本側の約束および中日間の共通認識に背いて、中国の顔にいわれなく泥を塗った」(中国外交部)として、外交ルートを通じて日本側に厳正なる申し入れを行ったのだという。また、「中国の脅威を誇張し、自らの軍事力増強のために口実を探すたくらみは実現できないだろう」と強くけん制した。
米中の態度とは違って、日本の方針に戸惑っているのが、韓国だ。
「日本の防衛安保政策が、平和憲法の精神を堅持しつつ、地域の平和と安定に寄与する方向で、透明性を持って策定されることが望ましいとの立場である。朝鮮半島を対象とした反撃能力行使のように、朝鮮半島の安全保障および韓国の国益に重大な影響を及ぼす事案は、事前に韓国との緊密な協議および同意が必ず必要だとの立場にある」(韓国外交部)のだという。
敵国が今にもミサイルを撃つというタイミングで、事前に同意を得ろというのは、現実的に無理ではないかと思うが、前述の自民党議員は次のように解説する。
「現実的には無理な要求だが、それぐらい韓国は、朝鮮半島有事が起きた際に日本が介入することを恐れている」
増税か、否か――。そんな財源議論が沸騰し、中身についての議論が一切深まらなかったが、同盟国や周辺諸国にとって極めて大きな関心事項となっている、今回の日本の安保改定。大きな軍事力を持つことは、日本だけでない周辺諸国の安全についても大きな責任が伴うということである。
私たち日本人は今一度、平和の意味や防衛の意味、戦争の意味を見つめ直していく必要があるだろう。
参考文献・参考資料
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