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PTAあるいは硬直化しがちな組織の変革

〜 NHKウワサの保護者会「今だからこそのPTA!」で紹介された横浜市立日枝小学校の取組を通じて 〜

PTA
(Parents and Teachers Association or Parent-Teacher Association)

子どもが学齢期の保護者と教職員によって学校単位で組織される任意団体

全体としては国家や地方公共団体を網羅する巨大なピラミッド型の組織でありながら、子どもが学校を離れると構成員では無くなるので、設立や運営の責任の所在が良くも悪くも曖昧であり、変革は難しいとされてきました。

昨年度のコロナ禍でのPTA活動がストップしたのを機会に、PTA活動を見直すことになった 横浜市立日枝小学校(住田昌治校長)

「PTA活動が今まで通りやれなかったから困ったか?と言われると、そうでもない、という事が、割とみなさん分かってきた。そうすると、今までやってきたPTA活動は何だったのか、ということを立ち止まって考えるチャンスでもある。」(住田校長)

PTA活動の全てを子どもの視点に立って考え直したそうです。「子ども達のために」を明確にするために、まず行ったこと、それは、

「日枝小学校PTA」から「日枝っ子友の会」に名前を変える

目から鱗が落ちる、とはこの事ですね! 子どもにとっても保護者にとっても、何だかよく分からない団体、というイメージにつながりかねないアルファベット3文字を止めて、名前を聞いた誰もが、確実に「地域」「子ども」「友愛」「集まり」を想起する名前に変えてしまう! 名前から変えることによって、自分たちは本当に変わるんだ、自分たちが変えるんだ、という意識につなげるというアイデア。

この校長先生のもとで働く教職員や、学ぶ子ども達は幸せだろうな… 本気で子どもの視点に立っているのが分かります。もし「市や県のPTA組織の一員として、その名称変更はいかがなものか?」という批判があるとしたら、それは子どもの視点に立ってないんですよね。全く。そして、さらに、

今までのような「PTA本部」や「会長」「副会長」「役員会」「運営委員」などの名称は残さず一新する。

役職名や会合を重く感じる方もいれば、中には、その肩書きや会合に参加すること自体を名誉のように思う方もいます。そういった余計な感情を生まないように変えたそうです。たとえば学校の中の「生徒会長」「学級委員長」「生徒会」「学級会」なども、子ども達のために必要なら名前を変えてしまえば良いのです!そして、

子ども達のためにどのような活動をしていくのか、学校と保護者が一緒に検討

教職員任せでもなく、保護者任せでもなく、前例踏襲でもなく、子ども達のために何をどうするのか検討を重ねたそうです。そして、子ども達のためにしてあげたいことを、できるときに、できる人・やりたい人がやる、という方針が決まり、まとめ役として「こーでぃねーたー」(あえてひらがなですね)を置いた上で、全てボランティアで募って1年間やってみましょう、ということになったそうです。住田校長は言います。

「目的を考えること」は大事で、いろいろなことを変えて無くしてしまおうということではなく、学校やPTA活動において、コロナの前よりももっと良い状況を作り出すチャンス

今までの学校教育や家庭教育の中でも、もしかしたら自明のこととして「目的を考えること」それ自体は少なかったのかも知れません。しかし「なぜ」「どうして」という疑問の発生と解決への取組は、教育の根本であり、モチベーションへと発展する源です。子ども達にいろいろなことを求めるよりも前に、大人がまずその目的をはっきりさせる事によって、子ども達を取り巻く環境は大きく変わるのではないかと思います。住田校長は続けます。

PTAに関わっている人たちみんなが生き生きしている、みんなが楽しくやっている、ワクワクしている、そういう雰囲気の中でやっているからこそ、(関わる)子ども達がよくなっていく

家庭から外に出た子ども達が初めて接する社会人が「教師」であることから、ある意味、学校の教職員が社会人全体のロールモデルのように見なされることがあります。そう考えるとPTAの活動は、子ども達が初めて目にする「協働」の営みであり、好い印象を持つか悪い印象を持つか、という差は、後々、大きな意味を持つかも知れません。

住田校長いわく「子ども達をどのような姿にして、どのような子どもにしたいのか、そのためにどのようなことをしていけばいいのか。でもそういうことをちゃんと話したことってあんまり無い。そういうことを、真面目に、でも少し気楽に話す事が少ない。」

確かに、PTAの問題に限らず、子ども達の問題、夫婦生活や家庭、職場、友人関係など、さまざまな場で、本当は真剣に相手と(自分自身とも)向き合って話し合わなければならない場を、避けてしまうことって多いのかも知れません。それが回り回って(結構言いやすい)PTA問題となっているのかも知れませんね。それでは住田校長が考えるこれからのPTAとは?

PTAの話し合いに子どもを入れる。PTAからPTCAって、地域(Comunity)を含めて言うことがあって、実際やっている所もあるんですが、さらに子ども(Children)を入れた PTCCA へ。子ども達にとって、自分たちの学びの環境を誰かが作ってくれているのではなくて、子ども達自身が自分たちの学ぶ環境を作っていく。

私自身、子ども会活動をやってまして、代わってくれる方も居ないので長い間続けていて、スタッフが集まると半分冗談で「これじゃ『大人会』だね」と言うことがあるのですが、半分は本気です。時折、子ども達からアンケートを取って活動の見直しも図ることもあります。しかし、さすがは住田校長ですね、いっそ子どもを入れちゃえ!と。

これは責任放棄でも責任回避でもなく、いちばん初めの子どもの視点に立つという原点に帰ってきたわけですね。それは当然、参加する子ども達の成長にもなりますし、保護者と教職員の気付きにもつながれば、難しいとされてきたPTA組織や学校組織の変革にもなるチカラを持っていると思います。昭和時代の影を色濃くのこすPTA組織が、いよいよ令和時代のダイナミックなPTA活動に変化する時が来ているかも知れません。

今日の教訓「目的を考えること」大事

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