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20240302 イラストエッセイ「北国の春2」 カタクリ

 ぼくは東京で生まれ育ちました。新潟に来たのはビール会社に就職したから。五年務めて現地離職し、学校の先生になりました。以来、40年間新潟に暮らしています。
 東京に住んでいた時、春は憂鬱な季節でした。
 なんだか物悲しくなるんです。こういう人、多いそうですね。

 ところが新潟に暮らすようになって、春は喜びの季節に変わりました。
 長い冬が終わって春が到来した時の喜びは、北国の人でなければ分からないと思います。
 最近は温暖化で、冬も暖かくなりましたけれど、40年前、新潟では、11月から3月まで太陽を見る日がほとんどなかったんです。
 3月になったある日、突然、太陽が顔を出すんです。

 そして始まるのが、山に咲く花の季節です。
 ぼくが住んでいる新潟県胎内市の世界で一番小さい山脈、「櫛形山脈」にある大峰山は、春の花に彩られるようになります。
 まず最初に咲くのは、マンサク。
 枯れ木に黄色いティッシュペーパーで作ったこよりが下がっているみたい。笑
 そして、カタクリ。
 南側の斜面に群生します。それこそもう斜面が紫色に染まるほど。
 名前が示すように、昔はカタクリからでんぷんをとったそうです。
 山登りして、うどんを煮ることがあるのですが、カタクリの葉を入れるととってもおいしい。あ、これって違法なんだっけ? 笑
 ぼくたち北国の人間にとって、カタクリは年に一度だけ会える、遠くに住む近しい友人のような存在です。


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