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政治講座ⅴ1010「米国の自由・民主とドル覇権はいつまで存続するのか」

 使い古した言葉であるが「盛者必衰」は米国にも当てはまるであろう。米国は常に敵を外部に求めて国内を統一してきた国である。当面、敵は存在する。ロシアであり、今は中国である。米国は分裂するという危うさを持ちながら、「神」の存在の上に憲法に忠誠を尽くすという契約で集団をつくりながら、国家集団(50の国家集団)を作り上げている。そして、その側面は商業国家の顔を持ち、もう一つの側面は軍需産業国家の顔をもつ。国家機構としての最高権力には権力の集中を許さず三権分立を建て前としていることである。その権力の暴走を阻止するための報道機関も最近リベラルという方向に偏向している。
 近年の米国は、抑制のきかない方向に傾いているように見えるのである。何か変なのである。従来の価値観と違う方向に向かいつつある。国家の分断化はそこに亀裂を起こしているのである。そして、米国の国家財政はすでに破綻しているのであるが、何とかドルが循環している。湯水のごとくばらまいたドル紙幣が信頼されないことが起きた時に一瞬にして米国は破綻すると思われる。米国の南北戦争のように国家を分断する内戦は起こらない。寧ろ、ドルの信頼が喪失する場面で起こる。それは何か。世界の各国がドルを受け取らず、貿易決済として通用しなくなったときに米国の国家としての崩壊が始まるものと予想している。ソ連が崩壊してから、米国も衰退を始めたと見ている。辛うじて、中国を競争相手(敵)として西側諸国をまとめて居るが、ウクライナへの軍事費協力で疲弊しつつある。民主主義は意見調整などの意思決定に時間がかかり、自由は意見調整にやはり手がかかる。それでも、政治権力に弾圧される苦痛と苦悩によって、導かれた民主主義は専制主義、独裁政治よりましなだけである。
今回は米国の内戦を予想する報道記事を紹介する。

     皇紀2683年4月15日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

アメリカが「建国の理想」ゆえに自壊する理由 自由民主主義の維持に潜む恐怖のパラドックス

佐藤 健志 の意見 • 昨日 11:00


「自由民主主義の総本山」と見なされてきたアメリカが抱える、内戦の危機をもたらす恐怖のパラドックスとは(写真:haku/PIXTA)© 東洋経済オンライン

2021年1月、アメリカ、そして世界に衝撃を与えた「Qアノン」煽動による前代未聞の連邦議会襲撃事件。次期大統領選への出馬を表明しているトランプ氏の動向次第では、再びこのような事態を招くのか。さらには2度目の「南北戦争」を招いてしまうのか。

世界中で「内戦」が急増している現状とその原因、アメリカでも内戦が勃発する潜在性が高まっている状況について、アメリカを代表する政治学者が分析し警告した『アメリカは内戦に向かうのか』(バーバラ・F・ウォルター著)を、評論家で作家の佐藤健志氏が読み解く。

世界はボウイの予言に追いついた

イギリスのロック・スター、デヴィッド・ボウイは1970年代、未来的かつ終末論的な作風の曲によって注目された人物。

しかるに出世作『ジギー・スターダスト』を発表した1972年、ボウイは次のように発言しています。

「自分たちの戦争に備えよ。なぜなら、君たちの戦争になるだろうから。これはみんなに言ってるんだ。なぜなら今度の戦争は市民の間で行われ、国対国という規模にはならないだろうから」(マイルズ編『デヴィッド・ボウイー語録』、柴田京子訳、新興楽譜出版社、1982年、121ページ。表記を一部変更)

「David Bowie」のカタカナ表記は、現在では「デヴィッド・ボウイ」が一般的ですが、かつては「ボウイー」と末尾を伸ばす例も多く見られました。それはともかく、注目すべきは「今度の戦争は市民の間で行われ(る)」という箇所。

半世紀前の時点で、ボウイは世界が内戦の時代を迎えるのではないかと語っていたのです。1972年、イギリスでは北アイルランドをめぐる状況が悪化、1月には陸軍部隊がデモ行進中の市民に発砲する「血の日曜日」事件が起きているので、それに触発された可能性はあるでしょう。

ただしアイルランド情勢だけで、すべてを説明することはできません。翌1973年、ボウイはアメリカについて「災禍に向けての新しい出発点(に立っている)という気がした」と語ったのです(同、85ページ。カッコは引用者)。

東アジア、ラテンアメリカ、および南欧・東欧などでも、このころから内戦の新しい波が生じました。1990年代はじめ、世界における内戦の数は近代史上、最多になったと言われるほど。

ここ数年、事態はさらに悪化しています。2019年、内戦の数はそれまでの記録を更新しました。おまけにこれは、自由民主主義を否定し、権威主義をめざす風潮の台頭まで伴っている。「自由民主主義の総本山」と長らく見なされてきたアメリカすら、今や南北戦争以来の内戦に陥るのではないかと危惧されているのです。

2020年代、世界はデヴィッド・ボウイの予言に追いついたと評さねばなりません。戦後日本は、アメリカとの協調、ないし従属を、国のあり方の根本に据えてきたのですから、これはわが国にとっても重大な意味合いを持ちます。

かつて「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪を引く」というフレーズがありましたが、アメリカが内乱のあげく機能不全に陥ったら、日本(人)はアイデンティティーの崩壊をきたすのではないでしょうか。

「不完全民主主義」の危険性

内戦はなぜ起きるのか?

アメリカが「第2の南北戦争」に突入するとしたら、どのような形を取るのか?

民主主義の没落を防ぐため、われわれにできることは何か?

上記のテーマに正面から取り組んだのが、政治学者バーバラ・F・ウォルターの著書『アメリカは内戦に向かうのか』です。

2022年はじめ、原著が刊行されたときから内容に注目した私は、同年秋に配信したオンライン講座『佐藤健志の2025ニッポン終焉 2025年、日本が迎える巨大な分岐点』(経営科学出版)において、詳しく紹介したうえで分析を加えました。その際、本に登場する重要な概念「ethnic entrepreneurs」「violent conflict entrepreneurs」を、「民族主義仕掛人」「暴力対決仕掛人」と訳しましたが、これは今回の日本語版でも踏襲されています。

原著と比較した場合、訳文にはいろいろ気になるところも多いものの、この点は脇に置いて、ウォルターの議論を取り上げてゆきましょう。以下、引用は基本的に英文より行います。

邦題こそ『アメリカは内戦に向かうのか』ですが、原著の題名は『How Civil Wars Start; and How to Stop Them』(内戦はどう始まるか、そして阻止するにはどうすべきか)。

言い換えれば、アメリカの状況だけを論じたものではありません。全8章のうち、第1章から第5章までは、内戦発生にいたるメカニズムを、さまざまな国の例を挙げつつ分析しています。

ポイントは以下のとおり。

民主主義であれ、権威主義であれ、政治体制が安定している国では、内戦はまず起こりません。

前者の場合、そもそも蜂起の必要がなく、後者の場合、蜂起しても制圧されるのがオチだからです。

内戦が起こりやすいのは、両者の中間にある「アノクラシー」の国々。

日本語版では訳語が用意されていないようですが、私の講座では「不完全民主主義」としました。

読んで字のごとく、専制支配が確立されているわけではないが、さりとて民主主義が盤石というわけでもない状態。

おわかりでしょうか。

内戦を防ぐという観点に立つかぎり、中途半端に民主化された体制よりは、徹底した権威主義のほうが望ましいのです!

民主主義、とりわけ自由民主主義を「普遍的価値」と見なし、全世界に広めたがる傾向が強まった20世紀末、内戦がかつてなく生じるようになったのも、こう考えれば必然の帰結にすぎません。

とくに危ないのが、社会の基盤が不安定なまま、急速な民主化を推進したがる国々。

エドマンド・バークは『フランス革命の省察』で、「急激な変化は、たとえ良いものであっても望ましくない」という旨を論じましたが、ウォルターの議論はこれを完全に裏付けています。そして「民主主義をめざしても、かえって物事が悪くなるだけだった」という幻滅が、自由民主主義の否定をうながすことになるのです。

没落と絶望が暴力を呼ぶ

ただし不完全民主主義、アノクラシーだからと言って、必ず内戦になるわけではない。

次のポイントは、当該の国に、それまで享受していた地位や特権を失い、没落(日本語版では「格下げ」)の危機に直面した社会集団がいるかどうか。

当の集団にとって、世の中は「ひどい右肩下がり」にしか見えない。

強い不満を抱いて当たり前。

しかも新たにのし上がってきた社会集団が、民族・宗教・言語などの点で、自分たちと違っていたらどうなるか?

──われらが祖国は、異質なよそ者によって乗っ取られようとしている! 国の「純潔」を守れ!

こんな心情が広まっても不思議はありません。これをあおることで、権力を得たり、あるいは維持したりしようと画策するのが、先に出た「民族主義仕掛人」。

だとしても、没落する側の人々の抱く不満や不安について、政府が取り合う姿勢を見せれば、最悪の事態にはならない。

平和的な陳情や抗議によって、物事が改善される道が残っているためです。

だが、政府が取り合わなかったらどうなるか。

──もはやこれまで、蜂起あるのみ!

今度はこんな心情が広まることになります。むろん自由民主主義への信頼など、とうに消え失せている。

自分の権力欲を満たすべく、くだんの心情をあおるのが「暴力対決仕掛人」です。かくして人々は「(対立勢力と)妥協の余地など絶対にないと信じ込む」のですが(128ページ、日本語版の該当箇所170ページ)、これを大いに促進するのがSNS、つまりソーシャルメディア。

SNSにおいては、不正確な情報、ないし純然たるウソやデマも容易に発信できますし、それらがあっという間に広まってしまう。さらにアルゴリズム機能によって、自分が「見たい」「聞きたい」「信じたい」と思う情報が、優先的に提示されます。

ウォルターが指摘するとおり、民族主義仕掛人や暴力対決仕掛人にとって、SNSは社会全体に向けた「拡声器」のようなもの(215ページ、日本語版の該当箇所272ページ)。だからこそ、蜂起がより容易、かつ頻繁に起きるようになったのです。

内戦のシナリオは1つではない

ならば現在のアメリカで、没落に直面し、絶望に駆られた社会集団は何か

じつは白人、とりわけ学歴の低い人々

いわゆる無名の庶民です。

これらの人々はもともと「ロマンティックに美化され、民主主義の屋台骨などと位置づけられるものの、自己主張の機会など、じつはほとんど得られない」状況に置かれていました(デイヴ・マーシュ『BORN TO RUN: THE BRUCE SPRINGSTEEN STORY』、ドルフィン・ブックス社、アメリカ、1979年、155ページ。拙訳)

国が繁栄していれば、それでも我慢できるでしょうが、過去30年あまり、彼らの生活水準は一貫して下落しています。

駄目押しというべきか、移民による人口構成の変化のせいで、いずれ白人は多数派ですらなくなる恐れが強い。

ずばり八方塞がりです。

そしてアメリカでは、市民が大量の武器を所持している。

内戦の危機が高まるのも、必然の帰結ではありませんか!

というわけで、第6章と第7章では、来たるべき内戦の予測シナリオと、その際に社会がいかなる様相を呈するかが論じられるのですが……。

これについては紹介を控えましょう。

2021年1月、大統領選挙の結果を不服としたトランプ支持者が連邦議会を襲撃して以来、アメリカでは「新たな内戦」をテーマとした本が少なからず出版されており、予測シナリオにしてもいろいろあるためです。

実際、わが講座『2025年、日本が迎える巨大な分岐点』では、ウォルターのものも含めて5つのシナリオを紹介しました。

本書に登場するシナリオを金科玉条のごとく思っていると、思わぬところで足をすくわれるかもしれません。

とまれ、内戦の危機がそこまで切実だとすれば、どうにか阻止できないかと思うのが人情。

最後の第8章では、処方箋の提示が試みられます。

「没落した白人の絶望をやわらげ、民主主義の屋台骨を修復するには何をすべきか」という話。

ところがここで、本書は深刻な矛盾に陥るのです。

アメリカの民主主義の理念が、いかにすばらしいかを強調すべく、バーバラ・ウォルターは自分の身の上を語る。

じつは彼女自身、両親は移民。

父はバイエルン生まれで、母はスイス生まれとか。

夫のゾリもカナダ生まれのうえ、父親はハンガリーからの移民だったそうです。

そして、こう続ける。

「アメリカは私たち家族に、夢を追いかける機会を与えてくれた。ありのままの自分でいる権利を与えてくれたのだ。ここなら安全に暮らせるし、思いのままに生きられるという確信のもと、豊かさをめざす自由を」(221ページ、日本語版の該当箇所279〜280ページ)

本の最後でもウォルターは、今こそ「多をもって一となす」(=世界中から人々が集まって、平和で繁栄する社会をつくる)という建国のモットーを真に実現すべきだと述べました。

しかし移民の増加こそ、学歴の低い白人を没落へと追いやることで、暴力的な蜂起に向かわせる大きな要因ではなかったか?

「価値ある自壊」をきたした本

国境を越えた大規模なヒトの移動が、社会の安定を突き崩し、内戦を引き起こした事例は、本書の前半部でも繰り返し紹介されています。

建国のモットーで何をうたおうと、アメリカだけは例外などということがありうるでしょうか。

崇高な建国の理想を持ち、それを実践しようと努めたからこそ、アメリカは自壊の危機に瀕している。

このパラドックスに気づかないまま「多をもって一をなす」を強化したら最後、いったいどういうことになるか?

そうです。

本書が提示する「内戦阻止の処方箋」は、かえって内戦をあおりかねない性格を持っているのです!

ウォルター自身、これに気づいていた可能性が高い。

次のような予防線を張っているからです。

「われわれは(注:移民や難民まで含めた)あらゆる種類の人々を必要としている。移民を阻止しようとする国は、ゆっくりと死んでゆくほかはない。人口が減少してゆくためだ」(223ページ、日本語版の該当箇所282ページ)

国の持続的発展なる大義を持ち出すことで、「内戦を防ぎたければ移民増加を阻止すべきでは」という反論を封じこもうとした次第。

けれども没落し、絶望に沈んだ白人に、この言葉がどう響くか想像できますか?

こうです。

「お前たちの不満には取り合わない。移民や難民の受け入れは続ける。白人は少数派に転落する運命なのだ。それを拒めば『死』あるのみ!」

ひょっとして、バーバラ・ウォルターも「暴力対決仕掛人」なのか?

そんな気がしてくるではありませんか。

『アメリカは内戦に向かうのか』は最後になって、同国の自壊を食い止める道を示すどころか、本そのものが自壊してしまうのです。

このパラドックスは他人事ではない

ただしこれは、本書の価値を否定するものではない。

否、みごとに自壊しているからこそ、『アメリカは内戦に向かうのか』には大きな意義がある。

現在の世界において、自由民主主義の維持にいかなるパラドックスがつきまとうかを、身をもって示しているからです。

日本語版の冒頭に添えられたメッセージで、ウォルターが語っていることは、その意味で本人が考える以上に正しい。

いわく。

「ここで述べられていることは、私たちの世界を取り巻く真実の姿にほかなりません。それらが日本で生活する皆様にとっても、遠からず訪れる未来であることは否定できません」(3ページ)

本書の破綻を乗り越えることができるかどうか、それはわれわれにとっても、国の運命を左右する巨大な分岐点となるのです。


参考文献・参考資料


アメリカが「建国の理想」ゆえに自壊する理由 自由民主主義の維持に潜む恐怖のパラドックス (msn.com)

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