憧れで自分を見失った話
【編集済み】2023年8月26日にて引用書籍の書名の翻訳を修正。
今回もまた昔話。
この前は、ミスタイプの話をした。
今回は自分のミスタイプの原因について考察してみたい。
スティーブ・ジョブズの演説
スティーブ・ジョブズのことは覚えているだろうか。
アップル社の創設者の一人で、自分が見えた未来を見据えていて妥協しないところが有名だ。
自分の意見に楯突く社員は即クビ、というエピソードも悪名高い。
そんなジョブズが最後に行なった演説には、こんな言葉があった。
今まですべての苦しみ、悩み、恥、悲しみ。周りの人間を気にすることで経験した負の感情を一掃する解決案がそこにあった。そう思えた。
十余年ぶりに聞き直したその励ましは、父の死で弱っている自分には憧れずにいられなかったのだろう。
まだまだ失敗の余地があると思って、大学生だった私は実行してみることにした。
内側の声は何と言っていたのだろう。
勉強、翻訳、音楽、恋愛。
それとなく幸せで平凡な生活に繋がる、そう思って始めたことばかり勧めてきた。
他人の価値観で築き上げた楽園を思い描いて、他人に望まれた行動ばかり。
今思えば、当時にできることをつついてみただけだと思う。
結果は何一つ上手く行かなかった。
人間関係で見えていなかった壁にぶつかったり、瞬時的に決断を下していると理想と大きく食い違ったり、そもそも知識が足りないのに調べるのが億劫だったり。
ノーと言うことで、脳が焼ききれそうなほどストレスを覚えていたのに、重要なことしかしないという信念に従って断わり続けてきた。
そういう風に、大学での時間が記憶に残っている。
柄にもなくジョブズの価値観を中途半端に実行しようとしたことは、自己認識には繋がったけど、実益には繋がらなかったように思う。
実害は、自分にも愛した相手にも出すぎたことは、前回を読んでもらえれば少しは分かることなのだろう。
それが本当であれば、自分のタイプから離れる努力をしすぎて、不幸を生んだことになる。
全部負け惜しみで、「自分はもっとできていた」というバイアスが掛かっている可能性は否めないけど。
少し自分語りしすぎてしまった。ミスタイプの原因を特定しよう。
16Personalitiesの診断の仕方を当てはめる
16Personalitiesのタイプの読み方はMBTIと違うことは別の記事で話している。
ざっくり言うと、16Personalitiesは心理機能を測ろうとはしていなくて、BigFiveの性質を測ろうとしているのだ。
当時考えていた(と思われる)ことを性質別で並べてみよう。
まずは外向性。
人と関わっていると、内側の声の聞き取れなかったり、目標達成の努力の邪魔になったりするから、自分は内向的で間違いない。
それと、何事においても、外側から情報を取り入れるより自分の頭の中に入っている情報でなんとかようとする。
Iだ。
そして開放性。
一番重要なことしかやらないという考え方だ。
当然、自分の未来に繋がらないことに興味を持たない。
美術館に行って芸術鑑賞していると、やりたいことをやる時間が足りなくなる。
芸術を作る側になるほど独創的でもないし、作るために体力を割くのも億劫だ。
哲学? そんなことを考えるよりプランを立てて、やりたいことリストを潰していけ。
経験の開放性とは真逆。
Sだ。
それから協調性。
他人の気持ちはどうしても気になる。
スティーブ・ジョブズのように、過激な方法で目標を達成しようとは思わない。
少なくとも人に強く当たらないほうがいい。
少なくとも他人の意見に反発する前にきちんと理解しておけ。
Fだ。
それに計画性。
具体的な計画はしない。
「私は今を生きるんだから」。
計画を細かく定まらないとそれは計画じゃないし、細かく予定を書くなんて守れないなら意味ない。それに物事を細かく書くことが辛いから、自分はきっとそれを望んでいないのだ。
やりたいリストは作るけど、期限はなるべく付けないようにする。
内心は「◯月中は」とか「来年は」とか期限は付けるけど、守らなくてもいいものにする。
やると決めたことは最後までやり通す。
若干P寄りの半々が出た。
あとは情動性か。
友だちに比べれば感情は制御できていない。見限られないか常に不安だし、他人が自分のことを批判していないかが常に怖い。小さな失敗で失望されてしまうことを強く強く恐れている。
Tだ。
結果はISFP-T。
現実で可能性の探索が楽しみの人なのだそうだ。
しかし、この結果をユング的心理機能と結びつくのは早計だ。何度でも言うが、16PersonalitiesとMBTIは測っているものが違う。
とするとミスタイプの原因は二つあると結論付けられる。
16PersonalitiesをMBTIと混同していた。
当時憧れている価値観で答えていた。
……はい、終わり。解散。
だがそれはそれでなんとなく違和感がある。
果たして16Personalitiesのこの結果を「ミスタイプ」だと言えるだろうか。
ユング的心理機能を知らないままなのに。
まだ自分のMBTIタイプを知ろうとすらしていない、とは言えないだろうか。
ユング的心理機能を当てはめる
今思えば、その価値観はISFPの好みそのものだった。
ジョブズが言っていたことを心理機能のレンズ越しで見てみよう。
Se(≒現実を見る目)で見えるTe(≒他人の思考の産物)を弾き飛ばし、
Fi(≒自分の価値観)とNi(≒俯瞰して本当の望みを見出すこと)を主軸に据える。
ISFP (Fi > Se > Ni > Te)だ。
自分は当時、ISFPに憧れてそれになろうとしていた、と考えられる。
16PersonalitiesとMBTIは別物だと言っていた。
しかし、タイプづけしようとすると、心理機能で得たタイプはBigFiveで得た結論と重なる部分が大きいようだ。
それでも、根本的な考え方を見てみると、自分がISFP (Fi > Se) だということはないだろう。
話し相手の気持ちを損なわないように気にかけたり、他人の価値観を自分の行動規範にしたり。Feだ。
人間が怖いと思ったり、他人の評価で不安になったりすることが多いところを見ると、Feは劣勢だったかもしれない。
具体的な計画は嫌うのに、ざっくりとした中長期目標を思い描きがちなところを見ると、方向によらずNは少なくとも劣勢ではないと思う。
INFJ (Ni > Fe > Ti > Se)か、
ENFJ (Fe > Ni > Se > Ti)。
Fe劣勢の可能性も添えると、
ISTP (Ti > Se > Ni > Fe)も、
INTP (Ti > Ne > Si > Fe)も、
ENTP (Ne > Ti > Fe > Si)も、
視界に入れておこう。
プログラミングをしている時の気楽さを考えれば、Tiは劣勢ではない。ENFJは外す。
閃きと未来像が見えてから、その理由や理屈を捻り出すために気力を割きがちだ。思考が直観のために動いている。ISTPもINTPも外していいだろう。
残りはINFJかENTPだが、思えば昔から記憶も行動も苦手だ。MBTIの定義だとSiもSeも劣勢っぽい。
しかし発想力が低めなので、Ne優勢ではなさそうだ。調べるより予想で何とかしようとするところはNi > Seなのだろう。
INFJ (Ni > Fe > Ti > Se)だと思う。
でもINFJだとFeのことをTiより好きになるはずだってMBTIは言っている。
人と関わるより、私は自分で考え事をしているほうが気楽なのに。
人のために動くには「学習のチャンスだ」「今後活かせる場面が来る経験だ」と自分に言い聞かせないと動けないくせに。
Ti(≒自分の中の合理性)がFe(≒他人の価値観を見る目)の主導権を握っているのだ。
しかも内向型は外側に働く補助機能をきちんと育てなければ生きづらいと来た。
そこまで強く言う必要あったの…?
これが本当だと、自分はまるで発達障害だよ……?
性格タイプを探る意味とは
ここまで読んできて、違和感を感じたことはないだろうか。
そもそも何故、そこまで自分のタイプを定めようとしたのだろう。
何故、そこまで性格タイプのことをもっと知りたいと思っているのだろう。
単にタイプ探しが楽しいから、人間をキレイに箱に納めるのが楽しいからではあるまい。
自分の場合、自身と他人を理解することで、突如現れる苦い感情を乗り越えようとしたのがきっかけだった。
その目的は、前回の記事で実はもう達成された。
なので、実は自分のタイプはもうそれほど重要ではないと感じるようになった。
ならば次の一歩は、何だろう。
私の場合はたぶん、MBTIに入っている願望の部分を理論から切り離すことにある。
あなたは自分のタイプを探して、何を目指しているのだろう。
それを問うことでもしかすると、初めて自分の心の声が聞こえてくるかもしれない。