ショートショート ため息貯金
サラリーマンにとって、月曜日の朝は憂鬱なものだ。金曜日よりも疲れは少ないはずなのに、身体がすごく重く感じる。
「はぁー……。」
布団から出ると同時に大きなため息をついた。
(チャリン。入金されました。)
「朝からやめてよ。幸せが逃げるわ。」
「ごめんごめん。仕事に行きたくなくてさ……。」
「仕方ないじゃない。一週間がんばりましょう。」
苦笑いしながら、朝の準備を始めるという妻とのやり取りもすっかり定例化している。
妻と3歳になる息子を養うために、どれだけ辛くても仕事を辞めるわけにはいかない。そんなプレッシャーがさらに身体を重くする。
「じゃあ行ってきます。はぁー……。」
(チャリン。入金されました。)
自宅から職場まで電車で1時間の通勤。満員電車で1時間はなかなか辛い。職場の最寄り駅について降車するのも一苦労である。
「はぁー……。通勤だけで疲れる……。」
(チャリン。入金されました。)
職場について業務を始めると上司から声をかけられた。
「今日中にこれやっといて。なる早でよろしく。」
「えっ、あぁ……承知いたしました。」
同僚は哀れみの視線をこちらに向けたが、巻き添えをくうまいと、すぐに忙しそうな素振りを取り始めた。
「はぁ……。」
(チャリン。入金されました。)
予定外の仕事も終え、2時間ほど残業の後、帰路につくことができた。
「今日も疲れた。まだ後4日もあるのか。はぁ……。」
(チャリン。入金されました。)
1時間の道のりを重い足取りで進み、自宅のドアに手をかける。
「ただいま――。」
「パパ!おかえり!」
ドアが開ききるのを待たず、息子がニコッ゙とした笑顔で飛びついてくる。私は鞄を投げ出し、息子を高く抱き上げた。
「パパ頑張るからね。」
(ジャラジャラジャラ。全額払い出しされました。)
▼Prologueさんで投稿させてもらってます。
よければぜひ!
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